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NASAが月面前哨基地LINAのデザインを公開

NASAのLINA

NASAは、3Dプリントを用いて建設される月面前哨基地のデザインを発表した。開発には、宇宙技術設計機関であるAI SpaceFactoryも携わる。現在、地球上での建設テストを実施中。(写真はLINA。出典: AI SpaceFactory )

宇宙開発における3Dプリンターの役割

近年、宇宙開発の分野で3Dプリンターに注目が集まっている。

積載容量の制約により、ロケットに無駄なものを積み込むことはできない。しかし、不測の事態への備えは必要だ。例えば、宇宙飛行士の怪我、ステーションの故障などが起きた際には応急的な処置が求められる。3Dプリンターはスペースを取らないペレット状材料から医療機器や補修用部品を作り出し、アクシデントに対応可能だ。

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他にも、軌道上(つまり、低重力の真空)で3Dプリンターを用い、通信衛星を建設する計画も進められている。軌道上で建設を行えば、サイズに関して、ロケット積載容量の制限を受けることはない。とにかく積載制限が厳しい宇宙開発において、3Dプリンターは大きな役割を担う。

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3Dプリンターは地上での精密部品開発にも利用が進められている。これは単純に、3Dプリンターの持つ精密造形能力を利用したものだ。もちろん、3Dプリンターを用いて作る精密部品は高価だが、宇宙開発に必要な部品スペックを考慮すれば、3Dプリンターの活用は悪くない選択肢になりつつある。

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月面前哨基地「LINA」の開発背景

宇宙開発における3Dプリンター利用が加速しつつある背景にあるのは、NASAのアルテミス計画だ。NASAは「2024年までに最初の女性を月に送る」ことを目標とし準備を進めている。その後の計画としては、月軌道上の宇宙ステーション建設や、火星探査も進行中だ。

将来的に、他の惑星への中継地点として月面を利用することが構想されている。そのためには月面での長期滞在や月面からのロケット打ち上げを補助する施設が必要となる。

今回NASAは、月面前哨基地LINAのデザインを発表した。開発にはAI SpaceFactoryも携わっている。

月の南極付近のクレーターに建設予定のLINAは、自律駆動する3Dプリントロボットによって建設される予定だ。LINAは最小限の材料で高い強度を担保するため、ロマネスク様の特徴的なアーチ構造を持つ。

特殊なポリマーと月面の砂礫を混ぜて作る複合材料が用いられ、微小隕石や宇宙線、極端な寒暖差から宇宙飛行士たちを守るよう設計された。将来的な中継地点として機能するよう、長期的な耐久性も兼ね備えている。

月面前哨基地LINAの完成予想図
月面前哨基地LINAの完成予想図(出典:AI SpaceFactory)

地球上での建設テスト

ポリマー材料は、AI SpaceFactoryによる月面砂礫の詳細な成分分析を経て開発された。月面砂礫の構成成分によってポリマーに調整が必要となるため、月面での3Dプリントを成功させるためには月面環境の詳細な調査が欠かせない。

月面は強烈な寒暖の変化にさらされ、地上とは重力が異なる。建物の基礎を作ることはできないので、地面の柔らかさも建設に影響を与える要素となるだろう。

なにより、月面は真空だ。プリント材料中の水分は急速に排出されるため、空気中で作る場合とは材料の乾燥スピードが全く違う。こうした地球との違いは思わぬ形で建設の妨げとなるかもしれない。

現在、NASAとAI SpaceFactoryでは、月面環境を模した環境下での建設テストが進められている。真空チャンバー内での最初の建設テストは2022年後半の予定だ。

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