米国の次世代宇宙推進企業であるUrsa Major(アメリカ・コロラド州)は、Stratolaunch(アメリカ・ワシントン州)に向けて改良型のHadley H13エンジン16基を開発・納入する契約を締結した。契約金額は3,290万ドル(約47億円)で、複数年にわたる長期的なパートナーシップに基づくものとなる。今回の契約は、両社によるこれまでの協力関係をさらに発展させるものであり、今後、極超音速飛行試験の運用頻度が増加する中での需要拡大に対応するものである。(上部画像はUrsa Majorのプレスリリースより。出典:Ursa Major)
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Ursa Majorについて
Ursa Majorは、アメリカ・コロラド州に本社を置く民間ロケットエンジン開発企業であり、液体燃料ロケットエンジンの設計・製造に特化している。小型高性能な「Hadley」や大型の「Ripley」「Arroway」などを展開し、極超音速飛行や小型衛星打ち上げ用途に対応する。金属積層造形(AM)技術を積極的に活用しており、エンジン部品の軽量化・高性能化・短納期化を実現。再使用性とコスト効率に優れ、国防や商業分野での注目度が高い。
小型高性能エンジンが極超音速飛行を支える
Ursa Majorは、民間企業としては数少ない液体ロケットエンジンの設計・製造を手がける企業であり、高速飛行領域における技術開発で注目を集めてきた。同社が開発するHadleyエンジンは、小型・高推力・高再使用性を兼ね備えた設計が特長で、これまでにStratolaunch社のTalon-A再使用型極超音速機に複数回搭載されてきた。
Talon-Aは、Stratolaunchが開発した再使用型の極超音速飛行試験機であり、大型航空機から空中発射されてMach 5(音速の5倍)以上の速度で飛行可能な機体である。主に防衛や航空宇宙分野における高速飛行技術の実証、新型センサーや先進素材の試験を目的としており、飛行後には機体を回収して繰り返し運用できる設計となっている。これにより、低コストかつ高頻度な試験運用が可能となり、実用性の高い飛行データの取得に貢献している。
Hadleyエンジンを搭載したTalon-Aは、これまでにMach 5超の持続飛行や機体回収に成功しており、Ursa Majorのエンジン技術が高い信頼性と成熟度を備えていることを実証した。

再使用性と耐久性を高めたHadley H13
今回採用されるHadley H13エンジンは、従来型のHadleyをベースに、より多くの始動回数を可能とするミッション対応型の改良バージョンである。再使用性の向上により、1回あたりの運用コストの削減が見込まれ、今後の試験ミッションにおける柔軟なプロファイル設計や多様な目標の設定に対応可能となる。また、耐久性やメンテナンス性の向上にも配慮されており、今後の高速飛行プログラムの基盤技術として期待されている。
民間主導で進む極超音速技術 Ursa MajorとStratolaunchが切り拓く次世代の扉
今回の取り組みは、米国が推進する極超音速領域における民間主導型イノベーションの象徴とも言える。国防・安全保障、さらには宇宙開発を含む幅広い分野での応用が期待される中で、Ursa MajorとStratolaunchの連携は、今後本格化する極超音速時代の幕開けに向けた重要なマイルストーンとして位置づけられる。単なる技術実証にとどまらず、実運用を見据えた継続的な試験体制の確立という点においても、大きな意義を持つ取り組みである。
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