トウモロコシ廃棄物を建材へ メキシコ発「CORNCRETL」、3Dプリント建設に地域循環モデルを提示

2026年3月4日
出典:Dinorah Schulte、MANUFACTURA

建設用3Dプリンターの価値はこれまで「施工スピード」や「省人化」に語られることが多かった。しかし現在、もう一つの軸が浮上している。炭素負荷の高いポルトランドセメントに依存せず、地域に存在する副産物から建材を生み出す取り組みである。メキシコのコレクティブ「MANUFACTURA」は、農業副産物を活用した3Dプリント用複合材料「CORNCRETL(コーンクリート)」を開発した。トウモロコシ廃棄物と石灰系バインダーを組み合わせた本材料は、構造用途を視野に入れた実証が進められている。

プレヒスパニック建築の知恵とロボット施工の融合

Manufacturaは2022年、Dinorah Schulte氏によって設立された。古代メソアメリカの建築知とロボティクスを融合させることを理念に掲げている。CORNCRETLの中核となるのは、「ネハヨーテ(nejayote)」と呼ばれるカルシウムを多く含む排水である。これは、トウモロコシをアルカリ処理する伝統的工程「ニシュタマリゼーション」で発生する副産物だ。通常は廃棄されるこの液体を、乾燥させ粉砕したトウモロコシの皮や茎と組み合わせ、天然水硬性石灰(NHL 3.5)とブレンドすることで、ロボット押出に適したバインダー系材料を構築した。トウモロコシが主食であるメキシコでは原料が豊富に存在し、文化的背景と資源循環が直結している点が特徴である。

ロボット積層による施工プロセス

造形にはKUKA製ロボットアームと、WASP Concrete HD Continuous Feeding Systemが用いられた。材料は粒径管理後に混合され、層状に押出される。従来の型枠が不要となり、建設廃棄物を最大90%削減できるとしている。ロボットの自由度を活かし、曲面やテラゾー調の幾何学的テクスチャーも形成可能である。また、石灰ベース材料は常温で数日以内に硬化するため、一般的なコンクリートのような高エネルギー養生を必要としない。

CO₂最大70%削減と自己修復性

Manufacturaによれば、CORNCRETLはポルトランドセメントと比較して最大70%のCO₂排出削減が可能だという。石灰系化学組成と低温硬化特性が背景にある。さらに、石灰特有の自己修復性も確認されている。微細なひび割れに水分が浸入すると未反応の石灰粒子が再結晶化し、隙間を部分的に閉塞する。

実証フェーズへ 高さ80cmの壁モジュールを造形

構造性能の検証として、高さ80cmのモジュール式壁プロトタイプを出力。イタリアの屋外実験施設「Shamballa」にて実大試験を実施している。標準化されたセメント配合ではなく、地域で発生する廃棄物をその場で建材化する分散型モデルを提案する点が、本プロジェクトの核心である。建材が「建設地と同じ場所から生まれる」仕組みを、アディティブ・マニュファクチャリングで実現しようとしている。

編集部コメント

建設用3Dプリンター市場では、大型ガントリーや高吐出速度などの技術競争が注目されがちである。しかし今後は「何を積層するか」がより重要になる可能性がある。日本でも稲わら、籾殻、木質バイオマスなど地域由来資源は豊富である。材料技術とロボット施工が結びつけば、地域循環型の建築生産モデルが現実味を帯びるだろう。セメント代替の選択肢は、建設業の脱炭素戦略において無視できないテーマである。

用語解説

■ ニシュタマリゼーション
トウモロコシをアルカリ性水溶液で煮沸・浸漬するメソアメリカ由来の伝統的加工法。栄養価や加工性を高める工程であり、カルシウムを含む排水「ネハヨーテ」が副産物として発生する。
■ 天然水硬性石灰(NHL 3.5)
水と反応して硬化する石灰系バインダー。ポルトランドセメントより低温で製造できるため、製造時のCO₂排出を抑制できる特性を持つ。
■ 建設用3Dプリンティング
ロボットアームやガントリー装置を用いて建材を層状に積層する施工技術。型枠削減や自由曲面造形が可能で、建設分野の省人化・材料最適化に寄与する。

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