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積層造形物に電子透かしを埋め込む技術を開発

電子透かし技術による造形物

概要

奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 情報科学領域 光メディアインターフェース研究室の研究グループは、3Dプリンターで作成した立体的な造形物に密かに製品管理に必要な情報を埋め込み、その情報が必要な時にファックスのような読み取り装置であるドキュメントスキャナーを使って取り出す技術を開発した。

造形物の形をほとんど変えず、製品番号などさまざまな情報を埋め込むことができるうえ、市販のスキャナーで簡単にその情報を取り出せる

実用的な電子透かし技術として、インターネットサービスとの連携や効率的な製品の製造・流通管理などへの応用が期待される。

▲イメージ図1

背景と目的

画像や音声などのデジタルコンテンツに付加情報を埋め込む技術は「電子透かし」と呼ばれており、著作権保護や改ざん検出などに役立てられている。

近年では、3次元モデルに対する電子透かし技術も研究されており、バーコードやQRコードのように、埋め込まれた情報が直接見える方式もあるが、コンテンツそのものに付加情報を紛れさせ、利用者には知覚されず、コンテンツそのものと不可分なものとして情報を埋め込む技術も多く研究されている。

今回の研究では、近年のデジタルファブリケーション技術の普及を受け、3Dプリンターによる造形物に透かしを埋め込む技術、特に、造形物の本来の機能を損なわないよう、その外形への影響をできるだけ抑える技術の開発を目指したという。

積層造形による電子透かし技術の仕組み

3Dプリンターにはいくつかの方式があるが、主な方式の 1 つに、樹脂を熱で溶かしながら断面図に沿って土器を作るように積層する、熱溶解積層(FDM)方式がある。

この方式では、熱で溶かした樹脂を吐出するノズルを制御して、厚みが一定な層を積層していくことで、望んだ形状を造形する。

通常、層の厚みが一定(図2左上)になるよう樹脂の吐出量を制御するが、この技術であえて、層の厚みを変化させるよう吐出量を制御することで付加情報を埋め込む。

造形物の外形への影響を抑えるため、本技術では重なった 2層を組として、埋め込む情報に応じて厚みのバランスを変化させるよう制御して造形を行う(図2右上)。

▲ 図2

層の厚みは、0.2ミリ程度であるため、数ミリから数センチの比較的小さい領域でも情報を埋め込むことができる。

情報の取り出しには層の厚みの違いを検出する必要があるが、今回の技術では一般に普及しているドキュメントスキャナーを活用した情報取り出し技術を開発しており、特殊な装置は必要ない。

熱溶解積層方式の造形物の表面には樹脂の層により微細な凹凸ができるが、ドキュメントスキャナーでこれを撮影すると凹凸の陰影を捉えることができる(図 2下)。この陰影から厚みのバランスの 変化を検出し、そのパターンから情報を取り出す。

これは電表面に刻むのではなく、層の厚みのバランスを制御するため、造形物の外形そのものにはほとんど影響を与えない。

また、造形物をドキュメントスキャナーで撮影することで、樹脂の層の厚みを精細に画像化することができる。今回は層の厚みの変化を検出する画像処理技術も開発し、埋め込まれた情報を取り出すことができるようになったことで多いに実用性が高まった。

提案手法により情報を埋め込んだ熱溶解積層(FDM)方式の造形物

今後の展望

この技術では、さまざまな付加情報を埋め込むことができるため、例えば造形物に URLを埋め込むことでイ ンターネットサービスと連携させたり、固有の ID を埋め込むことで製造・流通管理に役立てたりす ることなどが可能と考えられている。

BtoBビジネスの中できびしい管理が必要な機密性の高い製品に利用するなど、ビジネススキームの中で活用できるポイントはありそうだ。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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