大学発スタートアップ創出に向け、「3Dプリンター×建築」分野で客員起業家を公募 ― 慶応義塾大学
株式会社ビズリーチと慶應義塾大学は、未来の新産業創出支援を目的に、研究成果を持つ研究者と起業をリードする経営プロ人材のマッチングをはかる「慶應版EIR(客員起業家)モデル」を始動。客員起業家を募った。第二弾では「3Dプリンター×建築」の分野で人材募集を行った。
慶應版EIR(客員起業家)モデルとは
「慶應版EIR(客員起業家)モデル」は、起業経験者や新規事業立ち上げ経験者など、「0→1」フェーズに必要な事業計画策定、マーケティング、ファイナンス等のスキルを持つ経営プロ人材を副業・兼業で募集し、新しい分野での事業創造を目指す取り組みだ。この取り組みを通じて、経営プロ人材は転職前に大学発のシーズ事業に起業前から関わることができる。
第一弾公募は、ナノカーボンを用いた新しい集積光(ナノカーボン光源)デバイス」の世界初の実用化を目指すプロジェクトだ。2022年12月15日から2023年1月11日まで、副業・兼業限定で、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」にて公募が行われ、190名の応募のなかから2名の客員起業家を選定した。客員起業家制度は東京大学や京都大学でも取り組みが始まっている。そのほかの大学への広がりも期待されるところだ。
慶應版客員起業家の第2弾では「3Dプリンター×建築」分野で起業家を公募
第2弾として、2023年3月28日から4月24日までの期間で客員起業家の公募を行った。公募の事業内容には、3Dプリンティング技術を活用したリサイクル材料の高付加価値化を目指すアップサイクル事業も含まれる。
1人目は、再利用可能な大型樹脂の3Dプリント技術を建築分野に応用し、廃棄プラスチックの「アップサイクル(廃棄予定のものに付加価値をつけ、新しい製品へと生まれ変わらせること)」を推進することで循環型社会の実現を目指すプロジェクトに取り組む、政策・メディア研究科の松岡康友特任准教授だ。すでに実運用に耐え得る3Dプリンターは完成しており、事業活動の本格化に向け、会社設立を目指す段階だという。
公募ページURLはこちら(募集は終了)
この他にも、「インプラント人工腎臓」や「AI×認知症」など、大学発のシーズ事業への客員起業家の公募があった。
大学側が客員起業家にかける期待
今回の取り組みに関して慶應義塾の常任理事山岸 広太郎氏は、「全社会の先導者を目指す」という目的を実現するため、大学本部にスタートアップの創出・成長支援を担うスタートアップ部門を新設し、大学発ディープテックスタートアップの創出促進に力を注いでいます。学内には優れた研究シーズがたくさん存在していますが、経営人材がいないために起業が難しいケースが数多く発生しており、(第一弾公募の)牧教授の研究シーズもその一つでした。今回のビズリーチでの公募の結果、スタートアップでの事業・技術統括経験を有する客員起業家(EIR)2名に参画していただけたことを大変うれしく思っています。チームビルディングを進め、早期の起業と事業立ち上げの実現を期待しています。慶應義塾としては、人材マッチング以外の支援活動や情報発信などを実施することにより、日本や世界で活躍できる大学発スタートアップの創出と成長につながるよう力を注いでいきます」と、今後も取り組みを続けていく意向を示した。
ビズリーチによると、大学発シーズ事業への参画を希望するプロ人材は少なくない。客員起業家制度も今後他大学へ広がっていく可能性があり、3Dプリンター活用分野でのシーズ事業化も今後登場するかもしれない。
産学連携の関連記事
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。