オーストラリアの住宅不足に挑む!セレンディクス、現地企業と協業スタート

2025年10月10日
セレンディクスのプレスリリースより。

セレンディクス株式会社(兵庫県西宮市、以下、セレンディクス)は、オーストラリア・クイーンズランド州政府の仲介を受け、3Dプリンター住宅の現地展開を目的とした覚書(MOU)を、同国の不動産投資・アドバイザリー企業Planum Partners社(シドニー、以下、プラナム社)と締結した。調印式は2025年10月2日、大阪・関西万博のオーストラリアパビリオンにて、クイーンズランド州政府の主催により執り行われた。(上部画像はセレンディクスのプレスリリースより。出典:セレンディクス)

深刻化するオーストラリアの住宅供給危機


2023年、オーストラリアの住宅価格は全国で8.1%上昇した。特にシドニーなど主要都市では価格の高騰が著しく、中央値は110万豪ドルを超える水準に達している。とりわけ、初めて住宅を取得しようとする層にとっては、住宅の取得が極めて困難な状況となっている。主要金融機関であるナショナル・オーストラリア銀行(NAB)は、住宅価格の上昇傾向が今後も継続すると予測しており、住宅供給の抜本的な変革が急務である。

こうした状況を背景に、セレンディクスとプラナム社は、3Dプリンターによる革新的かつ低コストな住宅建設技術の導入によって、建設費の抑制および供給量の拡大を目指す。

クイーンズランド州での実証から本格展開へ

両社はまず、クイーンズランド州における実現可能性調査(フィージビリティスタディ)の一環として、3Dプリンターによる住宅の実証棟を建設する計画である。設計・施工は同州の建築基準や気候条件を考慮し、現地調達可能な建材と供給網の構築も同時に進める。

今後の量産体制の構築に向けては、現地の建設企業や素材サプライヤーとの連携を深め、法規制や技術的課題への対応を図る。セレンディクスは、「設計データの提供」と「現地施工」の分離を特徴とする独自のビジネスモデルを基盤とし、これをグローバルで展開していく方針である。

プラナム社の役割と現地ネットワークの活用

2015年に設立されたプラナム社は、不動産・インフラ・エネルギー分野における実績を有し、豪州内の官民双方に強力なネットワークを持つ。今回のプロジェクトでは、資金調達や政府機関との調整、サプライチェーン構築を担うことで、プロジェクトの円滑な推進を支援する。

グローバル戦略と過去の実績

セレンディクスはこれまで、日本、中国、韓国、オランダ、カナダの5カ国で同時に3Dプリンター住宅を出力する実験を行っており、国際的な施工モデルの確立に取り組んできた。また、タイの大手コングロマリットであるサイアム・セメント・グループ(SCG)とは、3Dプリンター用モルタルの共同開発や供給に関するパートナーシップを構築済みである。

こうした国際展開の経験を活かし、オーストラリアにおいても現地の建築基準や資材事情に即した設計・施工を実現し、高品質で低価格な住宅の供給を目指す。

経営陣のコメント

セレンディクス代表取締役CEO 小間裕康氏は、次のように述べている。

「クイーンズランド州政府の支援を受けて、プラナム社と協業できることは大変光栄である。住宅価格が1億円を超えるオーストラリアの現状において、多くの人々が住宅を諦めざるを得ない。この深刻な問題に対して、我々の技術が貢献できると確信している。今後も世界中のどこにおいても、質の高い住宅を手頃な価格で提供できる体制を構築していきたい。」

プラナム社のExecutive Chairmanであるマシュー・マッキャン氏も次のように語る。

「オーストラリアの住宅供給とアフォーダビリティの問題は、極めて喫緊の課題である。土地の供給には限りがあるため、建設プロセスそのものからコスト削減を図る必要がある。セレンディクスの技術が広く活用されるよう支援していきたい。」

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