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金属AMのリアル-金属サービスビューロの現在

どんな大きさで造形しているのでしょうか?

――どれくらいの大きさのものを造形していますか?

造形できるサイズは造形機によって変わってきます。弊社の場合、8機の3Dプリンターを設備として持っています。チタンを扱う場合は電子ビーム方式のArcam Q20 plusという機種で、最大造形領域は最大直径350㎜、高さ380㎜となっています。アルミの場合はレーザー方式のConcept Laser XLINE 2000Rで最大幅800 x 奥行400㎜ 、高さ500㎜の造形物を扱えます。

――鋼種によって使う設備が違うんですね。

はい。おなじ金属AMの設備でも特性や最大造形サイズが異なるので、どんな鋼種でどんな形状を実現したいかをお伺いしながらご提案していく形です。

JAPMTが保有する主要3Dプリンター機器―レーザービーム
JAMPTが保有する主要3Dプリンター機器―レーザービーム
(画像はJAMPTより提供)
JAMPTが保有する主要3Dプリンター機器―電子ビーム
(画像はJAMPTより提供)

AMに向いていないモノづくりとは?

――金属AMに向いていないモノづくりはどんなものでしょうか?

AMは万能の工法ではありません。現時点では簡単な形状のものを大量に生産するようなモノづくりには向いていないと思います。従来の設計の部品をAMで造形するとコストもリードタイムも悪化する場合も多いです。そういう意味で既存工法でできる事は既存工法に任せるという判断が必要だと思います。

また材料も実際に現在使っている材料と全く同じものを利用することはできません。都度都度すりあわせを行っていく必要があると思います。

――航空宇宙や自動車、医療分野など、認証が関わる業界のお客さんはどのように対応されているのでしょうか?

認証や規格に関してはお客様と事前にすり合わせを行いますが、お客さま側が受け入れ検収の際に独自に行われています。お客様によって基準が異なりますので難しい部分ですね。

AMに向いているモノづくりとは?

――では逆に金属AMに向いているモノづくりはどんなものでしょうか?

従来の工法では実現できないモノづくりがAMの本領を発揮する分野です。ですが、現状の3Dプリンターは、切削では不可能だった形状を自由に造形できる点、難削材、高級材と言われている材料をリーズナブルに利用できる点が大きなメリットです。また自由形状を実現できるため、複数部品を集約した設計変更を行うことで、分散していた工程を集約できるのでリードタイムの短縮も狙っていく事ができます。

航空宇宙分野では、部品の軽量化と強度の両立を実現することは非常に価値がある取り組みだと言われています。また部品点数を減らすことも、品質規格に適しているか試験する費用を低減することができるので非常に意味のある取り組みになります。軽量化を行うためにラティス構造を利用した軽量化を行う一方で、硬いチタンやタングステンカーバイドを使って強度を担保していく取り組みを行っていらっしゃるようです。

リードタイムを短縮できるように、複数部品を一体化した設計にするなど、ある程度AMで造形することを加味した設計を行うことでこうしたメリットを実現できます。一体で造形すると、試験する部品の点数が削減できますし、ろう付けなどの加工の工数も削減できます。部品点数の削減と材料置換のメリットを実現しやすいのがAMの大きな特徴といえるでしょう。こうしたメリットを活かす設計には、「DfAM(Design for Additive Manufacturing)」と呼ばれるAM向けの設計概念を踏まえた設計が効果的です。

しかし、日本の製造業にはまだこの「DfAM」という考え方が浸透しておらず、AMを最大限に活かすことができていません。そのため、昨秋にJAMPTは、自動車の研究開発を専門とする株式会社東京アールアンドデー(東京R&D)社と技術提携を行い、彼らが持つ設計・解析技術と我々のAM技術を組み合わせて、デザイン・設計から製造まで一気通貫のサービス提供を始めています。プレスリリースはこちら。(詳細は近日公開予定の第二弾記事にてご紹介。)

――そもそも設計者は、設計する時にどうやって製造するかを意識して設計している事がほとんどでしょうから、当たり前なことかもしれませんが、こうした工法としてのAMの特徴を踏まえて設計していく事とても重要なんですね。

そう思います。とはいえ、設計データを元に、シミュレーションや事前検証などもお客様側でできるようになってきているのですが、まだまだ発展途上中のところもあり、デジタル上のシミュレーションと実際の仕上がりには差が出やすい現状もあります。

金属パウダーの真球度を100%でシミュレーションしているにもかかわらず、実際の材料では100%ではない、などの細かい違いが仕上がりを左右してきます。また設計データ上は成り立っているけれども、造形時に形状が再現しにくい形状などもありますので、この辺りはAM造形者の腕のお見せ所かもしれません。

――デジタルツイン、サイバーフレンドリーという言葉はそういうレベル感でモノづくりに影響してくるんですね。同じ設備で同じデータを出力しても仕上がりが違うケースというのはある、と考えければいけないのでしょうか。

そうですね。お客様によっては、同じ材料と同じ設備で同じデータを複数社にサンプルで造形依頼する場合があります。コンペですね。その結果を受けて、弊社は受注した事が何度もあります。その際にお客様から「御社と他社で仕上がりが違うのですが、なにが違うのでしょうか?」という趣旨のご質問をいただくことがあります。「設計データをもとにシミュレーションを行い、造形者が適切なパラメータ設定を行い造形する。造形したものが適切な品質か社内で確認する」という一連のプロセスのどこかで違いがあるのだと思います。

――なんというか、凄みを感じさせるエピソードです。ここが違う、あそこが違うではなく、すべてが違うんですね。

経験とノウハウの蓄積による工夫の積み重ねが品質に大きく影響します。同じ材料、設備でも仕上がりに違いが出てくるのがAMの現況かと思います。私たちは造形者の観点からDfAM(Design for Additive Manufacturing)に関して一定の知見を持っていますが、実現したい機能によって、形状や材質は変わってくると思います。お客様のご依頼ベースで一緒に作っていくことも大切にしています。

***

いまのリアルな金属AMについて第一線で活躍している人に話を伺いたい!ということでサービスビューロとはなにか、どんなことをしているか、どんなことを一緒にできるかに関してJAMPTの小松氏さんにお話を伺った第1回。

次回も引き続きJAMPT小松氏ににお伺いした、JAMPTの最新の取り組みをご紹介する。今回のお話にでてきたAMを最大限に活かすための株式会社東京アールアンドデー(東京R&D)との技術提携に関してご紹介していく予定。乞うご期待!

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編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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