株式会社島津製作所(京都府京都市、以下、島津製作所)は、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用した材料開発の高度化と効率化を目指し、MI-6株式会社(東京都中央区、以下、MI-6)と基本合意書(MOU)を締結した。MI-6が提供する「miHub」は、SaaS型の実験計画プラットフォームであり、高度なデータ解析と知見の蓄積を実現するMIツールである。(上部画像は島津製作所のニュースページより。出典:島津製作所)
目次
分析装置とMI連携で材料開発の効率化へ
本協業においては、島津製作所の分析装置とmiHubをシームレスに連携させることで、材料の配合や加工条件の最適化、新素材の発見を可能とし、ユーザーの研究開発業務の効率向上を狙う。従来の材料研究では「勘や経験に依存しがち」であり、「蓄積された分析データを十分に活用できていない」といった課題があった。こうした問題に対し、両社は共同でPoC(概念実証)を進め、新たなソリューションを創出していく方針である。
中期経営計画でマテリアル分野を強化
島津製作所は、同社の中期経営計画において「マテリアル」分野を4つの重点領域の一つと位置づけ、分析・解析技術と量産装置技術を融合させることで材料開発および生産の革新に貢献することを目指している。具体的には、材料試験機、X線CT装置、走査型プローブ顕微鏡、ガスクロマトグラフ(GC)、液体クロマトグラフ(LC)、エネルギー分散型蛍光X線分析装置などの分析計測機器を提供するのみならず、金属3Dプリンターによる加工工程に欠かせない真空脱脂焼結炉なども含めたトータルソリューションの提供を進めている。
データ駆動型材料開発を加速
今回の協業は、マテリアル開発分野においてデータ駆動型アプローチの普及とその深化を推進するものである。miHubを通じた高度なデータ解析と島津製作所の分析装置との連携により、これまで属人的に行われてきた材料探索やプロセス条件の最適化を、より科学的かつ効率的に実施できるようになる。これにより、研究現場では意思決定のスピードと精度が格段に向上し、新材料の発見から実用化までのサイクルを短縮することが期待されている。さらに、これまで活用しきれていなかった膨大な分析データの有効利用が促進されることで、企業の研究資産が再評価・再活用される土壌が整う。
島津製作所について
島津製作所は、1875年に創業された日本を代表する精密機器メーカーであり、分析計測機器、医用機器、産業機器などの分野で世界的に高い評価を得ている。特に質量分析計やクロマトグラフ、X線分析装置などの分析技術に強みを持ち、医薬、環境、食品、材料など幅広い産業に貢献している。近年では、AIやIoTを活用したデジタルソリューションにも注力し、研究開発支援や生産プロセスの革新を通じて社会課題の解決にも取り組んでいる。
MI-6について
MI-6は、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)技術を駆使して材料開発におけるデータ活用を支援するスタートアップである。AIや機械学習を用いた解析手法により、材料探索やプロセス最適化を科学的に進めることを可能にしている。製造業、化学、エネルギー、素材など幅広い産業分野に対し、研究開発の高度化と効率化をもたらすソリューションを提供している点が特長である。本社は東京都中央区に所在し、大手企業や研究機関との連携も活発に行っている。
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