株式会社ExtraBold(東京都豊島区、代表取締役:原 雄司)は、同社の協働ロボット型ペレット式3Dプリンター「REX-BUTLER」に採用されている独自の基本構造「バトラー方式」について、特許第7800928号を取得したことを発表した。協働ロボットを用いたペレット式3Dプリンターの基本構造に関する特許としては世界初とみられる。
目次
「バトラー方式」とは何か
「バトラー方式」とは、3Dプリントヘッドを専用ユニットに固定し、協働ロボットがビルドプレート(造形テーブル)を保持して動かすという、従来の3Dプリンターとは逆転の発想で構成された基本構造だ。名称の由来は、ロボットが造形テーブルを持つ姿が、執事(バトラー)がトレーを持ち運ぶ様子に似ていることにある。
一般的な大型3Dプリンターでは、ヘッドやガントリーが大きくなるほど装置全体が大型化し、設置スペースや導入コスト、振動による造形品質への影響といった課題が生じやすい。バトラー方式では重量のあるプリントヘッドを固定し、比較的軽量なビルドプレート側を協働ロボットで動かすことで、これらの課題に対する構造的な解答を提示している。
協働ロボット連携3DプリンターREX-BUTLERの特許概要
今回登録された特許の概要は以下の通りだ。

- 特許番号:特許第7800928号
- 発明の名称:工作機械装置
- 登録日:2026年1月7日
- 特許権者:株式会社ExtraBold
- 発明者:原 雄司/亀山 喬史朗/小林 明日美
本特許は「ヘッド固定×ワーク側移動」という基本構造そのものに関する特許であり、個別の部品や制御方式の特許ではなく、協働ロボット型FGF(Fused Granulate Fabrication)方式3Dプリンターのアーキテクチャに関わる広範な権利となる。
協働ロボット連携3DプリンターREX-BUTLERの技術的特徴
REX-BUTLERは、ExtraBoldが大型ペレット式3Dプリンター「EXF-12」の開発で培った自社製プリントヘッドを搭載し、市販の協働ロボット(Universal Robots社UR16eなど)と組み合わせて使用する構成となっている。主な特徴は以下の通りだ。
造形サイズは50cmから1m程度の中小物をカバーし、ノズル径は2mmから8mmまで対応する。ビルドプレートは80度まで加温可能なヒートベッドを採用しており、造形時の反りを抑制する。協働ロボットによるマルチアクシス制御により、3軸以上の造形にも対応可能で、専用ソフトウェアも自社開発している。
材料面では、熱可塑性樹脂のペレット材を幅広く使用できる点がFGF方式の大きな強みだ。リサイクル樹脂やバイオマス材にも対応しており、フィラメント方式と比較して材料コストを大幅に抑えられる。射出成形用の汎用ペレットがそのまま使えるため、材料調達の自由度も高い。
設置面積は約2.5m x 2.5mと、大型3Dプリンターとしては非常にコンパクトだ。高さも2.2mに収まっており、工場だけでなくメイカースペースやイベント会場など、さまざまな環境への導入が想定されている。
従来の大型3Dプリンターとの違い
大型3Dプリンターの駆動方式としては、ガントリー方式やロボットアームにヘッドを持たせる方式が一般的だ。ガントリー方式は造形範囲を広げようとすると装置全体が大型化し、設置に広いスペースが必要になる。ロボットアームにヘッドを搭載する方式では、重量のあるプリントヘッドをアーム先端に取り付けるため、アームの可搬重量や剛性が造形精度のボトルネックになりやすい。
協働ロボット連携3Dプリンターであるバトラー方式はこの構図を逆転させている。重量のあるヘッドユニットは固定して安定性を確保し、比較的軽量なワーク(造形物+ビルドプレート)を協働ロボットが動かす。協働ロボットは人との協働を前提に設計されているため安全性が高く、プログラミングも比較的容易だ。これにより、設置性、安全性、運用コストの面で従来方式にはなかったメリットが生まれている。
すでに始まっている導入実績と今後の展開
REX-BUTLERは、2023年11月にタイ・バンコクの「METALEX展」で初公開されて以降、段階的に展開が進んでいる。今治市のメイカースペース「X-tech Lab Imabari」への導入実績があるほか、企業や商業施設でのイベントにも活用されてきた。
ExtraBoldは2026年度中に、樹脂部品の加工業者に向けた導入検証を開始する予定だと発表している。想定される用途は多岐にわたり、金属部品から樹脂部品への代替、再生樹脂を活用した治具や型レスの小ロット生産、自動車外装パーツなどの大型樹脂部品の製造、さらにはサステナブル材料を活用した家具や什器といった空間デザイン領域まで視野に入れている。
また、REX-BUTLERはMMA(Multi-Mode Additive Manufacturing)システムとしての拡張も構想されており、切削加工による仕上げ工程との組み合わせや、簡易型を使った射出成形ユニットの追加など、3Dプリンティングにとどまらない複合加工プラットフォームへの進化が計画されている。
編集後記:「構造そのもの」を押さえた意味
今回の特許取得で注目すべきは、個別技術ではなく「基本構造」で特許を取得した点だろう。協働ロボットを3Dプリンターに活用する動きは世界的に広がりつつあるが、「ヘッドを固定してワーク側を動かす」というバトラー方式の基本構造が知財として保護されたことは、今後の競合環境にも影響を与える可能性がある。
ExtraBoldの原代表は今回の特許取得について、「REX-BUTLERを製造業の課題解決に広げていくための大きな一歩」とコメントしている。大型造形だけでなく、切削加工との組み合わせによる樹脂加工分野全体への貢献を目指すという方針は、3Dプリンターを「造形機」から「製造ツール」へと位置づけ直す動きとして注目に値する。
協働ロボットの普及とペレット式3Dプリンティング技術の成熟が交差する中で、REX-BUTLERがどのようなポジションを確立していくのか。2026年度に予定されている加工業者向け導入検証の結果も含め、引き続き動向を追っていきたい。
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2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。



