3Dプリンターで失敗するポイント(加工編)
3Dプリンターは多くの生産装置とおなじで、アタリ出しができるまで不良がでる。樹脂造形に関して経験がある3Dプリンターのオペレーター(造形者と呼ばれることが多い)複数人にヒアリングしたところ、その要因は大きく分けて3つあるという。
失敗要因1:材料と温度
3Dプリンターの床面ではレーザーの温度が床に逃げるため、積層初期段階ではまだ温度は低い。一方で積層が進み、床からの距離がでてくると、温度が下がりにくくなる。こうした温度の違いは密閉式の筐体をもつ3Dプリンターであっても発生する問題だ。加工しながらモニタリングし、変化が生じたらその時点で調整をしていく必要がある。もし調整できない場合は、加工室内の温度管理を図っていくしかない。
【対策】
筐体が露出しているタイプの場合、筐体に代わるカバーを用意するか、室温を一定に保つなど温度管理に気を配る。空調が近くにある場合、風に当たらないようにするだけでも改善する場合がある。
失敗要因2:造形エリアでのサポート材やワークの最適配置
積層造形する際には、積層経路の設計において型崩れをふせぐためにワーク自体の形状にふくまれないサポート材を造形エリア内に配置する事が多い。また一回の工程で複数パーツ同時に造形すれば効率が上がるので同時成型に取り組むこともあるが、サポート材は、ワーク間の干渉を防ぐためにも有用だといえる。このサポート材はワークを取る際に、 プラモデルの型枠のように バリができる。いかにバリを減らすこと、特に複数部品を一度に成型する場合は効率よく配置できるかどうかが、製造時の設計において重要なポイントになる。多くの3Dプリンターはあらかじめそうした設計機能を備えているが、その優劣や設計するためのパラメータ調整は仕上がりを大きく左右する。
【対策】
積層造形中に重さがかかってくる部分を考慮して出力データを作る。サポート材を自動で生成してくれる場合において試行錯誤が続く場合は、設計データ側で、造形物を追加するといった工夫をしてみる。
失敗要因3:ピッチと造形スピード
ピッチとは積層する際のフィラメントの積層間隔のことであり、造形スピードは、フィラメントを置いて積層していく際のスピードを指す。ピッチが細かいほど微細な仕上げに近づくが、その分加工時間がかかる。スピードが遅いほど丁寧と思えるが、積層時のワークの温度が時間がたてばたつほど、底面と上部で温度差が生じ型崩れのリスクが生じる。そのため問題なく加工できる条件の洗い出しが必要なのだ。
【対策】
造形時間が長くなる場合は、ゆがみが起きやすい。素材の強度や形状にもよるが、ゆがむポイントが明確な場合は設計データ側でサポート材の替わりになる形状を追加するなどの工夫をしてみる。
メカだけではなくソフト側の問題もふくむ複雑な加工条件の管理がキモ
アタリ出しが重要なことは、どんな装置もそうだが、パラメータが多岐にわたる際、複雑になればなるほど、ある程度の初期設定時のサポートが重要になる。運用していくなかで装置の経年変化や生産する形状、数量、素材、後工程を視野にいれ、切削で精度を担保するしかないなど、考えることは多岐にわたる。
考え過ぎてしまった場合、まずは必須とするシンプルな前提課題から取り組んでいくのがよいだろう。
2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。