Formlabs本社 製品開発・販売担当役員来日インタビュー Form4開発秘話とFormlabsが目指す未来とは?
2024年4月18日にFormlabs株式会社は新製品Form4の国内販売を開始し、製品の特長などはシェアラボでも詳しくお伝えした。今回はFormlabs本社で製品開発と販売を統括されている役員2名と、アジア太平洋地域の事業を担当されている方が来日され、直接インタビューをさせていただき、Form4開発秘話とFormlabsが目指す未来についてうかがえる貴重な機会を得たので、その内容をお伝えする。( Formlabs品川オフィスにて。右から「Nick Graham 氏」「David Lakatos 氏」「Michael Agam 氏」「シェアラボ編集部 丸岡」)
目次
Formlabs本社 製品開発・販売担当役員来日インタビュー
2024年5月14日にFormlabs株式会社ショールームにて、シェアラボからは丸岡が参加し下記3名の方への約1時間のインタビューをさせていただいた。
- David Lakatos氏, CPO (Chief Product Officer) 製品担当役員
- Nick Graham氏, CRO (Chief Revenue Officer) 販売担当役員
- Michael Agam氏, General Manager APAC アジア太平洋地域事業担当ゼネラルマネージャー
お忙しい中貴重なお時間を頂いた上、多くの質問にも終始笑顔で、また詳しく答えていただき、とても和やかな雰囲気のインタビューであった。3名の皆様、また進行と通訳をしていただいたFormlabs株式会社 チャネルセールスマネージャー 大熊 氏にはこの場をお借りして感謝の意をお伝えしたい。
インタビューの前にLakatos 氏よりFormlabs社と3Dプリンター関連製品の概要、及びForm4の特長について紹介があった。同社は2011年にアメリカで設立され、2014年に日本での販売を始め今年で10年になる。3Dプリンター製品としてSLA方式のFormシリーズと、SLS方式のFuse1を全世界累計で13万台以上販売し、現状従業員約800名の内約1/3がエンジニアとのことであった。日本ユーザーの活用事例として、ARMA社はアームロボットの実用樹脂部品をFuse1で製造し、パーツの40%軽量化とコストダウンの両立に成功したこと、またマジェスティ ゴルフ株式会社ではゴルフクラブ研究開発の試作品内製を従来の石膏材料3DプリンターからFuse1+に変え、試作スピードアップとコストダウンにつなげたとの紹介があった。また、Form4の海外ユーザーとして、Microsoft社やFord社から試作スピードの速さや造形品の高いパフォーマンスに対して好評のコメントの紹介があった。
AM市場の動向とFormlabsが目指す未来とは
次に質問に対しそれぞれ担当の方から口頭で回答をいただいた。
質問:
Form4の全世界、または日本での販売目標は?
Graham 氏:
具体的な目標は明らかにできないが、日本はアジア太平洋地域で最大の販売実績がある需要な地域で、高い品質を求める市場ではあるが、既にユーザーの多い試作用途に加え、Form4の高い品質により射出成形とも十分競合できる。射出成形の需要をすぐに、またはすべて置き換えられるとは考えていないが、用途を広げることで販売も伸ばせると期待している。生産能力の比較実験としてForm4のミキサーラッチ部品を2個取り金型による射出成形と4台のForm4で1,000個生産する時間を測り、Form4の方が速いという結果を動画で公開している。
また例えばインドの市場ではコストが重視され、Form4の材料や消耗品含めた低コストの特長が有効な地域もあり、地域ごとに製品の強みは異なる。
質問:
Fuse1の販売状況や見通しは?
Graham 氏:
Fuse1は成長率の高い樹脂SLS市場において新たな市場を創り出す画期的な製品で、発売以降既にシェアが40~50%に達している。これからは更に新たな市場を開拓しなければならならず、そのために品質と性能とコストで競争力があることをさらに知らせていく。
質問:
世界または日本のAM市場をどのように見ているか?
Graham 氏:
世界全体にAMの普及は一時的に鈍化したが、また安定成長の段階にあるとみている。日本含めいくつかの地域では成長に時間がかかっているが、重要なことは顧客の課題をできる限り細かく知り、プリンターが何をどう解決するかを実証していくこと。
質問:
日本は品質保証要求や心理的な背景からAMでの実用品製造が進んでいない。アメリカではどのようにして進めているか?
Graham 氏:
日本でも歯科分野では世界的にもAM実用品製造が進んでいるとみている。どの地域であっても用途のターゲットを間違えると成立しない。生産数量などAM製造が有利となる用途を探すことが重要。一方、試作用途でも造形スピードが速くなることにより、伸びる用途分野がある。
Form4の開発秘話
質問:
速さ以外のForm 既存製品からのForm4の進化のポイントは?
Lakatos 氏:
精度や精密さは既にForm3で出来ていたので落とさずスピードを上げた。ユーザーからのフィードバックビッグデータの分析により、より多くのパーツが並べられるベースシートの縦横比とサイズを最適化し、造形領域を30%増加したこと。また業界最高レベルの形状精度と繰り返し精度を実現し、50μmピクセルサイズの解像度によりジュエリー用途やMEMSなど微細内部流路ができるようになっている。
質問:
一般にLCD方式の照射光外縁のギザギザを滑らかにするアンチエイリアス、また硬化深度制御にはどのような技術を使っているか?
Lakatos 氏:
ピクセル単位のライトオンオフなどの技術はあるが、より重要な材料の成分構成設計を最適化し、滑らかな外縁や硬化深度の最適化を行っている。
質問:
Form4の開発において最も難しかった課題は?
Lakatos 氏:
低価格で提供するため、実は高額な革新的技術をあえて開発採用せず、汎用品の組み合わせにより、多くのお客様のニーズと性能のバランスを最適にすることに苦心した。
質問:
Form4の開発や試作、また試作でFormlabs自社製品をどのように使ったか?
Lakatos 氏:
開発試作で自社製品を使わなかったらForm4の速い開発はできなかった。アイデアをすぐカタチにして試すことを速く繰り返すことができた。また、Form4の量産部品製造にも使っている。例としてユーザーが使う工具類を保管し、リッドの開閉ヒンジがあるツールボックスはFuse1で一体化して製造し、本体裏側のホールプラグはFormプリンターで製造している。
インタビューを終えて
特に日本で輸入販売されている3Dプリンターメーカーのトップの方とお会いして直接お話を伺う機会がある人や回数はどうしても限られているが、やはりまず企業としてどのような顧客課題に重点を置いて製品開発や販売を行い、また新製品開発にどのような狙いがあり、どのような背景でその製品の性能や価格が決められたのかなど、製品カタログ数値や一般の宣伝からは読みにくいことを聞いて知ることは、メーカー側にとってもユーザー側にとっても重要なことではないかと感じたインタビューであった。
例えばGraham氏は「プリンターの造形速度が速いことは、製品開発において1日にできるトライアンドエラーの回数が多くできることにつながる」と繰り返し仰っていて、それは単にモノが速くできるということより、製品開発の質と速さを上げることの価値が大きいことを意味しており、使う側もそれらを理解の上で自らの仕事の価値を上げるのに適したプリンターを選んで使うことがより高い効果を上げることにつながるのではないだろうか。
今後も今回のような機会を提供いただけるメーカーが増えることを期待し、シェアラボでも積極的に機会を得て、引き続きお伝えしていく。
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設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。