ExOneがバインダージェット3Dプリンター「InnoventPro」をリリース
アメリカの3Dプリンターメーカーで米ナスダック上場のExOne社がエントリーレベルのバインダージェット3Dプリンターをリリースした。
Innovent+の後継機である「InnoventPro」と名付けられたこの3Dプリンターは、ExOneによるとエントリーレベルのバインダージェット方式金属3Dプリンターとしては最先端レベルで、教育機関や研究施設などを含むさまざまな産業分野で利用できるとしている。
(画像は、ExOne公式Webサイトより引用)
InnoventProの技術
そもそもバインダージェット方式とは?
バインダージェット方式とは、3Dプリンターのインクジェットヘッドから光硬化性樹脂を結合材として噴射し、粉末を一層ずつ固めていく方式である。光硬化性樹脂の色を変えることで、粉末を容易に着色できるため、 カラーで造形することができ、デザイン関連の確認やフィギアの製作などに向いている。
また、造形速度が速く、未使用の造形材料は次回の造形に再利用して無駄を排除できるため、時間と資源を節約でき、優れたコストパフォーマンスを発揮する。
メリット | ・色のついた結合剤を複数混ぜることでフルカラーの造形が可能 ・造形速度が速い ・サポートの除去が不要 |
デメリット | ・造形物の表面がざらつきやすい ・造形物の耐久性が低い |
新製品「InnoventPro」の概要
- 金属バインダージェット用の世界最先端のエントリーモデル
- 世界で最も売れているメタルバインダージェッティングシステム
- Innovent+の造形面積を超大型化
- アップグレードされたプリンティングヘッドにより、造形速度が3倍以上に
- 焼結を簡素化するために、ナノ粒子を埋め込んだ特許取得済みNanoFuse™バインダーを追加
- ExOneの生産用メタルバインダージェッティングシステムとアクセサリーのラインナップに、インダストリー4.0オペレーション用の自動誘導車X1D1を追加
InnoventProは、3リットルと5リットルの2つの新しいビルドサイズを提供しており、700cc/hを超える印刷速度を実現している。同3Dプリンターに搭載されているシステムは、研究者、そして金属部品を迅速かつ低価格で持続的に生産したいと考えている機械やMIMショップから大量生産業者まで、あらゆるメーカーを対象としている。
InnoventProのプリンティングヘッドは、同社製品であるX1 25Pro®およびX1 160Pro™メタル3Dプリンターで使用されているのと同じ、循環型プリントヘッドモジュールを搭載しているので、ユーザーは研究開発から大量生産まで簡単にスケールアップすることが出来る。
また特筆すべきこととして、独シーメンス社のシーメンス・デジタル・インダストリーズが、2021年後半に発表される予定の同製品のインダストリー4.0コラボレーションパートナーとしての役割を果たす。
我々のバインダージェット3Dプリンターは、すでに世界中の多くのお客様から高い評価を頂いています。そうしたお客様からたくさんのフィードバックをいただき、これまでになかったサイズ、スピード、性能を持ったエントリーレベルのバインダージェット3Dプリンターをリリースすることが出来ました。
ExOneのジョン・ハートナーCEO
ExOne社の事例―学術機関によるInnovent+の利用
ExOne社の3Dプリンターはシーメンスのような企業だけでなく、学術機関にも導入実績がある。ポーランドのコザリン工科大学は、ExOne社から金属バインダー噴射システムを搭載した3Dプリンターを調達し、2020年6月には機械工学部に、今回リリースを発表した「InnoventPro」のアップグレード元となっている「Innovent+」を設置している。コザリン工科大学の学生も同3Dプリンターを利用することができ、アディティブ・マニュファクチャリングを研究している。
私は数年前からバインダージェット技術の開発を追いかけてきましたが、その可能性と多様な応用分野に基づいて、我が大学の新しい研究センターのためにこのような3Dプリンターに投資することを決めました。
コザリン工科大学、Błażej Bałasz教授
また同3Dプリンターは、地元企業を支援し、アディティブ・マニュファクチャリングの利点を伝えるためにも使用される予定である。
ExOne社について
ExOneは、工業向け3Dプリンターの製造販売を行っているメーカーであり、本社はアメリカにある。米国、ドイツ、日本の生産サービスセンターを通じ、顧客へ生産開始前の共同制作や印刷した製品を提供する。研修や技術サポート、消耗品や交換部品なども提供している。2013年には、NASDAQでのIPOが完了し、上場している。
同社3Dプリンターは、特殊シリカサンドとセラミックスから鋳型とコアを製造することができ、今回紹介した金属3Dプリンターだけでなく、砂やセラミック材料に対応している3Dプリンターの製造販売も行っている。造形方式としては、バインダージェット方式を採用している3Dプリンターの取り扱いが多い。
エントリーレベルにも拘わらず、学術、産業分野での高度な利用が可能なバインダージェット方式の金属3Dプリンターのリリース情報をお届けした。年々造形領域も大きくなっており、今回の新製品も3Dプリンティングの可能性を拡げる一製品となり得るのではないだろうか。
今回のExOne社に見られたような新製品発売から、それを利用した製品事例のサイクルが回れば回るほど、国内のAM業界は良い方向へと進む。今後も同社の製品開発に注目していきたい。
「ExOne社」をさらに知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
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