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横浜国立大学の研究チームが3Dプリンターで導電性の高い「3次元フレキシブル配線」を作製

上空から見た横浜国立大学周辺 出典:横浜国立大学

横浜国立大学の向井理特任助教、丸尾昭二教授らの研究グループは、研究チームが、柔軟性と導電性に優れた「3次元フレキシブル配線」の作製に成功した。導電性は先行研究時と比べ100倍以上になった。さらにはピンセットで曲げられるほどの柔軟性を持つ点にも特徴がある。今後は、さらなる導電性の向上や有機デバイスなどの電子素子と組み合わせることで、さまざまなウェアラブルセンサーや医療デバイスの実現が期待できるという。
(画像は上空から見た横浜国立大学周辺 出典:横浜国立大学)

研究には光造形方式の3Dプリンターが採用される

現在、薄くて軽量で曲げられる特徴を持ったフレキシブルデバイスへの応用として、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)の導電性が注目されている。PEDOTのさまざまな加工法の中で、最近では3Dプリンターの活用が試みられていた。

PEDOTを3Dプリンターを用いて3次元構造で造形する手法としては、材料押出積層法(MEX法)が主流だ。しかし、MEX法はプリント素材を加熱して溶かし、それをノズルから押し出して積層していくため、造形精度がノズル径に依存してしまい、造形精度に限界がある。

造形精度の課題を解決するために、今回の研究では光造形方式の3Dプリンターが採用された。プリント素材に紫外線を当てて硬化させる光造形方式は、3Dプリント技術の中で最も高精細な造形が可能だ。

先行研究で残った導電性の問題をクリア

光造形方式の3Dプリンターを使用することで、造形精度の課題はクリアしたものの、新たな課題も生まれた。

PEDOT は単独では青黒い固体であるため、光造形の際にPEDOT が光を減衰させてしまい直接硬化させることが困難であるという問題だ。

先行研究ではPEDOTの前駆体で、無色透明なエチレンジオキシチオフェン(EDOT)と光硬化樹脂を混ぜ合わせて造形したのちに、EDOTをPEDOTへ後処理で変換することで導電性を有する 3D 構造体の作製に成功していた。しかし、導電性は有するものの、配線材料とするには導電性が低いという問題は残っていた。

今回の研究では、EDOTをPEDOTへ変換する際の後処理の過程に着目した。

a先行研究と本研究の後処理の違い-b-PTSA-を用いたドープ処理による導電性向上-c-光造形と後処理を行なった導電性構造体の柔軟性の実証 出展:横浜国立大学

a先行研究と本研究の後処理の違い-b-PTSA-を用いたドープ処理による導電性向上-c-光造形と後処理を行なった導電性構造体の柔軟性の実証 出典:横浜国立大学

先行研究では、PEDOTへの変換と導電性を持たせるために行うドープ処理を同時に塩化鉄で行っていたが、今回の研究では2段階に分け、ドープ処理についてはパラトルエンスルホン酸(PTSA)で行った。

その結果、EDOTの量を半分以下に減らしたにもかかわらず、導電性は1センチメートル当たり16ジーメンス(16Scm-1)で先行研究時の100倍以上となったという。

また、光硬化性樹脂の成分として、柔軟な造形物が得られるポリエチレングリコールジメタクリレートを用いたことにより、後処理後にピンセットで屈曲可能な柔軟性を有することが確認された。

作製した造形物がフレキシブル配線として機能するかどうかの評価も行われている。試作品は、フレキシブル配線の基板として実績のあるポリイミドフィルム上に表面処理を行い、微細パターンを光造形することで、フィルムを曲げても剥がれないように密着性を高めた。実験ではフィルムを曲げた場合でも、接続した青色発光ダイオードが発光するのが確認されている。

フレキソ基盤が3Dプリンターで造形可能になる研究

今回の横浜国立大学の向井理特任助教、丸尾昭二教授らの研究は、フレキシブルデバイスに応用するために必要な導電性と柔軟性の2点で大きな可能性を見出したことになる。複雑形状の電子基板を3Dプリンター造形するための大きな研究成果だと言えるだろう。CASE対応をはじめとして各産業分野でのIoTへの取り組みは加速している。そこで重要になる立体的な高度に集積された基盤への要望は今後もとどまることを知らないだろう。

ShareLabNEWSで以前取り上げてきたアカデミアの3Dプリント関連先端研究研究も併せてご覧いただきたい。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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