最速の光造形プリンター「SLA 750」を発表 ー 3D Systems
大手3Dプリンターメーカー3D Systemsは、光造形プリンタ「SLA 750」を発表した。SLA 750は、従来製品と比較して2倍の造形速度と、3倍のスループットを実現する。(写真は SLA 750。出典:3D SystemsHP)
光造形3Dプリンタとは
熱による積層造形と比較して、光造形の優れた点は「精度」と「材料選択の多様さ」だ。
光造形では、光によって材料を変質させ硬化させる。元々この技術は半導体チップのパターニングに多用された。3次元造形をする場合には、複数の光源を用いて空間中の特定点に光を集中させる。これが3Dプリンタに用いられる光造形技術(Stereolithography Apparatus:SLA)だ。
光の波長程度の解像度を有するSLAは、サブミクロンオーダーの精密な造形を得意とする。
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また、熱に強い耐性を持つ材料であっても3D造形が可能という点が特徴だ。
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一方、光造形3Dプリンタはコストや造形速度の面で明確な不利を負っている。産業分野で光造形3Dプリンタが広く利用されない原因だ。
最速を実現できた背景とは?
3D Systemsが今回発表した「SLA 750」及び、「SLA 750 Dual」は、世界初の同期式デュアルレーザーを用いた光造形3Dプリンターだ。
光造形3Dプリンターでは、複数のレーザーを「同じ場所に、同じタイミングで」照射することが重要になる。複数のレーザー光が重なった場所で光化学反応が起き、材料が硬化を始めるためだ。
また、光を当てる時間は、短過ぎても長過ぎても良くない。短ければ材料が硬化せず、長ければそれだけ造形に時間が掛かってしまう。
極短時間のみレーザー光を照射する場合、照射タイミングの同期はそれほど簡単ではない。例えば、各レーザー光源から照射先までの距離がそれぞれ異なる場合、同じタイミングでレーザーを放射しても、レーザー光が目的地に到達する時間にはズレが生じてしまう。こうしたズレは、照射時間が短いほど顕著に表れてくるだろう。
3D Systemsは、このレーザー照射タイミングを正確に制御することに成功した。その結果が、造形速度の大幅向上だ。SLA 750は、従来製品と比較して2倍の造形速度を実現した。
生産体制をサポートするアクセサリ
3Dプリントのスループット(材料を投入してから製品が完成するまでの時間)を決定するのは、3Dプリンタ自身の造形速度だけではない。後工程の表面処理や、各工程の受け渡し時間もスループットを決定する要因となる。
SLA 750は、後工程処理装置「PostCure 1050」や、フル生産ワークフローをサポートするOqton社の製造OSなどと連動させることができる。これら周辺アクセサリはSLA 750の生産効率を高め、従来の3倍というスループットを実現した。
同社は、新しいプリント材料「Accura AMX Durable Natural」も同時に発表している。優れた伸縮性と高い剛性を併せ持つ本材料は、過酷な機械的ストレスに晒される場所での適用に最適だ。SLA 750は、当然このAccura AMX Durable Naturalもサポートしている。
SLA 750は、光造形3Dプリントにおける造形速度の問題を解決しつつ、材料選択の幅を更に拡大した。SLA 750は、光造形3Dプリントを産業用途へ大きく引き上げる役割を果たすことになるだろう。
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