イタリアのミラノ・ベルガモ空港で、3Dプリントによる建築物が導入された。航空分野においては国内初の事例となる。設置されたのは、税関エリアに位置する空港スタッフ用の小規模施設であり、施工期間の短さと設計自由度の高さが注目されている。
7日で造形、19日で完成 空港内に導入された3Dプリント建築
今回建設された「Ol Casél」は、スタッフ用の休憩・サービス施設で、トイレ機能を備えている。構造体の3Dプリント自体はわずか7日で完了し、プロジェクト全体でも19日間という短期間で完成した。
建物の製造には、イタリアの3DプリンターメーカーWASPのコンクリート積層技術が採用されている。使用機種は「Crane WASP」で、同国で初めて商用化された大型建設用3Dプリンターである。
壁面はすべて3Dプリントによって形成され、窓や屋根、ドアといった要素は従来工法で後付けされた。設計段階から開口部を組み込むことで、追加加工の手間を抑える工夫も行われている。
石灰系材料を採用 建設分野の環境負荷低減に挑戦
本施設では、石灰をベースとした材料が使用されており、層状に積み上げることで構造体を形成している。建設業はCO2排出量の多い産業のひとつとされており、今回の取り組みはその負荷低減を目的としたものだ。
材料選定と積層プロセスを最適化することで、従来のコンクリート施工と比較して環境負荷を抑える設計となっている。
曲面デザインを短期間で実現 従来工法との差別化
「Ol Casél」の外観は、曲面を多用した特徴的なデザインとなっている。こうした形状は従来工法では施工が難しく、時間とコストがかかるケースが多い。
一方で3Dプリントでは、デジタル設計データをそのまま造形に反映できるため、複雑形状でも短期間での施工が可能となる。今回の事例は、設計自由度と施工効率の両立を示すものとなった。
空港基準をクリア 今後は利用者向け施設への展開も視野
完成した施設は、空港が求める安全性・安定性・構造強度の基準を満たしており、公的な検証も実施されている。実運用を前提としたインフラとして導入された点も重要だ。
今後は、スタッフ向け施設にとどまらず、旅客向け設備への応用も期待される。空港という高い信頼性が求められる環境での実績は、建設用3Dプリントの普及を後押しする可能性がある。
編集部コメント
空港というインフラ領域で3Dプリント建築が実装された点は、単なる実証段階を超えた動きといえる。特に注目すべきは「施工期間」と「設計自由度」の両立であり、日本の建設業における人手不足・工期短縮の文脈とも相性が良い。
一方で、今回のように構造体のみを3Dプリントし、他要素は従来工法と組み合わせるハイブリッド型が現実解となっている点も重要である。完全自動化ではなく、既存工法との統合こそが普及の鍵になるだろう。
今後、日本国内でも公共施設や仮設インフラ領域から同様の導入が進む可能性がある。
用語解説
| ■ 建設用3Dプリンター コンクリートやモルタルなどの材料を層状に積み上げることで、建築物の構造体を自動で造形する装置。型枠を必要とせず、設計データを直接反映できるため、施工の省人化や工期短縮、複雑形状の実現が可能となる。 |
| ■ Crane WASP イタリアのWASP社が開発した大型建設用3Dプリンター。クレーンのような構造を持ち、広範囲にわたる建築物の造形が可能。現地施工型の3Dプリント建築に対応した代表的な装置のひとつである。 |
| ■ 石灰系材料 石灰を主成分とした建設材料で、セメントと比較して製造時のCO2排出量を抑えられる特徴を持つ。3Dプリント建築では、流動性や硬化特性を調整しやすい材料として注目されている。 |
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