JAMPT製3Dプリンター部品、SLIM搭載「衝撃吸収材」が大阪・関西万博に登場

2025年7月3日

宮城県多賀城市に本社を構える日本積層造形株式会社(宮城県多賀城市、以下、JAMPT)が、金属3Dプリンターを用いて製作したアルミニウム製の「衝撃吸収材」が、日本国際博覧会(大阪・関西万博)において展示されている。本部品は、小型月着陸実証機「SLIM」に実際に搭載されたものであり、JAMPTの先端的な製造技術が宇宙探査という極限環境においても十分に機能することを示している。(上部画像はJAMPTのプレスリリースより。出典:JAMPT)

月面着陸を支えた日本製3D造形部品、万博で184日間の常設展示

この衝撃吸収材は、日本政府が主導する「日本館」の中の「ファクトリーエリア」に常設展示されており、万博の開催期間である2025年4月13日から10月13日までの全184日間を通じて来場者に公開される。展示を通じて、JAMPTが金属積層造形分野において蓄積してきた技術力や、日本企業が持つ宇宙産業への応用可能性が紹介されている。

「SLIM」に関しては以前シェアラボニュースで紹介している。下記の記事も併せてご覧いただきたい。

JAXAのSLIM、月面55mピンポイント着陸成功

小型月着陸実証機「SLIM」は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)によって開発され、2025年1月20日、日本初となる月面への軟着陸を達成した。また、着陸目標地点からわずか55メートルという近距離に降り立つ「ピンポイント着陸」も成功させ、世界的にも高い精度の着陸技術を実証した。

このピンポイント着陸技術の確立と、探査機本体の軽量化を両立するうえで不可欠な要素となったのが、JAMPTが金属3Dプリンターによって製造したラティス構造の衝撃吸収材である。この衝撃吸収材は、SLIMの主脚および補助脚、計5本に取り付けられ、着陸時の衝撃を緩和する重要な役割を担った。

“壊れることで守る”日本の技術思想 SLIMの衝撃吸収材が万博で紹介

当該部品は半球状に設計されており、軽量かつ高い耐久性を保持しつつも、着陸の瞬間には意図的に潰れることで、探査機本体への衝撃を分散・吸収する構造となっている。これにより、SLIMの高精度な着陸の実現に大きく貢献した。

このような先端技術の成果は、2025年の大阪・関西万博における日本政府館「ファクトリーエリア」にて紹介されている。同エリアでは、日本の伝統的な「ものづくり」思想として、部分的な破壊を受け入れる柔構造の考え方や、資源・素材の循環的利用がどのように技術へと昇華されてきたかを紹介する展示が行われている。

JAMPTの宇宙部品と流れ橋が語る日本の循環型ものづくり

展示では、JAMPT製の衝撃吸収材(使用前と試験後の潰れた状態の比較)が、「意図的に壊れることで全体の被害を軽減する」という考え方の現代的な実装例として紹介されている。また、この思想の歴史的先例として、京都府の木津川に架かる「流れ橋」(上津屋橋)が併せて紹介されている。この橋は、増水時に橋桁が流されることで構造全体を守る仕組みを有し、日本の“柔らかくしなやかな設計思想”を体現している。

本展示を通じて、JAMPTの3Dプリンティング技術が宇宙開発において果たした役割と、日本の循環型ものづくりの精神が、未来志向の技術革新とどのように結びついているのかが体感できる構成となっている。

JAMPTの衝撃吸収材に見る未来技術 柔構造と3D造形が拓く持続可能な社会

JAMPTが金属3Dプリンターで造形した衝撃吸収材は、JAXAの小型月着陸実証機SLIMの月面着陸成功を支えた重要部品である。大阪・関西万博の日本館では、同部品が“意図的に壊れることで守る”という柔構造思想の現代的応用例として展示され、伝統的な日本のものづくり精神と最先端技術の融合が紹介されている。今後も3D積層造形は、宇宙分野のみならず持続可能な社会づくりに向けた中核技術としての発展が期待される。

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今回のニュースに関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中から3つピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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