Equispheresの球状アルミニウム粉末をレーザー3Dプリンターメーカー2社が高く評価
レーザー3DプリンターメーカーであるAconity3DとTRUMPFは、材料メーカーEquispheresの球状アルミニウム粉末を高く評価した。両者は Equispheres と連携して、3Dプリント精度と生産性の向上を進めている。
目次
金属3Dプリンターで注目される素材「アルミニウム粉末」
Equispheres の球状アルミニウム粉末をご紹介する前に、アルミニウム粉末の特徴を解説する。
ShareLab NEWSの読者の皆さんはご承知だと思うが、金属3Dプリンター市場は、ドイツのEOS社など海外メーカーを中心に世界シェアの高まりや実用化としての事例が積極的に進み、注目度は年々増加している。
特に、製造業においてさまざまな課題に活路を見いだす可能性があるとされ、採用も広まっている金属3Dプリンターではあるが、今もなお技術面やコスト面などでの課題は残る。例えば、金属3Dプリンターの材料において、樹脂(プラスチック)と比較して、金属の材料費そのものが高く3Dプリンターでの造形に適した材料としての技術開発など課題として挙げられる。
その中で、アルミニウム粉末が注目を集めている理由のひとつは価格の安さだ。金属3Dプリンターに適用できる金属材料の中では、チタンなどに比べアルミニウムは比較的安価なため、コスト面でのメリットが大きい。さらにアルミニウムは金属としては軽量かつ高い強度を備える、従来の金属材料よりも切削性が優れているため追複合加工が容易なため造形自由度や軽量化に貢献する。
もちろん、メリットだけではない。
アルミニウムの粉体は、他の金属と比較し流動性が悪く、アルミニウムは酸化しやすいことから、粒子が異形になりやすい。その結果、異形の粒子になると造形物にボイド(気泡)を生じやすくし、変形や強度低下などの原因になる。またアルミニウムの比重の軽さが造形プロセスではネックとなる場合もあり、 さらに金属3Dプリンターは、微細な金属粉末を取り扱うことから、粉じん爆発のリスクがあります。アルミニウムは比重が小さく粉体が舞いやすいことから、 粉じん爆発のリスク が高いなど、取り扱う技術力も必要になる。
Equispheresの球状アルミニウム粉末が高く評価される理由
Equispheresは、金属3Dプリンター用粉末を製造する材料メーカーだ。
同社が軸とする「球状アルミニウム粉末」は、2020年に特許出願した噴霧技術を利用して作られている。その特徴は「丸く、小さく、均一で、滑らか」であるということ。表面加工されたアルミニウム粒子は一切凝集しない。
こうした特徴は、金属3Dプリント材料としても大きな利点となる。
金属3DプリンターメーカーであるAconity3Dによると、Equisphereのアルミ粉末を利用した場合、製造に掛かる時間が従来の 4割以下、生産コストが半分以下になるという。ここでは、レーザー照射によるエネルギーを無駄にせず、効率的に吸収できることが、生産性向上に寄与している。
Aconity3Dの取り組み
Aconity3DのマネージングディレクターYves Hagedorn氏は、次のように語っている。
「私たちは、お客様が当社の専用プリンター機器を利用するときに、最高の生産体験をして欲しいと思っています。私たちのデバイスを紹介する上で最良の方法は、最高の粉末を用意することです。」
3Dプリンターメーカーにとって、自社のプリンターと、そのプリンターに相性の良い材料を同時に提供することが望ましい。これまでの検討の結果、Aconity3D は、Equispheres の球状アルミニウム粉末が良いパートナーたり得ると確信を得たようだ。
Aconity3D は 3Dプリンターを顧客に提供するスターターキットとして Equispheres のアルミ粉末を直接提供できるよう、Equispheres と契約を結んでいる。
これに留まらず、さらなるコスト削減や生産性向上のための様々なテストを実施していく予定だ。
TRUMPFの取り組み
Equispheres と提携を結んでいるのは Aconity3D だけではない。
つい先日、レーザー金属融合及びレーザー金属堆積ソリューションを得意とする3Dプリンターメーカー TRUMPF も、Equispheres の球状アルミニウム粉末の認定を進めていることが発表された。
Press Release: TRUMPF and Equispheres collaborate to qualify high-performance aluminum for additive manufacturing
TRUMPFが実施したテストにおいてもEquispheres の球状アルミニウム粉末は優れた性能を示し、製造コストを半分に短縮できる可能性が示されている。この結果を元に、さらなる加工パラメータの調整プロセスに移行した。認定が終われば、TRUMPF の大きな武器の1つとなるだろう。
この認定プロセスは 2022年初頭に完了する予定だ。
TRUMPFは、オーストリア、フランス、イタリア、ポーランド、米国、日本、ドイツ、スイス、英国、メキシコ、中国、チェコ共和国に生産拠点を持つ金属3Dプリンティングのパイオニアだ。同社はまた、航空宇宙、自動車、および防衛産業のパートナーと協力してビジネス展開を行っている。
TRUMPFがEquispheresに注目したことで、金属3Dプリンター業界の標準は大きく変化することになりそうだ。
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