三井住友海上火災保険とセレンディクスが業務提携 3Dプリント住宅専用保険の開発を推進
三井住友海上火災保険株式会社(以下、三井住友海上火災保険社)と兵庫県西宮市に本社を構え、3Dプリンターを用いた住宅建設プロジェクトを推進するスタートアップ企業のセレンディクス株式会社(以下、セレンディクス社)が、業務提携を開始。日本初の3Dプリント住宅専用保険の開発をすすめていくと発表した。(画像は3Dプリント住宅「Sphere」 出典:セレンディクス社)
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3Dプリンター住宅という新産業の誕生前夜
セレンディクス社が開発をすすめる3Dプリント住宅の「Sphere」は、球体の形状で物理的に強度が高いだけでなく、表面積が少ない。そのため、建築資材の無駄を最小限に抑えられ、30坪300万円という価格帯での実現を目指している。2022年3月には日本初の3Dプリンター住宅「Sphere」のプロトタイプを24時間という短時間で建設し国内外の多くのメディアで取り上げられ話題となった。建設に関しては愛知県小牧市にある協力会社である百年住宅の小牧工場の敷地内での試験的に行われた。やはり現物が実際にあることは非常に大きな説得力がある。
3Dプリンター住宅を現実化させるための課題と解決するためのエコシステム
新しい商品やサービスには従来用意されている既製品が存在しない。コンクリートで造形されるが、内装はどうなるのか?設備工事は従来の住宅とどのように異なるのか?など施工面での疑問点もでてこようし、耐震性はどの程度あるのだろうかなど安全性能も知りたくなってくる。
こうした諸々の課題や疑問にぶつかると、3Dプリント住宅の市販化が実現していない段階では、まだまだ実現性がない遠い未来の話のように聞こえるかもしれない。しかし、セレンディクス社は、これまで着々と日本における3Dプリント住宅建築への課題を乗り越えてきた。ここ数か月の間でも5月には、住宅設備機器や建築資材の販売を行う株式会社サンワカンパニーとの業務提携を決め、続く6月には駅や庁舎、スタジアムやホテルなど商業・公共施設の耐震構造設計領域において実績を持つ株式会社KAPとも業務提携を開始するなど、3Dプリント住宅の一般向け販売に向けてのアライアンスを具体化してきた。
現段階のところ日本では3Dプリント住宅は市販されておらず、もちろんそれに付随した専用の保険もない。今回の業務提携で3Dプリント住宅専用保険が開発されれば、日本としては初めての商品となる。セレンディクス社は三井住友海上火災保険社と業務提携を行うことで、販売に絶大な影響を与える地震が起こった際の安全と保障を担保する保険商品を開発しようとしている。昨今多発している自然災害から住宅が受けるリスクに関する知見や商品化ノウハウは本業である損保会社に任せて、市場を広げようという動きだ。
今回取り上げた地震保険の開発は、ビジネスチャンスを具現化するエコシステムの誕生の瞬間を象徴する報告だ。セレンディクス社の「Sphere」については過去にShareLabNEWSでも詳しく取り上げている。そちらもぜひご覧いただきたい。
https://news.sharelab.jp/3dp-news/ir/serendix-sanwacompany-220609/
日本初の3Dプリント住宅専用保険の実現に向けて
日本の3Dプリンター住宅の今後
法的制度の壁を乗り越えつつある日本の3Dプリンター住宅は今後増える可能性が十分にある。現在は建物としての安全性や耐久性に焦点が当てられているが、内装面や住宅設備上の課題も多く存在、発生してくるだろう。今後は、従来の住宅産業を上手く巻き込んでいくことでビジネスとしての発展性も見込めるはずだ。
新しい商品を世に出すための課題は山積みだが、課題解決は新しいビジネスチャンスでもある。セレンディクス社はコンクリート材料を扱える3Dプリンターを使った3Dプリンター住宅という新しい産業を興すためのエコシステムを構築しようとしている。
今回の3Dプリント住宅保険は向け保険はその一例だといえる。新しいビジネス(ビジネスでの生態系)がどのように生まれ、成長していくかのか、既存のビジネスがどのように変化して遂げていくのか今後も注目していきたい。
セレンディクス社に関しては、ShareLabNEWSでもこれまで多くのニュースを取り上げている。下記のリンクにまとめてあるので、ぜひご覧いただきたい。
https://news.sharelab.jp/?s=%E3%82%BB%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%AF%E3%82%B9
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