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海外の自動車業界3Dプリンター活用記事まとめ

自動車イメージ

ShareLabサイトの中で自動車業界での3Dプリンター活用については昨年以下の記事を掲載したが、今だにアクセス数が非常に高いところを見ると関心のある方が多いのだろう。

自動車業界の3Dプリンター活用の現状と将来の可能性

自動車業界の試作開発部門で活躍する3Dプリンター

自動車業界で活躍する3Dプリンター製治具・工具

そこで今回はこれらの記事の中で少し触れた特にBMWとVW(フォルクスワーゲン)の突出した3Dプリンター活用事例を中心に情報を集めてみた。昨年の記事が多いが、海外の動向として時流をつかむという観点でご覧いただければと思う。

GMの事例

>> ■自動車部品は3Dプリンターでつくる時代に──GMの“成果”から見えたクルマづくりの未来(2018.10.03)

この記事によると、GMでは、現在、特別に訓練された技術者が、3Dプリンターを週に6日、1日3回稼働させているそうだ。試作の分野で30年に渡って3Dプリンターを活用してきたそうだが、量産化を実現するカギは、やはり複数の部品を一体成型にしてしまう点のようだ。また全てを3Dプリンターで作ることはまた考えておらず、その領域を増やすことに注力するらしい。

「当社の自動車には30,000個の部品が使用されています。現実的な可能性としては、100〜1,000個の部品は3Dプリントしたものに変えられるでしょう。今後5年でその数を5,000個に、10年後には10,000個に増やせるかもしれません」とは積層設計造形ディレクター の弁。

3Dプリンターにより、軽量化と堅牢化を実現できた点も加えたい。ただしこれは設計次第のようだ。

10年後には3分の1の部品を3Dプリントで生産することを目標にしているそうだが、30年のノウハウの蓄積がある点から、けして夢ではないだろう。

自動車フレーム写真

BMWの事例

>> ■3Dプリンターが貿易の世界を根底から変える BMWの研究最前線を見た(2019.04.1)

3Dプリンターなど最新テクノロジーの急進で、貿易の「主役」はモノからデータに移りつつあるという記事。BMWグループは、すでに50台以上の3Dプリンターを世界各地に配備しており、約13億円以上を投じて、研究施設の増築から3Dプリンターのさらなる活用をめざしているという。

>> ■BMWは3Dプリント技術を利用し100万個以上の自動車用部品を製造した(2018.11.21)

こちらの記事によると、HPのMulti Jet Fusion技術を採用した高速3Dプリントプロセスにより、24時間で最大100個のウィンドウガイドレールを量産しているそうだ。

>> ■BMWはミュンヘンに1,200万ドルを投じて3Dプリント製造技術の研究施設を開設(2018.04.17)

BMWが、ドイツ・ミュンヘン北部オーバーシュライスハイムに、約13億5千万円投資し、AMキャンパスを設立したという記事。
BMWはすでにミュンヘンにアディティブ・マニュファクチャリング製造センターを設立して3Dプリント技術を利用して毎年10万点以上の部品を生産しているという。

新しいAMキャンパスには、6千平方メートル超の広さに最大80人のスタッフと30以上の産業システムが組み込まれ、BMWグループ内における3Dプリント技術の専門知識を一箇所に集約するそうだ。

部品写真

VW(フォルクスワーゲン)の事例

>> ■VW、3Dプリント技術を使って部品を大量生産へ…自動車メーカー初(2018.9.12)

フォルクスワーゲン車には1台あたり、6000~8000点の部品が使用されているそうだが、HP社の最新3Dプリント技術、「HPメタルジェット」を導入したことにより、金属部品を3Dプリントで造形できるようになると同時に、現在の3Dプリントに対して、最大50倍のスピードアップが可能になるという。

>> ■フォルクスワーゲンの3Dプリンター活用術とは?(2018.09.14)

HPのメタルジェットがずらりと並ぶ様相は、量産化の実現にリアリティを感じさせる。

>> ■フォルクスワーゲン:量産車の製造に最新3Dプリント技術を投入へ(2018.09.29)

