「EOS Japan AM XcellenceDay 2024」参加報告
2024年12月10日に「EOS Japan AM XcellenceDay 2024」が招待事前参加登録制にて東京で開催され、招待されたEOS製品ユーザーを中心に120名以上の参加があり、シェアラボも招待を受け丸岡が参加した。EOSドイツ本社からもCEO Langer 氏を含めた複数名が来日参加し、最新の企業と製品の紹介や、日本のユーザーからの講演と、参加者交流の機会が提供された。その中から重要なポイントに絞り、以下に報告する。(写真:EOS JAPAN提供 )
EOS について
EOS GmbH (Electro Optical Systems、本社 ドイツ)は、産業用3Dプリンティング向けの責任ある製造ソリューションの大手サプライヤーだ。1989年以来、樹脂・金属材料を使った3Dプリンター装置、材料、プロセスを製造販売するほかに、戦略から教育、生産まで、専門家の支援、技術、サービスを提供することによって顧客の革新と差別化を実現し、AM活用を通じた製造業の未来を切り開いてきた。
EOS Japan AM XcellenceDay 2024 講演の概要
今回のイベント「EOS Japan AM XcellenceDay 2024」は日本法人であるEOS JAPAN株式会社が主催し、販売代理店である株式会社NTTデータザムテクノロジーズの協力により開催された。講演プログラムは下記の通り。
講演 | 講演者 |
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開会挨拶 | EOS CEO Marie Niehaus-Langer 氏 |
AM技術・活用状況の現状と将来 EOSの現在地とロードマップ、日本市場に対する展望 | EOS CSO Nikolai Zaepernick 氏 |
AMCMの最新情報・製品ロードマップ | AMCM Technical Product Manager Josef Ludwig Weilhammer 氏 |
EOSソフトウェアのご紹介他 | EOS Additive Minds Team Leader Christopher Schmitz 氏 |
3Dプリンターのダイカスト金型への適用 | リョービ株式会社 ダイカスト金型本部 設計部 金型設計課 金型技術係 主務 寳山 靖浩 氏 |
Mobility開発プラットホームに於けるEOS P770の役割について | 株式会社フィアロスペース 営業ブロック スーパーバイザー 田中 君弥 氏 |
宇宙発のAM開発 | 株式会社NTTデータ ザムテクノロジーズ 技術開発統括部 開発部 部長 小河原 彰 氏 |
H3ロケットの挑戦 | 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙輸送技術部門長 岡田 匡史 氏 |
EOSからの講演のポイント
まず、EOS創業者Hans J. Langer 氏から2019年にCEOを引き継がれたMarie Langer 氏からは、同社が家族経営で35年の歴史があり、累積5,000台以上のAM装置を販売してきたマーケットリーダーであること、産業用3Dプリンターにより世界のResponsible Manufacturing=責任ある製造への移行を加速させるという企業方針、また日本では1993年以降、現在はNTTデータ ザムテクノロジーズを通じ、100を超えるユーザーに装置販売をしてきた実績が示された。
次にZaepernick 氏 からは航空宇宙やガスタービン産業の課題と、金属AMの実用事例が紹介され、それらを可能にする装置と材料の融合技術がEOSの強みとして述べた。加えてハードウェアの新しい技術のひとつとして、レーザー焦点を80μm径ガウス分布形状から250μm径ドーナツ形状まで可変最適化できるビームシェイピングにより、凝集物減少、スキャン高速化、スモーク削減を含めた生産性向上を実現するとの紹介があった。樹脂の技術材料開発の動向として、射出成形メーカーが求める寸法誤差やばらつきを満たすレベルになっていることや、海外企業がスマートフォンの撮影からカスタムメイドのメガネフレームを設計、AM製造を行うことで、カーボン排出量を58%削減した事例が紹介された。また運用コスト削減と生産性向上の両立を実現する、2024年12月から市販が発表されたEOS P3 NEXT(参照:ShareLabニュース)や、パートナーAMsolutions社のパウダー管理システム、自動アンパッキングシステムの概要紹介もあった。
