3Dプリント住宅メーカーのセレンディクスが、AGCセラミックスとの協業を発表
日本初の3Dプリンター住宅メーカー・セレンディクス株式会社(以下、セレンディクス)が、AGCセラミックス株式会社(以下、AGCセラミックス)の3Dプリンター用セラミック造形材「BRIGHTORB(ブライトーブ)」の活用・開発において同社との協業を発表した。 AGCセラミックスの協業により、技術・芸術両面で優れた未来の家づくりを目指す。(画像は3Dプリンター用素材「BRIGHTORB」で造形したモデル/出典:AGCセラミックス)
セレンディクス社の3Dプリント住宅を、よりクリエイティブなものに
セレンディクスは、30坪の広さで300万円の価格帯を実現する3Dプリント住宅の開発を行っている。セレンディクスの事業内容については、以下の記事を参照いただきたい。
今回の協業では、セレンディクスの3Dプリント住宅を技術面や芸術性に優れたものにすることを目指している。
その具体的な手法が、AGCセラミックスが開発した3Dプリンター用セラミック造形素材「BRIGHTORB」の活用だ。
「BRIGHTORB」を用いる際は、造形後のモデルに釉薬(ゆうやく)と呼ばれるガラス質の粉末をかけてから、再焼成する。それにより、陶磁器同様に質感の向上や着色が可能となる。「BRIGHTORB」を3Dプリント住宅の素材として活用すれば、カラフルな外装や独特の質感が再現できる。
現在は内外装への適用可能性を探っている段階だが、これが実現すればシンプルな3Dプリント住宅に個性という付加価値が生まれる。今後は、耐火性・耐水性・断熱性・内外仕上げの美しさといった住宅素材としての機能を高めるための研究開発が行われる予定とのこと。
「BRIGHTORB」はサステナブルな素材
セラミックは、その加工の難しさから、工業製品の素材としてはあまり活用されていなかった歴史がある。
しかし、複雑な造形が容易に可能な3Dプリンターのセラミック製印刷素材として「BRIGHTORB」が開発されたことで、その風向きは変わってきているという。
「BRIGHTORB」は陶芸分野ですでに活用されており、AGCセラミックス社は2022年9月に、中国に3D印刷センター及び3Dプリンターと材料販売の合弁会社を設立している。
「BRIGHTORB」の特徴の一つに、熱による歪みが小さいことがある。一般的な陶磁器材料は焼成時に10%以上の収縮が起き、歪みやすい。しかし、「BRIGHTORB」は収縮率が約1%と小さい。収縮率の小ささは、3Dプリント時の造形精度の高さにも表れる。また、ガラスの製造工程で生じる副産物を再資源化した人工砂を主原料としているため、エコフレンドリーでサステナブルな素材でもある。
3Dプリンターは住宅業界での活用事例が世界的にみても非常に多い。日本でもセレンディクス社に対する注目度は大きく、それは住宅業界に限らないものだ。
3Dプリント住宅の登場は「マイホームが人生で一番高い買い物」という概念を崩すものになる。今回のセレンディクス社とAGCセラミックス社の協業が、日本における3Dプリント住宅の一般化につながることを期待したい。
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