3Dコンクリートプリンティングで建設業に変革──株式会社築・五十嵐理香氏が総務大臣賞を受賞

2026年3月20日

令和7年度「起業家万博」において、株式会社築(代表取締役:五十嵐理香氏)が総務大臣賞を受賞した。同社は3Dコンクリートプリンティング技術を活用した次世代建設プラットフォームを展開しており、深刻な人手不足・高齢化・技能継承難といった建設業界の構造課題に対して、施工プロセスそのものを再設計するアプローチで注目を集めている。(写真:総務大臣賞を受賞する株式会社築の五十嵐理香氏。写真提供:築)

日本初、2階建て住宅の3Dプリント施工を実現

株式会社築が宮城県に竣工した日本初の二階建て3Dプリント住宅(写真提供:築)

株式会社築は、フランスCOBOD社のコンクリート3Dプリンターを活用して国内初となる2階建て住宅の3Dプリント施工を実現した実績を持つ。従来工法と比べて必要人員を大幅に削減し、施工期間も短縮できる3Dプリント住宅は、「人手不足で建てられない」という業界の制約を根本から覆す可能性を示している。

今回の起業家万博のプレゼンテーションでは、こうした住宅用途での3Dプリンター活用の推進を築自身が推進するだけではなく、3Dプリント住宅を建てることができる技術者の育成がクローズアップされていた。その点では土木分野で活動を広げているPolyuseによる装置、材料提供、設計協力を含めた包括的な支援や既存の住宅事業者に装置と設計データを提供する取り組みを広げようとするセレンディクスと立ち位置が若干異なり、建設用3Dプリンターを購入した企業が自社設計で住宅を建てることができるためのスキル移転を目指している印象を受けた。

ハードが変われば、仕組みが変わる、業界が変わる

総務大臣賞を受賞sっひた五十嵐氏。写真提供:築

五十嵐氏は「3Dプリンターというハードが入ることで、仕組みが変わる。ハードが変われば人が変わり、システムが変わる」と語る。実際、同技術の導入により建設現場の役割分担やスキル要件は大きく変化し、従来の職人依存型から、オペレーション最適化型の体制へ移行していく可能性がある。
また五十嵐氏は現在、3Dプリンティング建設を軸とした産業人材の育成機関設立にも取り組んでいる。「技術革新はそれを扱う人材がいなければ社会実装されない」という考えのもと、技術と教育をセットで捉えた長期的な産業再設計を見据えている。

「建築用3Dプリンターの使い手が増えなければ普及しない」

デジタル化の遅れが指摘されてきた建設領域だが、DXへの意欲は各社高まりを見せている。一方で2Dの平面図面から3Dモデルを活用した設計・施工体制へのシフトが現場まで落とし込みにくい実情もある。それで売り上げが上がり、利益が上がるのか。そもそも担い手が不足し完工できないから受注も絞らなければならない企業も出始めているなど、業界の先行きが不透明なためだ。

そこに実際に省人化を推進できる新しい工法として3Dプリンターによるコンクリート住宅が日本で実際に二階建てで建築できたという実績をもつ同社が、実証済みの技術と具体的なビジネスモデルを持って、ノウハウを世に広める事業を始める意欲を見せていることは、業界内外から高い関心を集めているといえるだろう。

これは建設用3Dプリンターのオペレーターが増える必要があるという点だけではなく、日本の建築基準法に適合した実施設計や構造計算をやり抜ける設計者が必要であるとともに、その設計に基づいて水道、電気、ガスといった設備工事を担当できる設備業者との連携ができる施工管理者を育成する必要がある。

具体的な計画などはこれからの発表が待たれるところだが、今回の受賞は、3Dプリンティング技術が住宅建設分野で本格的な社会実装フェーズに入る間口を大きく広げるための呼び水になるかもしれない。

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