3D Systems が新製品を発表、プラットフォーム確立と多方面事業展開に注力
3D Systems は SLS 380 を始めとして、新たな 3Dプリンターや材料、ソフトウェアを一挙に発表した。展開を予定している業界や製品スペックについて解説する。
3D Systems の拡大戦略
3Dプリンターメーカー大手の 3D Systems は、英スタートアップ企業の Additive Manufacturing Technologies(AMT)との提携を決めた。
3D Systems は新たに発表した 3Dプリンター 「Selective laser sintering(SLS)380」を基軸として、3Dプリンティングの全工程を統合するプラットフォームの構築を目指す。
次世代選択的レーザー焼結型3Dプリンター(SLS 380)、3Dプリント用CADソフト(3D Sprint)、3Dプリント用に最適化された材料群(DuraForms)、AMT の仕上げ処理システム(PostPro 3D)、これら全てを統合して提供することで、ユーザーはこれまでより効率的な 3Dプリンター運用が可能だ。
複数のソフトウェアを使い分けたり、規格の不一致に悩まされたりする心配は最早なく、より自由な設計とコスト削減への道が開かれることとなった。
SLSプラットフォームの全容
3D Ststems 社の手がける統合プラットフォームの中核となるのは、新製品の SLS 380 だ。
8つのヒーターと温度センシングでチャンバー内の熱均一性を制御し、高い再現性を実現する。温度センシングには高解像度赤外線カメラを用い、毎秒10万以上の熱データをサンプリングする。
スループットの向上にも尽力し、運用コストの低減も可能だ。
このプラットフォームの一環として、3D Systems は、新たな材料品質管理システム「MQC 600」も導入した。MQC 600 は、バージン材とリサイクル材料の最適な比率を計算し、最大4つのプリンターへ同時に材料を供給することができる。材料廃棄物を最小限に抑え、オペレータの負担を軽減することが可能だ。
プリントされた成型品は AMTの後処理システム「PostPro 3D」によって最終仕上げに入る。製造工程で生じた粉末の除去や、溶媒蒸気による表面平滑化処理を経て、完成だ。
これら一連の工程は完全に自動化され、人の手が極力介入しないように最適化されている。一貫した製造管理は、高いスループットや歩留まりの達成に寄与することだろう。
金属・歯科医療・自動車向けにも展開
3D Systems は、SLSプラットフォームとは別に、様々な業界に特化したソリューションの提供も明らかにした。
新たに発表した「DMP Flex 350Dual」と「DMP Factory 350Dual」は金属粉末をレーザーで焼結する、ダイレクトメタル印刷(Direct Metal Printing:DMP)方式の 3Dプリンターだ。非常に複雑な構造の金属部品を製造でき、医療機器、航空宇宙、ターボ機械、半導体、自動車などへの応用が期待される。
「DMP Flex200」はダイレクトメタル印刷の中でも、歯科医療用の金属部品製造に特化した 3Dプリンターだ。高品質で、小型、複雑な形状を持つ金属部品用に設計された DMP Flex200 は、各人に合った部分義歯や差し歯の製造に使われる。
また、3D Systems は、9月にソフトウェアスタートアップのOqtonを買収。「3DXpert 17」と呼ばれる自動車部品の3Dプリンティング用ソフトウェアを取りこみ、自動車部品の生産時間を短縮し、部品精度を高めることに成功。
樹脂材料の開発にも余念がない。新たに発表されたエポキシ/アクリレート ハイブリッド樹脂「Figure 4 Rigid 140C Black」は、従来広く使われてきたポリブチレンガラス繊維に匹敵する靭性を持ち、電子部品を内包するカバーやハウジングに最適だ。
同社は、3DXpert 17を除いて、上述した全ての製品を 2022年内に提供開始すると発表した。凄まじい攻勢スピードは、3Dプリンター業界を牽引するメーカーとしての自負を感じさせる。
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