日本3Dプリンター株式会社が大塚化学製フィラメント「ポチコン」の販売と数量・期間限定の無償提供を開始
RAISE 3DのMEX方式の3Dプリンターをはじめとした廉価帯の3Dプリンター装置の販売を手掛けて業績を伸ばしている日本3Dプリンターは、RAISE 3Dの日本総代理店としてオープンフィラメントの取り組みを推進してきた。オープンフィラメントとは、一般的にはサードパーティーの材料の利用を認めることを指すが、日本3Dプリンターは自らが、サードパーティー製の材料フィラメントの利用検証を行ったうえで、互換性を公認する取り組みに発展させている。
そのオープンフィラメントの取り組みは、7社のメーカーの40種類以上の材料を利用できるまでになっているが、大塚化学が取り扱っている「ポチコン」のフィラメント材料の取り扱いを始めることになった。キャンペーンとして、2022年8月17日(水)から試供品の提供を始めるとのことで10月14日(金)までの期間限定&先着50セット限定で各30グラムのサンプルを無償提供するサービスを実施する。
強度・剛性を備える強化樹脂ポチコン
大塚化学は、ポカリスエットで知られる大塚製薬のグループ会社で、樹脂材料の製造、中国工場での射出成形受託事業を行っている。材料メーカーとしては、自社で研究開発したチタン酸カリウム繊維材料、TISMO(ティスモ)をプラスチックと混ぜ合わせて、ポチコン(POTICON:Potassium Titanate Compound)という名称で提供してきた。
ティスモは一般的なガラス繊維(GF)の数千分の1の大きさ。モース硬度は、鋳鉄と同等で、炭素繊維(CF)と同等の強度、剛性を持っている。繊維が小さく高い強度・剛性を持っているティスモは、超薄肉成形などを実現してきた材料だが、樹脂にティスモを混練させたポチコンはLEDリフレクター部品やカメラモジュール部品、自動車の軸受け部品等の高強度、高摺動性が求められる用途まで、さまざまな用途に用いられてきた。
ナイロンに炭素繊維を配合し材料の強度を向上させるように、ティスモをナイロンに混練した樹脂材料であるポチコンは、高い強度・精度を実現しながら反りのない造形が期待できる国産のエンジニアリングプラスチック材料だ。
3Dプリンター用フィラメントは、フィラメント状に加工した上で、熱を与えながら造形できるように添加剤を加えるなど組成が調整されているため、射出成形用のポチコンとは完全に同じ材料とは言えないが、同じような物性を期待できるだろう。
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自分が業務で利用する3Dプリンターの材料は、選択肢が多いほうが望ましいが、故障は困るというのが多くの利用者の率直な意見だろう。自社でユーザー企業のために検証を行い公認材料を地道に増やしてきた日本3Dプリンターの活動はこうしたユーザーニーズを拾い上げる地道な活動だが、着実に成果を上げているようだ。
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メーカーの研究開発職として新素材開発に従事後、特許庁で特許出願の審査業務を10年以上経験。弁理士として独立後は、企業の知財戦略をサポートする傍ら、3Dプリンターをはじめとした先端技術に関する情報発信を行っている。趣味は深夜のショッピングチャンネル鑑賞。