日本初の分散型3Dプリンターファーム始動|APPLE TREEが名古屋工芸と協業、最大120台で国内生産を支援

2025年12月30日
出典:APPLE TREE、名古屋工芸
出典:APPLE TREE、名古屋工芸

APPLE TREE株式会社は、有限会社名古屋工芸との協業により、分散型3Dプリンターファーム事業「PrintHub(プリントハブ)」を開始した。全国に分散配置した3Dプリンターをネットワークでまとめて管理し、必要な製品を必要な分だけ生産する新しい製造の仕組みである。

金型不要・小ロット対応を可能にする3Dプリンターファームの仕組み

PrintHubの特徴は、複数台の3Dプリンターを同時に稼働させる「3Dプリンターファーム」という考え方にある。金型や大型の射出成形機を使わず、3Dデータから直接製品を作れるため、小ロット生産や短納期対応に向いている。試作や補修部品、イベント向けの造形物など、従来の量産型製造では対応しづらかった用途をカバーできる点が強みだ。

最大120台の3Dプリンターを導入、2026年春に本格稼働予定

第一号拠点となるPrintHubは、Bambu Lab製3Dプリンターを最大120台導入する計画で、2026年春から本格稼働を予定している。高速かつ安定した造形が可能な機種を多数運用することで、「必要なものを、必要なときに、必要な数だけ作る」生産体制を実現する。

本事業では、人手をかけずに運用できる点も重視されている。少人数で複数台のプリンターを管理できる設計とすることで、製造業で課題となっている人手不足への対応も視野に入れている。

出典:APPLE TREE、名古屋工芸
出典:APPLE TREE、名古屋工芸

クリエイターから企業まで支える分散型ものづくりの新たな選択肢

協業先である名古屋工芸は、節句人形資材などの製造で培った技術を持つ企業で、自動車関連廃材を原料としたフィラメント製造から3Dプリントまでを一貫して行う取り組みを進めてきた。材料の再利用や付加価値の高い製品づくりを視野に入れた点も、PrintHubの特徴の一つである。

PrintHubは、個人クリエイターにとっては小ロット量産の外注先として、企業にとっては金型を作らずに試作や短納期部品を作る手段として活用が想定されている。集中生産が当たり前だった製造のあり方を見直し、地域ごとに作る「分散型ものづくり」を現実的な選択肢として提示する取り組みと言える。

シェアラボ編集部コメント

3Dプリンターの話題というと「装置」や「造形技術」に注目が集まりがちだが、本件の本質は“どう使うか”にある。PrintHubは、3Dプリンターを1台導入するのではなく、ファームとして束ね、製造インフラとして成立させようとする試みだ。小ロット・短納期が当たり前になる中で、日本の製造業が現実的に取り入れやすい運用モデルとして注目したい。

用語解説

■ 3Dプリンターファーム
複数台の3Dプリンターを同時に稼働させ、ネットワークで一元管理する生産方式。1台ずつ使うのではなく、まとめて運用することで生産量と安定性を高める。
■ 分散型製造
工場を一か所に集中させるのではなく、地域ごとに製造拠点を配置する考え方。物流負荷の低減や、小回りの利く生産体制を構築しやすい。
■ Just In Time(ジャスト・イン・タイム)
必要なものを、必要なときに、必要な量だけ生産・供給する方式。過剰在庫を持たず、変化の早い需要に対応しやすい。

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