3Dフードプリンターのインクとして豆腐を使う研究 ― 武庫川女子大学
武庫川女子大学の研究グループは、3Dプリンターのインク材料として豆腐を活用する研究を進め、研究結果が英国の食品系論文誌「Journal of Food Engineering」に掲載された。添加デンプン量を調整することで、フード3Dプリンティングに最適な硬さと栄養バランスの実現を目指す。
目次
豆腐3Dプリンティング
「畑の肉」とも呼ばれるほど豊富な植物性たんぱく質を有し、健康食品として注目を集める「大豆」。その大豆の抽出液(豆乳)を凝固させた加工食品が豆腐だ。名前に「腐」と付くが、発酵食品ではない。豆腐発祥の地、中国において、「腐」という漢字は「柔らかな固体」を意味する。
そんな豆腐を3Dプリンターのインクとして使って3Dプリンティング技術の新しい可能性を切り開く技術の開発に取り組んできたのは、武庫川女子大学の食物栄養科学部、食創造科学科に属する食品科学研究室(有井康博教授)だ。研究成果は英国の食品系論文誌「Journal of Food Engineering」に受理され、オンラインでは内容を見ることができる。
>>“Tofu is a promising candidate for the development of an edible 3D-printing ink”
3Dプリンター用材料(フードインク)豆腐にでんぷん添加して開発
適度な硬さと流動性を持つ豆腐は、フードプリンターのインクとして有望だという。豆腐が3Dプリンターのインクとして活用できるようになれば、加工食品としての豆腐のポテンシャルはさらに広がることになるだろう。しかし、単に豆腐を3Dフードプリンターに入れただけでは、粘度や硬度が足りず、立体形状が保てない。
そこで有井研究室では、豆腐の水分を分離した。加えて、デンプンを添加し、適度な粘度に近づけていった。フードインクとしての適切な物理特性を測る指標としては、硬度、粘度、ガム性を既定した。ガム性は食品の崩れにくさを表す指標だ。水分やでんぷんの含有量に従って、これら物理特性がどのように変化するかを調べる。その結果、デンプンを30%以上添加する形状が安定することが分かった。
フードインク開発の今後は、造形精度と栄養とのバランス
立体形状を保つために必要なデンプン添加量は30%以上だが、栄養バランスを考えれば10~25%に抑える必要がある。今後の課題は、デンプン添加を抑えつつ、立体形状を保つことだ。そのために、デンプンに代わる増粘剤探索や、プロセスの工夫が必要になる。また、実際に食べておいしいのかどうかも気になるところだ。
色や質感、形状や造形の安定性、味、舌触り、匂い、栄養素など多角的な性能が求められるフード3Dプリンティング。豆腐をインクとして今後日本の食をどのように彩るのか。興味が尽きないところだ。
食品3Dプリンターは世界でも日本でも研究が進む
今回の研究に代表されるように、3Dプリンターは食品業界においても、新たな可能性を提示している。食品3Dプリンターは、食品業界の人手不足、食糧問題、フードロス問題などに対し、これまでと異なる観点から問題解決に取り組むことで、社会的な課題解決にも貢献するポテンシャルを持っている。
以下では、食品3Dプリンターに関する過去記事だ。フード3Dプリンティングが持つ可能性を感じてほしい。
>>廃棄されるキャベツの芯をフード3Dプリンターで活用。食感も設計する時代へー農研機構
>>スイーツ専門の食品3Dプリンター、バレンタイン商戦で一部運用開始
>>3Dフードプリンターのメリットとは?~3Dプリンターでつくる食べ物最新事例~
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