1. HOME
  2. ブログ
  3. 川崎重工業が誇るレーシングバイクのフェアリングを3Dプリンターが生み出している

川崎重工業が誇るレーシングバイクのフェアリングを3Dプリンターが生み出している

ターキッシュ・プッチェッティ・レーシング所属のトルコ人ライダー トプラク・ラズガットリオーグル選手が乗るカワサキ ZX-10RR(2019年/出典:世界スーパーバイク選手権)

川崎重工業が製造するオートバイ ZX-10RRで世界スーパーバイク選手権に参戦しているファクトリーチーム「カワサキ・プッチェッティ・レーシング」は、2019年の同大会に挑んだレーシングマシンのフェアリングが3Dプリント技術から生み出されていたことを発表した。

究極のボディラインを実現する3Dプリント技術

FIM(国際モーターサイクリズム連盟)公認での市販車を用いた世界最高峰のロードレースがこの世界スーパーバイク選手権だ。オートバイメーカー自らが運営するワークスチームとサードパーティ運営のファクトリーチームが入り乱れ、ヨーロッパ各地のサーキットでしのぎを削る同大会、今年2021年は13戦を開催予定。4ストローク2気筒850~1200cc または 3・4気筒750~1000ccのエンジンを搭載した市販車が参加可能バイクと定められている。

カワサキ・プッチェッティ・レーシングは、川崎重工業のバイク「ニンジャ ZX-10RR」をベースにエントリーしているファクトリーチーム。2年前の2019年、参戦中の世界スーパーバイク選手権 第5ラウンド イタリアGPに挑むにあたり、より高い速度域を実現するための方法として3Dプリントでのフェアリング製作に着目した。

従来バイクのフェアリングはひとつひとつ手作業で製造されてきたが、より良い空気力学に基づいた設計に柔軟に対応できない側面を有していた。そこでむき出しのマシンを3Dスキャンし、構造をデジタルデータ化して最適なボディラインを生み出し、積層造形によるフェアリング製造という画期的な方法を採用することに。

3Dプリント技術を用いて作られたカーボンファイバー製 カワサキ ニンジャ ZX-10RR用フェアリング(出典:KAWASAKI PUCCETTI RACING)

空気力学に基づいた超軽量フェアリング

どこまで速く走れるか——。モータースポーツの世界で求められるのはこの一点で、その実現に向けて強力なエンジンのパワー、駆動性能、車重、そして空気力学に基づいた設計といった要素を突き詰めていく。レーシングマシンのフェアリングは「超軽量」「空気力学から生み出された最高の設計」を実現することで、カワサキ・プッチェッティ・レーシングはその材料に炭素繊維(カーボンファイバー)を選択。そこで、カーボンファイバーを専門で取り扱うロシアの企業 UMATEX ROSATOMにフェアリング製造を依頼した。

フェアリングを外したむき出しのカワサキ ニンジャ ZX-10RRを3Dスキャンする(出典:KAWASAKI PUCCETTI RACING)

UMATEX ROSATOM社は、まずニンジャ ZX-10RRのボディデータを「フェアリング装着状態」「フェアリング未装着状態」それぞれでスキャニング。その2つのデータを掛け合わせてより良いフェアリングデザインになるよう空力モデリングアルゴリズムで再設計し、理想のフェアリングデータを導き出すことに成功した。

このデータを現物化すべく、UMATEX ROSATOM社は同じロシアの3Dプリンターメーカー PICASO 3D に制作を委託。同社は独自の FormaX 素材を使用してモールドを3Dプリントし、次にUMATEX ROSATOM 社製のカーボンファイバーを加熱加工し、さらに補強材を加えて最終部品であるフェアリングを生み出した。デジタルデータをもとに出来上がったフェアリングはむき出しのレーシングマシンにぴったりとフィットしたのはもちろん、それまでのフェアリングとは比べものにならない軽量化を実現した。

カワサキ ニンジャ ZX-10RRに装着されるカーボンファイバー製のニューフェアリング(出典:KAWASAKI PUCCETTI RACING)

実践前に行ったサーキットでのテスト走行で、直線距離で以前よりも時速4kmも速くなったことを実証した。そしてこのフェアリングを搭載したマシンで挑んだ世界スーパーバイク選手権2019 第5ラウンド イタリアGP(イモラ・サーキット)ではポールポジションを獲得し、一年間を通じて一度もリタイアすることなく走り切るなど、速度域の向上とともに安定したライディングをも実現してみせた。

一般人が購入できる市販モデルベースの大会に用いられる技術は、将来的に一般販売されるオートバイにも採用されていく。現在販売中の市販車に3Dプリント技術から生まれた最終部品が使われてはいない(使われているが一般公表されていない可能性もある)が、究極のスピードを追求する世界レースでの実績が、懸念される強度面での安心感や信頼へとつながり、3Dプリント技術が一層注目を集めることとなるのかもしれない。

カワサキ ニンジャ ZX-10RR(川崎重工業)

カワサキ ニンジャ ZX-10RR

世界スーパーバイク選手権で6連覇を達成した川崎重工業のフラッグシップモデル。排気量998cc / 水冷4ストローク並列4気筒 / DOHC 4バルブエンジンを搭載した、世界限定500台のみのホモロゲーションバイクだ。強力なパワーとコントローラブル性能の両立を目指し、高回転域でピークトルクを迎えるエンジン特性とすることでスロットル開度も高めることに成功。さらに低中回転域での強力なトルクがコーナリングから立ち上がる際の加速力をアップ。最高出力149kw(203PS)を獲得するモンスターバイク。メーカー希望小売価格 3,289,000円(税込)。

シェアラボ編集部 | + posts

メカの話になると目の色が変わる編集者歴20年のアラフォーライダー。3Dプリンターで愛車のパーツ製造を虎視眈々と狙う。

関連記事