フォルクスワーゲンの 技術計画・開発部門責任者の弁によると、カスタマーがより自由なオプションを求めている一方、次々と出てくる新型モデルはより複雑な構造になっているという。これに対して3Dプリンティングという最新の技術によってスムーズかつ迅速な生産を実現できるようにすることを一つの解としている点に注目したい。

>> ■VWグループ、3Dプリントセンター開設…将来は工場の車両生産ラインにも導入へ(2018.12.12)

この記事によると、どうやらフォルクスワーゲングループの量産化への取り組みは本気のようだ。 この3Dプリントセンターに置かれるHP社と共同開発した新世代の3Dプリンターを導入したところが、重要なポイントのようだ。これは粉末射出成形により、金属部品を3Dプリントで造形できるというものだが、従来の50倍の生産能力を持つという。

イメージ画像

量産化を後押しするHPの技術

>> ■HP「生産性50倍」うたう Metal Jet 技術で産業用金属3Dプリンターに参入。VWなどに納入へ(2018.9.11)

VW(フォルクスワーゲン)の量産化目標を支える米HPの産業向け3Dプリンター「Metal Jet」についての記事。

>> ■第4次産業革命のための3Dプリンティングおよびデジタル・マニュファクチャリングセンター(2019.6.13)

米HPが、3Dプリンティング及びデジタル・マニュファクチャリングのための世界最大施設を開設したという記事。

革新的な事例

>> ■3Dプリンティングが自動車とバイクにもたらした革新(2019.2.21)

一番身近に感じられる開発事例としては、 6つめの繊細な造形と高い耐久性を両立したという3Dプリンティングホイールではないだろうか。

編集後記

さて、ここまで記事を読んでみてどのようにお感じになっただろうか?

自動車業界での3Dプリンター活用に関心のある人は、業界関係者はもちろん、他業界においても、もし日本の大手自動車メーカーが量産化を目指して、本格的に3Dプリンターの導入を始めたとしたら、本気で考えてみるか・・と考えている人が多いのかもしれない。

実際、日本国内で長く製造業に身を置いている人ほどその知識の経験の上から、3Dプリンティングにおける量産化は、1つの部品を製造するスピードと単価から考えると到底現実的ではないという。

当編集部において3Dプリンティングにおける取材や情報収集している中で、すでに大手自動車メーカーも試作の分野ではかなり水面下で活用している様子が伺えるものの、量産化には否定的な意見の方が圧倒的に多いようだ。


それもそうだろう。

3Dプリンティングが量産化に向いていないということは3Dプリンターを売っている販売メーカーやコンサルタントも口を揃えて言っている。

また日本は高度経済成長期から今まで、自動車の効率的な生産ラインにおいてはその完成度をひたすら高めてきた。

その過程における取り組みを表現する言葉として「改善」という言葉を「カイゼン」という発音そのままに世界にお手本として参考にされたほどだ。

現時点では生産スピードとコストも面からも到底量産に向かないという判断は間違ってはいないと思う。単純に部品単価一つ取ってみても計算すればすぐ答えは出る。

しかし、海外に限らず3Dプリンターの性能は新たな新製品がでる度、飛躍的に向上しており、技術に対する投資と開発スピードも加速している。

それにGMだけじゃなく、BMWもVWも全部が3Dプリンターによって量産化できるとは全く考えていない。GMが言っていたように10年後で全体の三分の一ぐらいがいいところだろう。

そもそも上記にあげたGM、BMW、VWといずれも25~30年という3Dプリンティングにおけるノウハウの蓄積があったからこそ、一部であるが量産化を目指した体制作りに着手できたと言える。その点から考えたら、いまだ試作にとどまっているニュースしか聞こえてこない日本の自動車産業は3Dプリンティングに関して20年ぐらい遅れているのではないだろうか?

日本の自動車部品を生産する製造部は、部品一つ一つの精度ばかりにこだわっていないだろうか?

