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BMF、極小3Dプリント技術で薬物運搬マイクロスフェア量産技術を開発

薬物運搬用マイクロスフィア

BMFは自社の高精度樹脂3Dプリンティング技術を活用し、粒径が均一で制御可能な薬物運搬マイクロスフェアの製造技術を開発した。BMFの3Dプリンターで製造したマイクロ流体デバイスを使って薬物運搬マイクロスフェアを製造することで、薬物を封入した微小球を、安定した品質で量産できるという。

薬物運搬マイクロスフィアがん治療、薬物リハビリテーション、アルコール依存の解消、疼痛緩和など、さまざまな臨床分野で幅広い需要があり、市場規模は、2020年の330億ドルから2025年には560億ドルに拡大する見込みだ。

薬物運搬マイクロスフェア分野とは?

BMFの技術を利用して製造されたマイクロスフィア。粒径が均一な様子がうかがえる(画像提供:BMF)

薬物運搬分野において、微小球(マイクロスフェア)は通常、高分子材料で形成された微小な球体または球状構造を指す。その粒径は一般的に1~250μmの範囲内にあり、その中に薬剤が溶解または分散されている。

マイクロスフェアは、物理的手段によってポリマー表面または内部に薬物をカプセル化または吸着させることで薬物送達を行う。このようなマイクロスフェア製剤は、標的性、徐放性、長効性といった特性を持ち、局所での薬物濃度を高めるとともに、全身毒性や副作用を軽減することが可能だ。

マイクロスフェア製剤は、がん治療、薬物リハビリテーション、アルコール依存の解消、疼痛緩和など、さまざまな臨床分野で幅広い需要がある。BMFによるとその市場規模は、2020年の330億ドルから2025年には560億ドルに拡大すると予測されている。また年平均成長率(CAGR)は11.2%に達するということで、有望な市場だといえる。

従来工法の課題を微細3Dプリント技術で解決

従来のマイクロスフェア製造技術には、乳化蒸発法とリソグラフィ法があるが、乳化蒸発法は粒径のばらつきが大きく、リソグラフィ法は工程が複雑で製造難易度が高くコストも高いという課題があった。

BMFは、自社開発の微細3Dプリンターを活用し、複雑で精密な内部流路を備えたマイクロ流体チップを一体成形で直接製造することで、粒径が均一で制御可能なマイクロスフェアの生産を可能にした。

自動化できる上に安定して同一形状を生産できるため、大幅なコスト削減と生産効率の向上が達成できるという。また、3Dプリンティング技術の柔軟性を活かし、異なる薬剤や異なる媒質(例えば、異なる材料や同一材料でも異なる分子量)への迅速な切り替えが可能となり、カスタマイズ生産に幅広く対応できるという。

協業により研究成果を量産製品へ

BMFが独自に開発したPμSL技術(ピュースル:マイクロ3次元リソグラフィ技術)は、最高2μmの光学解像度を誇り、0.01mmから100mmまでのクロススケールでの精密加工と±10μm / ±25μmの正確な公差制御を実現している。こうした微細造形分野での技術力を背景にBMFは、東京大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)など、世界的に有名な大学や研究機関600以上と提携し、3Dプリンティング技術の研究開発を進めている。同社の技術は、Science、Nature、Advanced Materialsといった専門学術誌に掲載されるなど着実に評価を積み上げてきた。

近年、BMFは装置販売や3D造形サービスに加え、オープンイノベーション戦略を掲げている。いままでも北京大学や東京大学など世界各地の研究機関との連携を図ってきたが、今回の薬物運搬用マイクロスフィア量産技術のように、研究成果を産業化し、量産製品として安定供給を図るための取り組みを推進している。審美歯科分野では画期的な超薄型べニア製品「La Briller」が2024年10月に日本国内で正式発売された。

紙よりも薄いジルコニア製のべニアを歯に装着して美しさをみせる製品だ。歯や歯肉の形状に合わせた完全フィットを謳っている。

このほかにも進行中の研究プロジェクトには、有名化粧品ブランドと3Dプリンティング技術を活用した生産ラインの自動化や、製薬会社と新薬研究に用いる毛細血管構造を模擬した新型オルガノイド培養チップの開発など共同研究プロジェクトを推進しているという。

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編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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