日野自動車の挑戦!フラットフォーマーを通じて描く未来のありたい姿とそこに至る道筋(その1)
100年の一度の大変革を感じるモーターショー
「自動車業界は100年に一度の大変革を迎えている!2020年から社会構造が変わっていく!」自動車各社のトップがメディア向けに一斉に未来をかたった東京モーターショー2019のプレス向けブリーフィングはそんな激動にむけて各社の対策が語られる場となった。
象徴的な豊田社長のプレゼン。
新発売車両の説明が一切なかった!
トヨタブースのブリーフィングでは、豊田社長自らが登壇して集まったメディアにプレゼンをおこなった。驚かされたのは、なんと2020年に発売予定の車両紹介が一台もなかったことである! CASEの到来で、「馬車のようにシェアされる車両が増え、愛馬のように愛される愛車が所有される。」「Aiやネットワーク化に伴う自動化はトヨタ風にいうところの「自働化」として、あくまで人が中心に実現されるべきものだ。人に愛される愛車としての車が持つべき感情や知性を実現していくための挑戦を続ける」というトヨタの考えるCASE時代の自動車感、世界観を豊田社長が高らかに謳う場となった。
ShareLabメモ
CASEとは、Connected(ネットワークにつながる)、Autonomous(自動運転の普及)、Shared & Services(共有されサービスとして利用される)、Electric(電気自動車化する)の頭文字をとった造語。
日野自動車のCASE対応コンセプト
商用車の未来を具現化する4ナンバープラットフォーム
「CASE時代の世界観の提示」という意味では、商用車大手の日野自動車の取り組みが一際目立った。誰でもわかる形で未来の商用車を描こうとする取り組みとして、日野自動車はアニメ制作で有名なサンライズ制作の未来を描いたアニメ『あの日の心をとらえて』のショートムービーを通じて、働く車を生き生きと描いている。当然、劇中で登場する商用車は、今回発表されたコンセプトモデル「フラットフォーマー」で実現できる。
そんな発表の場では、日野自動車の下社長が日野自動車の未来の社長日野未社長と掛け合いをするところから始まった。下社長がヴィジョンを語り、コンセプト作成の中心メンバーが社長と並んで登壇。ヴィジョンの説明があった。
CASEにPを加えて、SPACEと並び変えることで、大きな環境変化に対して、日野自動車が提供するプラットフォームが、人に新しい価値を与えるという価値を生み出すストーリーとしてまとめている。
コンセプトを形に。具現化するフラットフォーマーという存在
3Dプリンターで出力された構造体をもとにセンサー類、ホイールインモーターによる駆動ユニットとデータユニット、電池がビルトインされ、カバーを装着すると出来上がる。自動運転で工場からディーラーに自動で配送される。架装部分はディーラーで出力され、自由に脱着可能。駆動ユニットも、脱着可能でアップタイムも24時間目指すことができるなど、夢がつまった仕様になっている。
絵空事ではない、コンセプトモデルを支えるパートナも存在
コンセプトムービーで省略され表現されている貨物ユニットの脱着や装着を管理する移動式棚管理機構や、その自動仕分けなどの細部、材質や内装が異なる架装部分をディーラーで造形できるのか、等々はこれからの課題なのかもしれないが、 フラットフォーマー自体の実現は以外にそう遠くない未来に実現できるかもしれない。日野自動車のフラットフォーマーコンセプトはイスラエルのREE社の協力があったことを同社のプレスリリースで伝えている。REE社のサイトを見ると荒野を自走するREE社の低床電動駆動車両の写真が掲載されている。車長などのスペックは異なるが、フラットフォーマーコンセプトに大きな影響を与えたと共に、実現可能性を補強する役割を果たしたことだろう。
しかしこの点でフラットフォーマの描く未来の価値が損なわれることは全くない。フラットフォーマーは実現にむけた課題は多数あるにせよ、アイディアベースの未来予測におわるものではない。アライアンスや生産設備開発といった実現可能性のある打ち手を講じれば「手を伸ばせば届く未来」としてフラットフォーマーのコンセプトを実現できることは、ヴィジョンとして非常に強い魅力を放っているように思われる。あるべき姿と現状とのギャップを埋める検討作業がきちんと行われているコンセプトには納得感があるし、きちんと視覚的にも原理的にも可視化してくれている点は、本当によく考えられているなと感じるのだ。
アニメの中で描かれる用途(アプリケーション)
前述のアニメ『あの日の心をとらえて』では、甘酸っぱいストーリーが展開される中で、フラットフォーマーが実現する商用車の用途事例がいくつか登場している。詳しくは7分弱の動画をみてご確認いただきたいが、即場でみるのはちょっと……という方のために、見どころを紹介させていただく。
簡易店舗やサービスを搭載した車両、宅配やバスなどの近距離移動手段を載せ替えることで一台で何役もこなせるプラットフォームを自然に描いているこの動画は、一見の価値があると思う。アニメーションに苦手意識がある方も是非一度ご覧いただきたい。
今回モーターショーでプラットフォーマーのモビリティコンセプトにおいて中心的な役割を果たしたデザイナーの氏にお話を伺いう事ができた。動画が編集できたので、こちらからご確認いただきたい。日野が描く未来のモビリティの誕生秘話
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2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。