3Dプリンターによるシリカガラスの加工が可能に。九州大・藤野研の挑戦
シリカガラス(石英ガラス)は、熱に強く、さらに薬品にも侵されにくいという特長を持つ一方で、加工が難しいことが知られている。そんなシリカガラスを 3Dプリンターで自由に造形できるように 造形材料として開発したのが、九州大学グローバルイノベーションセンター・藤野研究室だ。
シェアラボ編集部では、2019年10月15日から開催のCEATEC(シーテック)会場で、開催初日に合わせてリリースされた本技術について藤野茂教授にお話を伺うことができた。以下その詳細をご報告したい。
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Q.今日発表の「3D光造形法による複雑形状シリカガラスの作製」とは、具体的にはどのようなことなのでしょうか。
「この度、私たち九州大学・藤野研究室では、3Dプリンターで造形可能な造形材料としてのシリカガラス開発に成功しました。独自開発した粉末と溶媒を混ぜて、光を照射し固める事により自由に造形することができます。」(藤野教授)
「石英は難削材として知られており、加工の難しさから複雑な形状を実現することができず、用途が限られていました。昨今のモノづくりで求められる機能性に対してプラスチックが対応できる範囲も限られます。今回、造形材料としてシリカガラスを開発した事によって、企業の皆様にもシリカガラスの使用を視野にいれていただくなど、活用の幅が広がるのではないかと思います。」(藤野教授)
Q.シリカガラスの特徴にはどのようなことがあげられますか。
「光学的透明性や高い強度があげられます。熱にも非常に強く1000~1200℃程度でも耐える事ができます。さらに耐薬品性にも優れていて、強い酸性とアルカリ性どちらの液体中でも安定して使用する事ができます。」(藤野教授)
Q.提供価格はいくらくらいでしょうか。
「まだ詳細は未定ですが、お客様のご要望をもとに都度試算します。量産のご依頼の場合は、価格を調整することもできるかと思います。」(藤野教授)
Q.大学の研究室として開発を進められているとのことですが、今後はどのように技術を展開される予定ですか。
「私たちは大学の研究室ですので、研究や開発を進め、用途やアプリケーションは民間企業の皆様にご検討いただく形で、技術の活用の幅を広げていきたいですね。大学発ベンチャーとして事業化を目指していて、現在は協業パートナーとなる企業様を探しているところです。」(藤野教授)
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ガラスも3Dプリンターで自由に造形できる時代到来!
ブースに展示されていた、フラクタルや折り鶴の形のサンプルからも、ガラスと変わらない透過性と精工に作製できる様子が手に取るようにわかった。
シリカガラスを使用することによるモノづくりの発展と、藤野研究室の活躍に期待したい。
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