分速10mm、光造形で会場最速の樹脂3Dプリンター現るーBRULÉ, Inc.
BRULÉ, Inc. (ブルレーインク)のブースでは5種類の3Dプリンターがずらっと並ぶ。ブルレーはアメリカに本社をもち、韓国、日本にも拠点を持つ3Dプリンターの販売会社だ。アメリカの展示会に出る際は日本と韓国から応援にスタッフが向かうというグローバルな活動領域の広さと商品選定力に強みをもつ。
「私たちは販売会社ですが、一次店以外にはなりません。私たちがお客さまにサポートも行うので、直接技術的な確認をメーカーとできない場合は販売を取りやめることもあります。( BRULÉ, Inc. シニアセールスディレクター 黒崎徹平氏)」
英語で直接メーカーとやり取りできる語学力と装置に対する専門知識で実績をあげてきた同社だが、比較的廉価帯の3Dプリンターを中心に日本国内だけでもすでに累計3000台以上の販売実績があるという。
ここ数年、デスクトップ型の3Dプリンターを製造していたメーカーが工業グレードにまで品質を高めてきたことから、産業用途の提案が増えてきたという。そんなブルレー社に今回の次世代3Dプリンター展でイチオシする3Dプリンターを伺ってみた。
連続生産が実現できる樹脂3Dプリンター
「弊社は現在6社の3Dプリンターを一次店として扱っていますが、それぞれ個性がありますので、利用目的に応じてメーカーや機種をご紹介しています。そんな中で今年一番、力を入れて、推していきたいのが、nexa3D社のNXE400です(黒崎氏)」
NXE400は吊り下げ式SLAの樹脂3Dプリンターなのだが、積層速度は分速10mm。今回会場で並んでいるSLA式3Dプリンターの中では一番早いクラスだろう。今回展示しているサンプルは8時間で全部出力できたという。
「今回の展示会用にサンプルを造形したのですが、作業がずっと連続しておこなえました。樹脂造形が終わり、次の造形を準備して、洗浄、硬化処理、サポート除去するともう次の造形が終わっているので、また洗浄に入る。つまり連続生産ができたのです。NXE400 を複数台ならべて造形すれば量産が可能になるスペックを持っています。(黒崎氏)」
気になる価格だが、850万~ということだ。高いので普及にはネックになるのでは?と直接感想をぶつけてみた。
「確かに安いものではありません。ですが『速く、綺麗に』は大きな価値です。現状、量産対応が現実的な機種の選択肢はあまり多くありません。たとえばパウダーベッドなどの高級機は1台数千万円します。複数台ならべてより高い製造能力を発揮できれば十分検討の俎上にのるコストパフォーマンスを発揮できると思います。あとはマーケットに馴染むマテリアルの開発に期待を寄せるだけです。 (黒崎氏)」
穏やかに切返され「た、たしかに。」と納得してしまった。 機体が複数台あるということは運用上の自由度も増すし、 10台、20台導入するとなれば価格交渉の余地も出てくるかもしれない。量産対応が急に現実味を帯びて感じられてくる。今後、利用できる造形材料が増えてくれば、一気に現実味も増すだろう。
最近造形材料メーカー各社が3Dプリンターを購入し自社の造形材料を積層造形向けに提供する動きが加速しているとプリンターメーカーや商社から耳にするが、この流れは速く綺麗に造形できる3Dプリンターには追い風になるかもしれない。
わからないことはよく知っている人に聞こう
言葉にすると非常に陳腐だが、展示会の醍醐味は「自分が知りたい事をよく知っている人」に出会えることだ。単一機種を追い求めている「メーカーの中の人」も、複数メーカーの複数機種を広く知っている「商社の人」もそれぞれ独自の観点で今後の積層造形の世界を無償で教えてくれる。ここでは紹介しきれないが、他の機種に関してもわかりやすくかつ専門的な知見で説明してもらい大変理解が進んだ。あいにくコロナの影響で展示会会場に足を運べなかった方もぜひ機会を見つけて「よく知っている人」に相談してみることをおすすめする。
関連情報
2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。