Weilhammer 氏からは、EOSグループであり、EOS装置のチューニングメーカーとしてのAMCM社と、レーザー工学のエキスパートとしての独自開発技術や製品の紹介があった。主に航空宇宙産業企業や研究組織からの個別かつ高い要求に応える受注型開発製造を行っている紹介があった。特に2026年デリバリー予定の世界最大レベル800×800×1,200mmサイズの部品造形を可能とし、8本の1kWレーザーを搭載するAMCM M 8Kにつき、重要なガス流量のための機構など、詳細な解説があった。また更なる大型造形への需要に応える開発ロードマップも示された。
Schmitz 氏からは、EOSPRINTを含むソフトウエア製品の新機能や、造形表面熱センシングから以降のレーザープロセスを自動調節しオーバーヒート制御と結果としてサポート構造を減らせるSmart Fusion、熱交換器や冷却水路付き鍛造ダイ製造などの高い要求を満たすために、レーザー照射領域ごとの条件最適化(ボリュームセグメンテーション)を可能にするTDE(Thickness Dependent Energy Input)など、同社がソフトウエア研究開発にも優れていることが示された。
ユーザーからの講演のポイント
リョービ 寳山 氏は、同社の自動車部品ダイカスト製造金型にはめ込む「3D埋子(うめこ、現場で分かりやすいための同社での呼称)」を金属AMで製造すべく、2014年から外注で鋳造効果確認、2018年2月にEOS M 290を導入、1か月後には金型製作に成功したとの履歴を述べられ、課題解決、設計工程短縮の成果も発表された。また造形しやすいが硬度が不足するマレージング鋼からSKD鋼に材料変更したが、造形で割れやすく大型化困難の課題があり、割れにくい材料開発の要望を示された。
フィアロスペース 田中 氏は、同社のモビリティ開発事業の歴史と全容や実績の紹介と、EOS P 770で製造した内装部品をコンセプトカーや開発実走車両の内装に多く使用しているとの紹介があった。
NTTザムテクノロジーズ 小河原 氏は、JAXA LE-9ロケットエンジンに採用された、パイプやケースの金属AM製造部品の概要と、燃料噴射器エレメント開発の経緯や技術を詳しく説明された。従来は約500本の切削加工と接合にコストがかかっていたところ、鍛造部品の上に積層するハイブリッド造形により、部品の約70%を一体AM造形し、50%以上のコスト削減を達成した。またJAXAが民間企業と共創体制で行っているロケットエンジン研究開発プロジェクトの、ジャイロイド構造(メタマテリアル)を用いた熱交換器の設計評価試作について技術的な説明があった。
JAXA 岡田 氏は、国産ロケットH3(LE-9エンジン搭載)の開発プロジェクトマネジメントや打上げ執行責任者を担われた立場から、H3ロケットの企画開発背景、開発経緯、技術開発の要点や苦戦、経験より得たプロジェクトマネジメントの要点、注意点などを大変わかりやすく話され、普段は知ることが出来ない貴重な話を伺い、学ぶことが多い講演であった。またAMはロケットと親和性が高く、期待は大きいとの見解を示された。
参加を終えて
今回は久しぶりの開催とのことだったが、国内各地から多くのユーザーが参加され、対話と交流の時間を長く設定されたこともあり、参加者が積極的に活発な対話をされている様子が印象的であった。また、懇親会のあいさつの中で、ユーザー企業の方から「EOS、NTTザムテクノロジーズからのユーザー支援は導入時から今まで変わらず、感謝している」と述べられたことからも、メーカー、販売代理店、ユーザーが長年にわたり良い関係を築いてきたことが、今日の多くの活用成功事例につながり、また課題ー技術開発ー新たな課題という継続的な取り組みを協力して回してきたことが、正のスパイラルとして3者それぞれの利益と成長につながっていることが垣間見えたイベントであった。またそれは日本の特徴として、時間はかかれども着実にAMを有効活用していく良いモデルとして、これからも継続発展されることを期待したい。
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設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。