金属内部に磁気コードを埋め込む偽造防止技術を開発 ― テキサスA&M大学
テキサスA&M大学 Karaman氏らの研究グループが、3Dプリンターを用いて金属内部に磁気コードを埋め込み、外部からデータを読み取れる技術を開発した。製品にトレーサビリティを付与することで、製品の偽造防止を目指す。
製品偽造を防止するための「埋め込み磁気コード」を開発
情報が容易にやり取りできるようになった昨今、製造業を揺るがす問題となっているのが製品の偽造だ。
バーコードやQRコードに代表される光学読み取りコードは安価かつ簡便に情報を付与できるが、その分書き換えや偽造のハードルも低く、製品の信頼性を担保しにくいという懸念がある。
そこで白羽の矢が立ったのが「磁気コード」だ。電磁波は多くの物質を透過してコードを読み取ることができるため、電磁波で読み取る磁気コードは製品内部に埋め込むことができ、容易に書き換えることができない。
アメリカにあるテキサスA&M大学物質工学研究科に所属するKaraman氏らの研究グループは、これらの特性に着目し、磁気コードを用いた偽造防止技術を開発した。3Dプリンターを活用して金属内に磁気コードを埋め込み、そのデータを外部から読み取れるようにする。外部からは視認できないものの、専用の3軸磁気センサーで観察すれば内部に埋め込まれた磁束強度をマッピングできる。
埋め込み磁気コードを開発するために、3Dプリンターの造形方式にもこだわった。
磁気コードを金属内に埋め込むためには、複数種類の金属を使い分けて構造を作る必要がある。
平らに広げた金属粉末を熱によって溶融させる「PBF(Powder Bed Fusion)」では、複数の金属を使い分けることが難しい。
同研究グループは、複数の金属を使い分けるために、「L-DED(Laser-Directed Energy Deposition)」と呼ばれる方法で積層造形を行った。
L-DED 方式は、「DED(Direct Energy Depopision)」と呼ばれる造形方式の一種である。金属粉末を吹き付けながらレーザーで焼結する過程で、複数の金属を使い分けることができる。
粉末床溶融結合法と指向性エネルギー堆積法の造形方式については、以下の記事を参考にしていただきたい。
今回の磁気コード埋め込み技術は、「複数の金属を使い分ける」「金属の使い分けに対応できる3Dプリンターを使用する」という方法で生み出された。L-DEDのように、複数の材料の使い分けができる3Dプリンターが増えていくことで、今回のように新たな価値が発掘される機会も増えていくことだろう。
ShareLab NEWSでは、今後も3Dプリンターの最新技術の動向を追っていきたい。
AMにおけるその他の偽造防止技術
偽造防止や製品にデータを付与する取り組みは近年の技術的トレンドとなっており、AM業界においてもさまざまな研究が進められている。以下の記事では、食品の内部に2次元コードを造形した事例や、人体に電子回路をバイオプリントする技術開発の事例についても紹介しているので、ぜひご覧いただきたい。
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