3Dプリンタの従来のイメージを覆す?!自走式建築用3Dプリンターマシン
2010年代から海外で盛り上がりを見せている建築用3Dプリンター市場。国内ではまだまだ導入実績数は多くないが、ShareLab NEWSでもその最前線をお伝えすべくフランス企業が提供するコンテナ輸送が可能な建築用3Dプリンターを紹介した。今回は同じく欧州のオランダ企業による、建築現場まで自走することができる建築用3Dプリンターマシンを紹介したい。
RC 3Dp 紹介動画
自走式3Dプリンターとは?
オランダの企業、CyBe Construction社のRC 3Dpは、高さ4mを超える 建築用の大型3Dプリンターマシンである。キャタピラを使って自走しつつ、コンクリート状の素材で建物を作り出すことができる。マシンのアーム部分はABB社のもので可動式となっており、本機下部のキャタピラはゴム製のため自由自在な動きを実現している。
設置部分は油圧式になっており、プリント時に機体の安定感を与えるだけでなく高さの調節も可能となっていて、付属のコントローラ及びソフトウェアで操作が可能。 建築作業は、スピーディーかつ低コストでできるとのことだ。
価格は€180,000(日本円にすると約2,100万円) ※1ユーロを120円で換算
CyBe Construction社の事例に見る建設用3Dプリンターの可能性
オランダはヘルダーラント州の村に特徴的な形をした建物がある。屋根と壁が一体化したようなものを、そのまま上から被せたような特徴的なフォルムを形成している。現地ではDe Vergaderfabriek ”会議工場” の名称で呼ばれており、主にミーティングの場として用いられる。この建物は、ヨーロッパで初めて商業用建物として3Dコンクリートプリンティングを用いて建てられたものになる。
建設期間
De Vergaderfabriekは2019年1月に着工し、CyBe Construction社の技術を用いて、なんとわずか10日間で作り上げられた。
コストメリット
短期間での建設だけでなく、コスト面にも大きなメリットがあり、伝統的な工法だと曲線を使ったクリエイティブなデザインを実現するのは難易度が高いため、コスト的にも高く付くのが普通であった。しかし、建築用3Dプリンターを用いたコンクリートによるプリンティングは曲線の再現も自由に動くコンクリート出力アームにより可能である。
サステナビリティ観点での優位点
昨今、メディアによって頻繁に取り上げられるサステナビリティ(持続可能性)の観点からも、コンクリートによる2Dプリンティングは優れている。
従来の工法よりCo2排出量の40%削減、ごみの削減70%を実現している。何よりもオンサイトでプリンティングする際組み立て、輸送、保管などの環境的コストが非常に少ないのだ。
プロジェクトプロセス
また今回のケースでユニークなのは、こうした成果だけでなくプロジェクトのプロセスだ。
CyBe Construction社 はプロジェクトの開始時には下請け企業として参画したものの、発注先が徐々に3Dプリンターの効率の高さ・コストの低さを理解したため、途中から主契約者として参画する経緯があったのだ。
CyBe Construction社について
CyBe Constructionは、創業者の建設業界に対する想いから生まれた企業だ。業界に身を置いていた当時から、他の業界と比較して自動化プロセスに向けて全く変わっていかない有り様に疑問を感じていた。このような従来の方式に固執し続ける複雑な建設業界の作業をもっとシンプルにして、効率的に働けるよう建設業を再定義する したい、という想いが強くあった。
Every day he was more curious why the construction industry didn’t change to automated processes while other industries had changed decades ago. He decided to not only dream about it, and started CyBe Construction to redefine the construction industry.
CyBe Construction社 は3Dプリンタを開発するだけでなく、さまざまな事業を行っている。3Dプリンティングを用いた適正価格の住宅、人工岩礁、マンホール、 抽象的なアート・デザインの造形・提供など業界を問わない幅広いサービスを提供しているのだ。
引用: https://cybe.eu/about-us/
今後の建築用3Dプリンター
今回のケースで見たように建設用3Dプリンターマシンと一口に言っても、固定式・自走式などその特徴はさまざまだ。また便利さ、効率性、コスト、造形クオリティなど3Dプリンティングの可能性への認識が施工発注側でも深まれば、今回のような事例はますます増えてくるのではないだろうか。引き続き、3Dプリンティング の可能性に注目していきたい。
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