指輪から人工衛星まで!ヘガネスジャパンの高精度金属3Dプリンターへの取り組み
2020年1月29日から3日間に渡り、東京ビッグサイトで開催される国内最大級の3Dプリンティング & AM技術の総合展「TCT Japan 2020」。ShareLab(シェアラボ)編集部は同イベントのメディアパートナーとして事前情報をお届けしていく。
今回は、世界最大の金属粉末メーカー「ヘガネスジャパン」の宮本政博氏にお話を伺った。
ヘガネスジャパンとは
はじめて名前を耳にする方のために、「ヘガネスジャパン」社について少しご紹介しておく。
ヘガネスは創業約220年、もともとは石炭採鉱会社としてスタートしその後、金属粉のパイオニアとして自動車産業や一般産業用に対して、材料提供を行ってきた。スウェーデンに本社を構え、世界75か国2,500社以上の顧客を持つ 世界最大の金属粉メーカーだ。
3Dプリンター分野では、3DプリンターベンチャーのFCUBIC社を買収し、バインダージェット方式の3Dプリンターを開発し販売している。 また、自社3D プリンターを利用してサービスビューロとして受託製造を手掛けている。このほか、バインダージェット以外の方式の3Dプリンターにむけて金属粉の製造提供も行っている。造形材料、3Dプリンター、サービスビューロと一気通貫で積層造形に取り組むのは同社の大きな強みだろう。
ではさっそく同社宮本氏のお話を伺っていきたい。
* * *
Q: 金属粉の造形材料も作りつつ、金属3Dプリンタのメーカーでもある、ということで「一気通貫」で積層造形に取り組まれていますね。
はい。日本では2015年から受託の造形、自社で開発した金属の3Dプリンターを使って我々の手で部品を作って、お客様にお納めするビジネスを行っています。3Dプリンターの販売は、2017年からスタートしており、直近では2019年10月に日本第一号機を納入して、無事に稼働させることが出来ました。
Q:”DIGITAL METAL”という名前の金属3Dプリンターですね。特徴を教えて下さい。
こちらの特徴を一言でいうと、高精度な金属3Dプリンターです。一番頑張って 、±50 μm (マイクロメートル) の寸法精度を出すことが出来ます。 これは、今ある3Dプリンティングの中では最も高精度な水準です。
Q:こちらの3Dプリンターを日本円で買うとおいくら位でしょうか?
一台7千万円となっております。焼結炉は別の機械で別料金となっております。既に工業炉をお持ちのお客様もいらっしゃいますので、そういったお客様は 金属射出成型(MIM) 用の真空焼結炉をお持ちであれば、その炉をそのまま転用して頂くことも可能です。
Q:3Dプリンター造形の方式としてはバインダージェット方式を使用されているということですが、どのような特徴がございますか?
その特徴は部品の滑らかさにあります。金属の粉を”パウダーベッド”という方式で薄く敷いていくところは、他のレーザー方式、電子ビーム方式と同じです。大きな違いは特殊な糊を使って材料を溶かさずに造形する点です。
その後、焼結プロセスで焼き固めて密度を出す、その点が違います。一連のプロセスで材料は溶けていないです。これが、冒頭で述べた表面の滑らかさに繋がります。
Q:造形できる部品の大きさは、どれくらいのサイズでしょうか?
金属で作った部品の目安は、50mm立方ぐらいです。印刷技術の向上で一番大きなワークだと、おおよそ150㎜の大きさまで造形可能になってきました。造形サイズはワークの形状によって変わってきます。
Q:金属の造形密度はどのような感じでしょうか?
95%以上の密度が出ます。これは 金属射出成型(MIM) の射出成形という技術と同等の密度になります。レーザーや電子ビームで融解するタイプの3Dプリンターと比較し、異方性のない等方的な金属組織を得られるメリットがあります。
Q:海外ではどれぐらい受託製造の部品点数、そういう事例でざっくり件数をお伺いすることは出来ますか?
2013年から数えると、これまでに50万点の部品を製造してきています。造形した部品を、実際に量産製品に組み込んでいるお客様もいます。部品を量産して収める実績については、年間30種類の部品をトータルで4万点程度作って納入しています。
Q:なるほど、実際に量産ベースで造形している例があるということですね。
そうなんです。実は皆様のお手元にあって使っているもの、例えば、歯医者さんで治療を受けているときに、実は3Dプリンティングで作られた部品を組み込んだ機器が使われている可能性があります。このように3Dプリンティングの事例は、静かに進んでいます。実はこのような事例はいっぱいあり、皆様にご紹介したいころですが、やはり守秘義務というものがありまして、どうしても皆様に全てを知ってもらう訳にはいかないのです……
Q:これは、 TCT Japan 2020で具体的にご相談するしかないですね 笑
そうですね。広くお伝えできない部分については、こっそりご相談して下さい 。可能な範囲でできる限りお答えします 笑。また、私自身が過去に設計業務を経験しておりますので、その知識とバインダージェット方式の特性をあわせてお伝えすることで、お客様の設計に役立てて頂きたいと考えています。TCT Japan 2020では、セミナーを実施いたします。バインダージェットについて最新の状況をお伝えしようと考えております。
Q:“具体的にこんなものが作りたいんだけど”とか、 “自分達が作っているワークに近い事例がないか”みたいなご相談を、 TCT Japan 2020のブースにて頂ければ良いということですね。
そうですね。“試作造形をやって、どうそれを量産に結びつけるか”。そういったご相談は日常的に受けております。TCT Japan 2020は、そういったディスカッションが出来る良い機会になるという風に考えております。
試作については、一点からお見積りいたします。材料から手掛けているところは、弊社の強みでございますので是非ご相談下さい。
Q:最後に、ここが見所!といったところがあれば教えて下さい。
当日の会場には、豊富なサンプルを用意してお待ちしております。今まで日本ではご紹介したことのないものを、スウェーデンの本社から取り寄せて展示する予定です。是非ご期待ください。
日本初公開のサンプル、楽しみです!それでは、本日はありがとうございました!
* * *
インタビューを通してShareLab編集部の所感
ヘガネスジャパンは、造形材料、3Dプリンター、サービスビューロと積層造形分野を一気通貫でサービス提供している点に強みをもっている企業だ。金属3Dプリンターの活用を検討する際に、加工精度や強度に関連する金属密度は、注目するべき性能だが、同社の実績値は非常に高い水準にある。一点からの出力依頼が可能なので、サンプル出力を検討してみてもよいだろう。
関連情報
3Dプリンタ―の”先進っぽさ”を感じさせる作りに男心をくすぐられる毎日。さまざまな業界にて活用されるアディティブ・マニュファクチャリングの今をお届けします!最近のニュースは、鳥を飼い始めたこと。