日本ミシュランタイヤ、群馬県内企業と3Dプリンティング人材育成で連携
日本ミシュランタイヤは、群馬県内の中小企業7社と共同で、3Dプリンティングに代表される積層造形技術に関する技術者を養成する連携組織「群馬積層造形プラットフォーム(GAM)」を2021年7月に立ち上げる。
ものづくりのデジタル化が進む中、新たな技術を取り入れることで地元製造業の体質強化を図るのが狙いだ。
目次
3Dプリンターとミシュラン
ミシュランは、10年以上前から3Dプリンター活用に取り組んできた歴史を持つ。2006年から金属3Dプリンターに取り組み、タイヤの複雑な溝(トレッドパターン)を刻むための複雑な金型製造を内製化。実際にタイヤの量産に活用している。その蓄積したノウハウをもとに独自の教育プログラムを構築するに至った。
また金属3Dプリンター製造販売するAddUp(アダップ)社を2016年設立。同社はこれまでに産業用金属3DプリンターのFormUp350DMLS3Dプリンターなどを使い、航空宇宙、自動車、エネルギー、医療、高級、など幅広い業界の顧客ニーズにこたえてきた。
さらに、同社は3Dプリンティング技術を活用したサスティナブル戦略も積極的に推進している。2019年には、Michelin Visionary Conceptと呼ばれる持続可能な3Dプリントコンセプトタイヤを発表した。
「タイヤを超越した」事業展開の一環として、3Dプリンター活用のノウハウなどを提供
背景と取り組み内容
群馬県は世界遺産である富岡製糸場をはじめ、近代ものづくりの重要な拠点として発展してきた。現在は自動車を中心とした製造業が盛んであり、自動車業界に変革をもたらすCASEやVUCAなどの環境変化に迅速かつ柔軟に対応する必要がある。
群馬積層造形プラットフォームの前身となる検討委員会は、群馬県下の意欲ある製造業企業が集まり2020年8月に始動、その後、群馬金属積層造形プラットフォーム準備委員会と名称を変え、参加企業を増やしながら準備を続けた。そして今回、群馬積層造形プラットフォームと名称を改め、本格的に金属積層造形技術をベースにした教育プログラムなどを提供していくとのこと。具体的な取り組みとして、ミシュランの合弁企業であるAddUp(アダップ)社の3Dプリンターを群馬県太田市にあるミシュランの太田サイト内に設置する。併せて、ミシュランは教育プログラムと運用のノウハウを所属企業に開放するとのこと。
日本ミシュランタイヤ株式会社の代表取締役社長 須藤元氏によれば、日本ミシュランタイヤとして今回の連携は『タイヤを超越した』サービスやソリューションの展開の一環であるとのこと。自動車、タイヤなどの業界の枠を越えて、社会に貢献する姿勢を強く見せていることが伺える。
関係者のコメント
ジェトロ群馬は、2019年7月にミシュラングループからこの構想を聞いて以来、この2年間で、県内企業、大学、自治体との橋渡しを行い、設置検討委員会、準備委員会を先導してきました。世界の製造業を取り巻く環境変化に対応して高付加価値産業へ転換するためには、3D金属プリンターなどの最新デジタルものづくり技術と、その技術に精通したデジタルものづくり人材が鍵を握る一方、そうした設備は高額で、また教育できる指導者もいないため、1企業では手が出せないというのが現状です。ミシュラングループと地域中核企業が連携する本プラットフォームにより、最新技術と教育プログラムへのアクセスが容易となり、デジタルものづくり人材が生み出されることで、イノベーションの創出と地域経済の活性化にも繋がると期待しています。そして、この『群馬モデル』が、日本の新たなものづくりの礎となることを願っています
JETRO群馬所長 柴原友範氏
現在ミシュラングループは、過去130年間積み上げてきた高品質で持続可能なタイヤをお届けするミッションを主におきつつ、『タイヤを超越した』サービスやソリューションの展開を推進しています。今回の積層造形技術を軸とした産官学連携はその一環であり、業界の境界を越えて社会の発展に貢献したいという我々の明確な意思表示でもあります。
日本ミシュランタイヤ株式会社 代表取締役社長 須藤元氏
弊社太田サイトから技術を提供する形で携わることができて大変光栄です。地元企業、自治体、大学の皆様と密に協業し、群馬県そして日本の産業発展に寄与するため、新たな価値創造に尽力して参ります
群馬県の新たな『産業振興基本計画』では、既存産業の強みを生かしながら、時代の変化に合わせた新しい成長機会を探求する『両利き(ハイブリッド)の産業構造』を目指していくこととしています。ミシュラングループの強力なバックアップの下に進められる本プラットフォームの構想は、その実現に欠かせないプロジェクトであり、大いに期待しています。
群馬県 産業経済部長 鬼形尚道氏
本プラットフォームは、JETRO群馬による力強いリードはもちろん、前橋市や太田市などの自治体や大学の支援、地元企業の積極的な関与など、県内の多くの産学官関係者の協力によって設立に至ったものであり、県としても、県内のものづくり産業が今後とも継続的に発展していけるよう、積極的にバックアップしてまいります
今後の展開
ミシュラン本社があるフランスでは、既に同様の人材育成プラットフォームのトレーニングが始まっており、今回の設立により、群馬県にも同様のトレーニングを導入し、積層造形のノウハウを持つ人材を増やしていくとのこと。
国内におけるミシュランの活動について
日本でのタイヤ販売事業は1964年に始まった。浜松町・羽田空港間に新設されたモノレールに、ミシュランスチールラジアル“X”タイヤが採用されたのが日本におけるミシュランの第一歩だ。
1975年に日本ミシュランタイヤ株式会社を設立し、日本市場におけるプレゼンスを着実に高めてきた。 1991年には、日本とアジア市場向けのタイヤの研究・開発とテストを行うR&Dセンターとしてミシュランリサーチアジアを設立。2011年1月より、日本ミシュランタイヤ株式会社とミシュランリサーチアジア株式会社は合併し、現在は日本ミシュランタイヤ株式会社1社体制となっている。
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