見えない内部を磨き、3Dプリンター部品を実用へ

2025年10月6日
アルゴヴィジョンテクノロジズのプレスリリースより。

アルゴヴィジョンテクノロジズ株式会社(京都府、以下、アルゴヴィジョンテクノロジズ)は、自社開発の「流体研磨装置」によって、航空機やロケットといった航空宇宙分野における部品内部の精密仕上げを可能とした。従来の手法では到達困難であった複雑な内部構造を均一に磨き上げることにより、次世代ものづくりの可能性を大きく広げている。(上部画像はアルゴヴィジョンテクノロジズのプレスリリースより。出典:アルゴヴィジョンテクノロジズ)

航空宇宙産業における研磨の役割

航空機やロケットで使用される部品は、燃料流路や冷却経路など、複雑で精緻な内部構造を備える。その内壁に微小な凹凸が残存すると以下のようなリスクが生じる。

  • 流体の乱流による性能低下
  • 摩耗や腐食の進行
  • 最悪の場合、安全性を損なう重大トラブル

アルゴヴィジョンテクノロジズの流体研磨は、これらの課題を根本から解決し、部品の信頼性と寿命を向上させる。見えない内部の仕上げこそが、安全を確保する要である。

技術の特長

同社の流体研磨技術は、研磨材を水とともに通流させ、内壁の微細な凹凸を均一に整える方式である。その結果、次の効果が得られる。

  • 高精度加工:複雑で奥深い形状まで均一な研磨が可能
  • 信頼性強化:摩擦や乱流を抑制し、部品寿命を延ばす
  • 効率化:作業時間を短縮し、量産対応も可能

3Dプリンターとの親和性

近年、金属3Dプリンターによる造形は航空宇宙産業でも急速に普及している。しかし、積層造形特有の段差や粉末残りは課題とされてきた。流体研磨はこれらの粗さを均一に除去し、造形物を「試作品」から「実用部品」へと昇華させる。3Dプリンター普及の鍵を握る補完技術としての役割は極めて大きい。

内面研磨がもたらす具体的価値

  • ロケットエンジン燃料流路:燃焼効率の改善と部品寿命の延長
  • 航空機油圧パイプ:流体抵抗低減による軽量化と省エネ効果
  • 3Dプリンター製冷却部品:層残りの除去による熱交換性能の最大化

表面のわずかな違いが、性能、環境負荷、安全性に大きな差を生むのである。

未来を支える展望

同社は航空宇宙にとどまらず、エネルギー、自動車、医療機器といった幅広い分野への展開を視野に入れている。内部から品質を高める独自アプローチは、ものづくりの未来を陰から支える技術として、存在感を増していくだろう。

技術仕様(概要)

  • 技術名:流体研磨
  • 対応内径:φ0.1~φ5.0
  • 対応長さ:最大2000mm
  • 対応材質:ステンレス、チタン、アルミ、コバルト合金、ニッケル合金、銅、その他特殊鋼材

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