Carbonの3DプリンターでSWANSが起こした「モノづくりの革新」
Carbonがはまる企業、はまらない企業
―言葉を選ばずにお伺いしますが、Carbonがはまる企業とはまらない企業の違いを教えてください。
導入がスムーズに進む企業の例を振り返ってみると、Carbonが得意とする柔らかい材料を活かしたモノづくりができる事、既存の設計を3Dプリンターで造形するだけではなく、AM(Additive Manufacturing)を最大限に活かせる設計変更にチャレンジできる事、経営層や意思決定者が明確に推進することを決めている事の3つが挙げられます。特に日本では最後の「経営層や意思決定者が明確に推進することを決めている事」が重要になってきます。
―意思決定者のコミットを重要視しているのはなぜですか?
新しい工法であるAMの推進で成果を上げるためには、設計変更が不可欠です。設計変更だけではなく材料を変える必要も出てくるかもしれません。試験方法を見直す必要があるかもしれません。AMは材料費も通常の樹脂ペレットよりも高いし、採算が取れる形で製造するには多くの要素を変更する必要があります。そこには多くの調整事項があります。担当者が一人で変えられる範囲を大きく超える場合が多いのです。JINSさんでも山本光学さんでもそうでしたが、意思決定者が現場推進者を支援し、取り組んでいくことが必要になると思います。
―確かに今やっている仕事に加えて、他の部門を動かすのはとても大きな壁ですね。
逆に経営層のコミットがあれば、社内に3Dプリンターに詳しい設計者や造形者がいなくても、サブスクリプションの中で、データも用意できますし、造形支援も受けられるので、実現できます。そういう取り組みを行っている人たちはとても高い熱量を持っています。そういった熱量があれば、3Dプリンターでいままでできなかったことができるかもしれません。
―では逆にCarbonを活用できない企業に関して教えてください。
設計変更ができず、材料がはまらず、意思決定者の協力が得られない場合です。例えば、単純に「設計変更できないが、金型レスでモノづくりしたい」といった場合、3Dプリンターの導入全般に対して言える事ですが、費用対効果を上げにくいと思います。またCarbonのサブスクリプション契約の中には、設計データの共有など、製品開発の重要な機密を共有しないと実現できないサービスもあります。例えばアプリケーションエンジニアによる設計に対する3Dプリンターならではの設計アドバイスや、既存の設計データをラティス構造化するサービスなどです。大手企業ほど、設計データの取り扱いは重要な機密として取り扱っている事は理解できます。Carbonが提供しているからといって、設計支援を活用する必要はもちろんありません。ですが、一緒にやろうと言っていただければ活用できるリソースを私たちはご用意しています。意思決定者の支援があれば、社外リソースを活用する座組を作りやすいでしょうし、関係部署との調整も担当者個人だけの責任で実施しなくて済むようになりますから、開発に専念できるのではないでしょうか。
AM推進は新規事業と似ている
CarbonというAMの前工程、造形工程を広範に支援してくれるパートナーと協業し、新しいモノづくりに取り組むことは新規事業に似ているかもしれない。工法を変える事は製造現場からするとリスク以外の何物でもないが、リスクを取るからこそ、結果を変えることができる。
現状の強みを活かした新しい価値の創造を言葉だけではなく実際のモノづくりに落とし込む一つのアプローチがAMへの取り組みだ。そしてリスクを最小化するための選択肢の一つが、機材だけではなく運用面の不安を一緒に解決しようとしてくれるチームを持つことだとおもわれる。Carbonのサブスクリプション契約はまさにそうした姿を実現しようとしている。そして実際に活用した企業の事例が続々生まれていることから、挑戦する価値があると言えるだろう。
2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。