ロケットを3Dプリントしてロボットが組み立てる時代に!
Point
- 米カリフォルニア州のスタートアップ企業が、NASAと9年間のリース契約でロケットを開発中
- 3Dプリント技術とロボット技術により、10万点の部品を1000個の部品に、短納期を実現
- 将来は火星にロケット開発基地をつくることも視野に入れている
米カリフォルニア州の航空宇宙関連スタートアップ、Relativity Spaceは、3Dプリントによる衛星打ち上げロケット、「Terran 1」を現在開発している。 同社は、NASAのステニス・スペース・センターと9年間のリース契約を結んだと発表した。 また同社の2016年7月から稼働している研究開発施設と工場を補完するものとして、ミシシッピ州にも22万平方フィート(約2万平方メートル)の新しい施設を建設中である。
3Dプリント技術を活かして世界初のロケット自動製造施設を目指す!
同社の副社長であるブランドン・ピアス氏は、ロケットの設計と組み立てのプロセスを3Dプリント技術によって可能な限り簡素化することをミッションとしているという。実際、同社の最初のロケットであるTerran 1と呼ばれる衛星打ち上げ機は、従来のロケットよりも部品数がはるかに少ない。
従来の生産技術からすれば、例えばロケットエンジンを構成する部品は膨大な数にのぼり、製造には10~14ヶ月を要する。これに対してピアス氏によると、「Terran 1」のエンジンは、3つの主要部品で構成されており、主要部品のうちのひとつ、チャンバー(混合気の膨張室)を製造するのに要する期間はわずか2~3週間だという。
10万点必要だった部品も1000点ぐらいに集約され、軽量化も実現しているそうだ。ロケットの重量が減れば、燃料も減らせてより多くの積荷を載せることが可能になる。
動画:These Engineers Want to 3D Print an Entire Rocket in 60 Days
組み立ては、ロボットアームによる自動生産
3Dプリントされた部品はロボットアームによって組み立てられ、組み立てプロセスは自動化されている。また、部品の設計について変更が生じても、データ上のプログラムを書き換えて調整することができるため、大がかりな設備の変更は必要ない。
こうした製造プロセスの自動化と高速化により、エンジニアは設計に集中できて開発サイクルが早く回せるのだという。
将来的には火星に製造施設を作る
Relativityはロケット製造施設ごと火星に移植して、現地でロケットを製造するとの長期的ビジョンを持っている。これは、ロケット製造に要する原材料がシンプルだからこそ可能なことだ。2020年後半には第一回目となる「Terran 1」の打ち上げテストをおこなう予定で、すでにフロリダ州ケープカナベラル空軍基地の打ち上げ施設を確保しているという。
もちろん懐疑論者がいないわけではない。3Dプリントされ、ロボットで製造されたロケットが安全に飛べるのだろうかと?
しかし16か月前に従業員がわずか14人だった同社は、85人の従業員に加えて、ミシシッピ州の新しい施設でさらに200人の仕事が予定されているという。
ピアス氏は言う。
「Terran 1だけでなく、Terran 1を製造する方法論の裏付けとなっているコンセプトを証明するために取り組んでいる」
テスト飛行に成功し、同社の製造した3Dプリントロケットの実用性が証明されれば、ロケット開発は飛躍的に進歩するだろう。
参照元:Startup Aims to 3D Print Cheaper, Lighter Rockets/IEEE Spectrum
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