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【第一回】出力サービス企業での3Dプリンター導入と活用の実際~3Dプリンター出力サービスの現状~

中山木型製作所 外観

業務用3Dプリンターを利用する方法の1つとして、企業による出力サービスを利用する方法が挙げられる。 また今後、3Dプリンターを購入し自社での出力を行ったり、他社に向けた出力サービスの展開を考えているケースもあるだろう。しかし3Dプリンターの実情や、実際の使い方、メンテナンスなどに関わる情報は、あまり多く表に出てはいない。 そこで、実際に3Dプリンター出力サービスを実施している企業に赴き、3Dプリンターにかかわる話を伺ってきた。今回はその中から3Dプリンター出力サービスの現状について紹介する。(写真:中山木型製作所 外観 /出展: 中山木型製作所 )

中山木型製作所とは

今回、お話を伺った有限会社中山木型製作所は、愛知県碧南市にある。碧南市は知多湾、衣浦港に面しており、トヨタ自動車の関連会社などを中心とした、製造業が非常に盛んな市だ。中山木型製作所は、昭和23年に創業。自動車部品を中心とした鋳造に使う木型を製作していた。

出力サービスを実施した背景

3Dプリンターを導入したのは平成27年。導入のきっかけは新しい人材の確保のためだという。木型の製作は職人の世界だ。また木型や鋳物に対するイメージも先進的とはいいづらいものがある。若い人材に安心して会社に入ってもらい、長く働いてもらうためには、今後の成長が見込めることや先進性といったイメージが必要と考えたそうだ。また木型製作を主体として事業の安定を図るためにも、木型とは異なるもう1つの事業軸を作る狙いがあったという。

最初に導入したのは3D Systems社のCubeX Duoだったという。現在ではCubeX Duoを使用することはないというが、ここで様々な出力トライを行ったことが3Dプリンター出力サービス実施のきっかけになった。

現在中山木型製作所で稼働している3DプリンターはStratasys社の熱溶解積層方式3DプリンターDimension Eliteおよび、インクジェット式3DプリンターObjet30 Primeの2台だ。しかし全国に協力会社をもっており、現在3Dプリンターで出力可能な、ほぼ全ての材料に対応が可能である。協力会社の参加は、3Dプリンターを所有していたものの、十分に活用することができず、3Dプリンターが休眠状態にあった会社に声を掛けることで実現した。

中山木型製作所では、ネットやSNSなどを活用し、全国から依頼を集めることで、3Dプリンターが活用できる仕組みを作り上げた。中山木型製作所では企業や大学などから広く依頼を受けており、名古屋大学や明治大学、北海道大学などからの依頼もあったという。依頼の中には、ナノ分野で光の屈折を研究するための拡大モデルなど、先進的な事例も多く存在している。

中山木型製作 室内の様子 (出展: 中山木型製作所 )

中山木型製作所での3Dプリントサービスの流れ

 基本的にはメールフォームからの申し込みとなる。ネットを通して形状データをやり取りし、形状データと必要な個数から見積もりを行う。加工時の詳細な状況が把握できないと見積もりを行うのは困難であるため、例えば「三辺の大きさで、どれくらいの値段になるか」というような大まかな見積もりには対応できない。

また、依頼者側では3Dプリンターでの加工を想定している場合でも、求められる性能や予算によっては、切削や真空注型といった別の加工の方がメリットが大きい場合もあるという。そのような場合には、加工可能な協力会社などを紹介してくれる。3Dプリンターでは出力できない場合でも、サポートや別の手段の提案が可能であるため、形状のデータがあれば、まずは気軽に相談してみてほしいという。

見積もり後、3Dプリンターでの造形となる場合には中山木型製作所または協力会社にて出力を行う。サポートの処理などの後加工を済ませた後、完成品が納品される。

3Dプリンターは先進的技術であることから、テレビやメディアにも取り上げられることは多い。しかしそれゆえに、どのようなものでも簡単にできるというイメージのみが先行してしまっているという。

現在流通している3Dプリンターの材料費は安価ではない。また造形にともなうサポートの処理にかかる工数などもある。メディアのイメージほどには簡単ではないことを依頼者側も理解しておいてほしいそうだ。
 

「3Dプリンターの実情」を知る。3Dプリンター見学

中山木型製作所では3Dプリンターの見学を受け入れている。見学に訪れるのは、3Dプリンターの購入を検討中の中小企業が多い。中山木型製作所を訪れるのは愛知県内にある製造業が多く、3Dプリンターを使って部品や冶具を作ることを検討している最中であることが多いそうだ。

デモ出力などは行っていないが、中山木型製作所3D造形事務所内にある2台の3Dプリンターを実際に見ることができる。中山木型製作所が所有する3Dプリンターで作ったサンプル出力品や、協力会社が所有する他の機種で出力したサンプルの確認も可能である。

また、3Dプリンターの種類や材料の種類、材料費、3Dプリンターの保守といった、実際に3Dプリンターを購入した後の具体的な話についても相談することができる。3Dプリンターは、どのようなものでも簡単にできると思われがちだが、材料費や保守点検費が安くはないなど、所有する上では事前に知っておいたほうが良い情報も多い。

3Dプリンターの機械自体も安いものではないため、購入する前に相談できる場所があればという思いで、見学の受け入れを行っているという。見学コースは中山木型製作所Webサイトのフォームから申し込みが可能だ。

第二回に続く

【第二回】3Dプリンター出力サービスを提供する側と、利用する側が知っておくべき内容
【第三回】3Dプリンターを活用するために、購入前に知っておくべきこと

関連情報

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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