中国の風力発電設備メーカーゴールドウィンドが廃棄風車翼を建築3Dプリント材料として再利用
中国の風力発電設備メーカーであるゴールドウィンドは、廃棄される風車翼を建築材料として再利用する技術の開発に成功した。廃棄風車翼を周辺の住宅地で3Dプリント用建材に変えることで、材料の運搬コストを抑えることができる。
ゴールドウィンドの風車翼リサイクル事業
ゴールドウィンドは、中国の北京に本社を置く多国籍風力タービンメーカーだ。1989年に前身となる企業が設立されて以来、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカに多くの風力発電設備を供給してきた。
近年では、それら風車群も劣化が進行し、耐用年数が近づきつつある。データの推定によると、中国内で廃棄されるタービンブレードは、2025年までに5,800トン、2028年までに74,000トンになる見込みだ。
環境負荷低減に対する国際的関心の高まりは、固形廃棄物の杜撰な取り扱いを許容しない。廃棄されるタービンブレードの処理にかかるコストは電力事業者の悩みの種となっている。
こうした背景の元、ゴールドウィンドは廃棄されるタービンブレードを3Dプリント用建材として再利用する技術を開発した。この技術はタービンブレードの30%以上をリサイクルし、廃棄物処理コストの削減に寄与する。
配合率最大化の試み
ゴールドウィンドが苦心したのは、粉砕したタービンブレード配合率の最大化だ。
廃棄物処理コストを低減するためには、可能な限り多くのタービンブレード粉砕微粉末を建築材料内に配合することが好ましい。しかし、粉砕微粉末の配合率を高めすぎれば、建材としての強度を維持することができず、安全性が損なわれてしまう。
研究者たちは、材料の配合率、粉砕微粉末の粒径、グラデーションを細かに調整しながら実験を繰り返し、強度要件を満足する材料比率に辿り着いた。
ゴールドウィンドでは、既にこの3Dプリント材料を用いて、様々な構造物を製作している。
固体廃棄物の地産地消
本技術は、材料の輸送・運搬コストの面でも革新的だ。
中国の風力発電施設は沿岸都市部だけでなく、内陸遠隔地に散在している。これら設備から廃棄されるタービンブレードを回収し、都市部で廃棄処理をしようとすれば、その運搬コストだけでも莫大なものとなる。
一方、3Dプリント用建材とする場合、タービンブレードを都市部まで運搬する必要はない。3Dプリンターと粉砕機の方を遠隔地に持ち込めば、その場で加工し、建材として活用することができる。まさに固体廃棄物の地産地消だ。
本リサイクルモデルは、環境負荷が小さく、効率的な次世代産業構造の見本を示した。中国の大手エネルギー事業者がこうした見本を示したことは、中国内に留まらず、世界中のリサイクル事業、及び3Dプリント事業を刺激するものとなるだろう。
建築分野における3Dプリンターと再生利用
廃棄物も適切に処理すると資源になる。ガラス繊維やカーボンファイバーなど再生コストが問題になる風力発電用ブレードのリサイクル分野だが、建材への転用などさまざまな取り組みは今後も積極的に行っていくことが望まれる。SDG’sへの取り組みなどが求められる現在において、消極的なリサイクルにとどまることなくアップサイクルなどの高付加価値な活用の道を探っていくべきだろう。シェアラボ編集部でもそのヒントになる事例がいくつかあるので、ご紹介したい。
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