ATHOSが世界初の3D プリントされたクライミングシューズを販売開始
スペインのバルセロナに本社を構えるアパレルのスタートアップ企業ATHOS社が、世界初となる3Dプリントされたクライミングシューズの販売を開始した。クライミングシューズは絶壁や岩肌を上るスポーツ、クライミングで利用するための専用シューズで、登坂中に脱げたり力が逃げないように、通常の靴に比べると2,3サイズ小さなサイズを選ぶことがよいとされる。つまり大変履き心地がきつい。
同社のクライミングシューズは、フランスの大手オンライン3DプリントサービスのSculpteo社経由で、3DプリンターメーカーのHP社のMulti Jet Fusion技術を用いて開発された。(出典:ATHOS社の3Dプリントクライミングシューズ 出典:ATHOS社)
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ATHOS社の3Dプリント製クライミングシューズはTPUが素材
今回販売が開始された3Dプリント製クライミングシューズは、TPU(熱可塑性ポリウレタン)を3Dプリント素材にして造形されている。TPUは医療器具にも使われる樹脂材料でで、軽くて柔らかい素材でありながら耐久性が高くニオイもない素材だ。3Dプリント業界でも、広く材料として利用されている。
3Dプリントの利点を活かしてクライミングシューズの課題を解決
通常、クライミングシューズを購入する際には、登坂中に靴がずれたり脱げないためと、シューズによる十分なサポートを得るために普段使いの靴にくらべて2、3サイズほど小さいサイズに感じられるきつい靴を選ぶことになる。そのため、クライミングを始めたばかりの利用者は、シューズを履くのに大変苦労するし、履き心地に不快感を抱くことも多い。
しかし、ユーザーの足をスキャンした画像をもとに、1足1足カスタマイズしたシューズを3Dプリントすることで、そのようなユーザーの負荷は軽減できる。さらに、ユーザー専用のカスタマイズシューズには、使い込むほどに足になじみ、クライミング時の快適性が格段に向上するというメリットも期待できるという。
注文のたびに3Dプリンターで生産。オンデマンド製造が持続可能性にも貢献
現在、フットウェア市場のビジネスモデルは、約20パーセントが過剰生産となっている。5足のうち1足は売れ残る計算だ。しかし、ATHOS社のクライミングシューズはオンデマンドでの受注生産となるため、製品の無駄な製造が発生しない。工場から倉庫、店舗への無駄な輸送も削減できるため、ATHOS社は、フットウェア部門の二酸化炭素排出量をほぼ半分に減らすことができると推定している。
フットウェアは3D プリント製の消費財市場において、特に将来性が期待される分野だ。人の足の形やサイズは右の足と左の足でも異なるし、年齢や靴を履く利用シーンによっても求められる性能が異なってくる。室内で筋トレやヨガをする際のトレーニングシューズと軽いウォーキングのためのシューズでは、靴底に使われるゴムの硬さや形状が大きく異なってくる。同じ外履きの靴でも、シニア向けのウォーキングシューズとランニング用シューズでは、ソールの硬さや大きさが変わってくる。
一人一様の足の形状と、目的に応じて高度に分化発展してきたフットウェアは、複雑な形状のものを容易に造形できる3Dプリンターを活用したAM製造に親和性が高いといえるだろう。カスタマイズ性に優れた商品をオンデマンドで購入できるサービスは、フットウェアならではのアプローチだと言える。
フットウェア業界においては、ファッションとしてのシューズだけでなく、アスリート向けのものに対しても3Dプリンターが積極的に導入されている。今後もそのような事例はますます増えていくだろう。
これまでShareLabNEWSが取り上げてきた3Dプリンターを活用したシューズ製作の事例については、以下のリンクにまとめてあるので、そちらもぜひご覧いただきたい。
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