NASA、探査機「Perseverance」に金属3Dプリント部品を採用
無人探査機等の研究開発及び運用に携わるNASAのジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)は、宇宙プロジェクト「マーズ2020」で用いる最新の火星探査ローバー「Perseverance」に、11個の3Dプリント製金属部品が搭載されていることを明らかにした。
今回は、そんな「Perseverance」を送り出したプロジェクト「マーズ2020」の目的や、「Perseverance」のどの部品にどのような3Dプリンターが用いられているのかをご紹介する。(写真は、NASA公式Webサイトより引用)
生命の痕跡を探るプロジェクト「マーズ2020」
火星探査ローバー「Perseverance」を送り出したのは、宇宙プロジェクト「マーズ2020」における取組の一環である。車の形をした無人探査機「Perseverance」を火星に送り込み、生命の痕跡を探るため地表を削り取って地球に持ち帰ることを目指し、2020年7月30日に打ち上げが行われ、無事成功した。
火星のサンプルを無事に地球に持ち帰ることができれば、地球外生命体が見つかる可能性もあるという巨大な宇宙プロジェクトだ。なお、1964年に「マリナー4号」が初めて火星に接近し、表面の画像撮影に成功してきたプロジェクトから火星のプロジェクトは続いており、2010年代までも探査は行ってきている。その結果、火星には過去大気や水があったことが判明し、生命体が居住可能だったことが分かっている。
今後は、2021年2月に「ジェゼロ」と呼ばれる直径45kmのクレーターへの着陸を予定している。この「ジェゼロ」は、かつて火星の地表に水があった頃に湖であったと推測されている場所であり、湖に流れ込む土砂が堆積して形成されたデルタ地形で、過去に火星で発見された生命体の痕跡などの発見が期待されている。
ちなみに「マーズ2020」は、3つある巨大プロジェクトの内の一つとなっており、探査機「Perseverance」を火星まで運び火星の地表を削る試験管を設置するまでの本プロジェクト、その後オービター(火星周回機)を打ち上げ、火星軌道上に待機させるプロジェクト、最後に「Perseverance」が残した試験管を回収するための小型ローバーと、火星から発射するロケットを送りこむプロジェクトだ。現時点での予想では三つのプロジェクトが終わり、削り取ったサンプルが地球に帰還するのは2031年とされており、非常に長期的であり人的にも技術的にも多大なリソースが投下されるプロジェクトでもある。
探査ローバーのX線分光計、熱交換器に3Dプリンティング部品が採用
「Perseverance」には、生命体の痕跡を探すため、さまざまなセンサーが搭載されているほか、火星の大気や地質を調査することもできるヘリコプター型ドローン「Ingenuity」など7種類のツールが搭載されており、これらのツールには計11個の3Dプリント部品が採用されているとのこと。
金属3Dプリンティング技術で製造したのはは、例えば、チタン製シェル、マウントフレーム、サポートストラットの部分。これら部品は、地表面のサンプル組成を分析するための、ローバー前方に設置される全長2メートルのロボットアーム先端にあるX線分光計「PIXL」に用いられている。40kgの回転タレットの中にさまざまな機器を納めるため、スペース効率の向上と軽量を目的に金属3Dプリンティング技術が活用された。
これら部品は金属3Dプリンティングの専門家である Carpenter Technology(以下、カーペンター・テクノロジー)によって製造された。
また、火星の大気から純酸素を作り出すことを目的とした実験機器「MOXIE(Mars Oxygen In-Situ Resource Utilization Experiment)」には、火星の空気を800℃近くまで加熱して酸素を生成するのに必要な6つの熱交換器が搭載されており、主要部品を高温の影響から保護するための部品に3Dプリント部品を採用している。3Dプリント技術を利用することで、より耐熱性と耐久性に優れた一体型部品として製造することができた。
カーペンター・テクノロジーについて
米国の特殊金属製造会社。二つの事業部門で構成され、特殊合金部門は、米国、欧州、アジアで、鋳造ステンレス鋼、高窒素ステンレス鋼、高強度鋼、膨張制御合金などを製造。高性能製品部門は、米国、カナダ、メキシコで、チタン合金、金属粉末、特殊合金の製造と販売を行う。
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