作っているのは商品だ。売れなければどんなに素晴らしい製品でも無用の長物である。

海外では先の「革新的な事例」(2. LSEV:ユーザーが3Dプリントできる自動車)にあったように部品数を圧倒的に減らしコストを抑え、簡単に組み立てられるコンパクトカーを3Dプリンターで生産しているが、安くてデザインもよく安全基準も満たしていれば日本でも売れる可能性は高い。この生産方式であればスタートアップ企業による生産も可能だろう。

追加参考記事:3Dプリンター製電気自動車、2019年春ごろに量産へ――価格は約100万円、重量わずか450kg


※上記ページの参考動画

このコンパクトカーの例から、少し呑み込めてきた人もいるだろう。量産化に向かないと言われる 3Dプリンター なのに、どうしてBMWやVWが大規模の投資をして一部でも生産ラインをこの製造方法(AM)に切り替えたのか?ということに。

ここまでの記事でも何度も出てきたことではあるが、今だピンとこない人のために繰り返すと、その理由は当然、設計方法などやり方次第で、コストを減らし、製造スピードを格段に上げることができるからだ。

改めて確認するが、今回のテーマの面からAM(アディティブマニュファクチャリング)のメリットをざっとまとめてみた。

  • 複数の部品を1つにして部品数を減らせる
  • 部品ごとの生産設備、人員を減らせる
  • 金型を必要しないため、維持費を減らせる
  • 出力して製品検査がクリア済みのエビデンスの取れた3Dデータであれば、世界各地に同スペックを有する3Dプリンターを持つ拠点へとデータを送るだけで同じものが生産可能。これによりパーツの輸送費も減らせる。

具体的に考えてみよう。例えば エンジンルーム内の8個のパーツを1つにできた場合、これが外注していた工場から購入したパーツも含めたとき、自動車本体に組み込むまでに最短でも1週間かかっていたとする。これが 3D プリンターを所有することにより内製化でき、かつ4~5時間で組み込むことを実現できたとしたら、人も生産ラインも減らしつつ、製造スピードもあがる。おまけに部品の金型をストックする維持費も必要ないのだ。 高価な3Dプリンターの元がとれる日はそう遠くないことがご理解いただけるだろう。

しかし、これらを実現するには相当のノウハウとそのノウハウを持つ人間がいないとできない。

どのパーツを一つにできるか? またどのように3Dデータを作り、どのような素材でどのようなパラメータのセッティングで3Dプリントすれば、部品としての性能を維持または向上できるのか。

試行錯誤がどうしたって必要なことは言うまでもない。それをBMWやVWはすでに研究開発部門の中で長いこと行ってきたということだろう。3Dプリンティングの量産化は不可能と断じている自動車業界の関係者は、十年経っても本当に不可能なのか、一度この二社の3Dプリントセンター及び研究施設へ視察に行って確かめてきてはいかがだろうか。

今は量産化はできずとも様々な用途への活用の道は必ず見つかるはずだ。

ちなみに近々では、 インターモールド振興会 がドイツ自動車メーカー「ベンツ」、「ポルシェ」、「オペル」への視察を兼ねた海外3Dプリンティングイベント視察旅行に、参加者を募っている。
>> 3Dプリンティングと次世代加工技術見本市「formnext」 とドイツ自動車工場視察 7日間のご案内

30年数年前に今のようなタブレット端末をどの国の誰もが使う時代が来ると確信できていた経営者レベルの人は世界でもわずかだろう。コダックなどは、デジタルカメラが出現したとはいえ、フィルムがなくなるのはまだまだ先、デジタルカメラなどプロのレベルでは使えないなどと言っている内にデジタル化の波に乗り切れず、結局じり貧になり倒産したのではないか、という話も聞く。

誰にも先行きは読めない。行動することこそが最善の策である。

日本が完成度の高い従来の生産ラインの「カイゼン」に夢中になっている間に、いつか日本が海外に対して製造スピードやコストの面から決定的に競争力を失う日がこないことを祈るのみだ。

関連情報

>> 3Dプリンティングと次世代加工技術見本市「formnext」 とドイツ自動車工場視察 7日間のご案内

>> 経営に与えるアディティブマニュファクチャリングのインパクト

>> AM(アディティブ・マニュファクチャリング)とはなにか

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