新フィラメント追加で、顧客の多様な造形ニーズを実現―RAISE3D日本オープンフィラメントプログラム
以前も取材させていただいた FDM方式( Fused Deposition Modeling:熱溶解積層方式) の3Dプリンター、Raise3Dの日本総代理店である、日本3Dプリンター株式会社(以下、 日本3Dプリンター社)。
本記事では、 Raise3Dで活用可能なフィラメントの用途とラインナップ拡充をめざすプログラム 「RAISE3D日本OFP(オープンフィラメントプログラム)」 (以下、 RAISE3D日本OFP)に、新フィラメントが追加されたということで、その具体的な内容に迫る。
造形材料の「純正品」と「サードパーティー」の違い
FDM方式の3Dプリンターは、フィラメントと呼ばれる線状の造形材料を、プリンターヘッドを加熱させることで溶かしながら造形する。
造形材料によって、フィラメントの形状や大きさ、最適な温度や押し出す速度、造形時の移動速度などが異なる。そのため、3Dプリンター機器の製造メーカーは、検証済みの造形材料を「純正品」として推奨している。
検証済みでないフィラメントを利用して不具合が起こったとしても、保証範囲外としておかないと、メーカーとしてはリスクが大きいためだ。
ある造形材料メーカーによると、大手3Dプリンターメーカーに造形材料の評価を依頼した際に、数百万円のコストを見積提示されたという。(評価後にメーカーが定める水準以上の品質だったとしても、純正品や認定品と認められるわけではない。) このような状況の中、メーカー側が製造者責任を負う覚悟で、対応する造形材料をきちんと評価した純正品の信頼性は高い。
しかし、コストや対応している材料の多さを考えると、純正品ではなくサードパーティー製のフィラメントを利用したいと思う造形者も多いだろう。現状、純正品以外の造形材料は利用できない、というシステム的、機械的な制限がかかっている造形装置は少ないはずだ。またサードパーティー製のフィラメントは利用しようと思えば、簡単にトライできるので試行錯誤しながらアタリだしを行い、最適なパラメータをはじき出し利用している造形者も多いと思われる。
サポート力に自信があるからこそ可能な「RAISE3D日本OFP」と新フィラメントの概要
純正品のコストの高さ、サードパーティー製のフィラメントのメリットを踏まえて、サポート体制のきちんとした商社が、造形材料と利用する際のパラメーターを整備し、販売するプログラムを行っているケースがある。
それが、日本3Dプリンター社の「RAISE3D日本OFP」だ。本プログラムついて、同社の北山氏に伺った。
「耐熱性、耐薬性、伝導性など、樹脂でもさまざまな特性を備えた造形材料を求める声は以前からありましたし、これからも新しい要望は出てくるでしょう。メーカーが純正品としてサポートしていない材料でも、優れた材料は次々と出てきます。 弊社はRaise3Dの日本総代理店としてサポート体制をしっかりと備えているので、自社で検証した造形材料をお客様にご紹介していく取り組みも行っています。」(日本3Dプリンター 北川氏)
Raise3Dの日本総代理店である同社は、販売だけではなく、国内で販売した製品のサポートも請け負っている。サポートの現場を背負っているからこそ、造形時にどのような障害が多いのか、 どんな要望をユーザーが持っているのかを同時に把握できるのだ。そのような知見を活かして、日本3Dプリンターはメーカーがまだ認定していない造形材料を自社でリサーチ、検証し、サポート対象として販売提供している。
そのような自社でのサポート力が充実している日本3Dプリンターが、新たにサードパーティ製のフィラメントとして追加したBASF 3D Printing Solutions社製のフィラメント「Ultrafuse PAHT CF15」 は、PAをベースとし、カーボンファイバーを15%含有している。
従来のPAベースのフィラメントよりも、高い硬性と耐薬品性を持つのが特徴だ。最大150℃の耐熱性を有し、高い精度と強度による造形ができ、機械類やバイクなどの最終用途部品にも対応するスペックだという。BASF 3D Printing Solutions社の特殊サポート素材「HiPSフィラメント」とも互換性があり、複雑な形状でも安定した造形ができるのも特徴だ。
編集後記
RAISE3D日本OFP一つを取っても、同社の強みが垣間見えた。つまり、メーカーの総代理店としてサポートを日々行うことで育まれた顧客のニーズを汲み取り、優れた材料をリサーチ・検証する体制である。
そのような体制を備えた日本3Dプリンターだからこそ、今回新たにフィラメントとして追加すること出来た「Ultrafuse PAHT CF15」の恩恵を受ける顧客も多いはずだ。引き続き、同プラグラムの動向は注視していきたい。
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2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。