A-POC ABLE ISSEY MIYAKEは、「TYPE-X Inkjet 4D Print project」の製品第一弾を2024年12月1日から販売開始する。このプロジェクトでは、東京大学の研究グループが開発した革新的な変形技術を取り入れている。この技術は、特殊なパターンをインクジェットプリンターで印刷した熱収縮シートを加熱することで、あらかじめ設計された立体構造へと自動的に変形させることを可能にしたものである。
目次
湯に浸すだけで“立体”が立ち上がる、次世代プリント技術
熱収縮性のシートに対して設計通りの変形パターンを印刷し、約70度の湯に入れるだけで三次元形状へと自動的に変化する。折り目や曲げ角度などを緻密に設計することで、手作業による折り紙とは異なる“自律的変形”を実現している。この変形プロセスは視覚的にも鮮烈であり、ものづくりにおける「プリント→完成品」までのプロセスを根本から変える可能性を秘めている。
パリ展示で反響を呼んだ“変形するアクセサリー”
2024年初頭にパリで開催されたインスタレーションでは、平面のシートが立体へと変化し、アクセサリーへと昇華する様子が披露された。従来の製造やファッションの枠を超えた表現として、来場者の注目を集めた。今回の製品第一弾は、シートから成形される立体ピアスである。購入者は、自らの手で熱を加えることで、平面が立体へと変形する様子を体験できる。プロダクトに“参加する”という体験価値が、新しいユーザーエクスペリエンスをもたらす。
富士フイルムの技術が生んだ“光る質感”
ピアスには富士フイルムが独自に開発した「高輝度メタリックインクジェット技術」が用いられており、金属のような質感をインクジェット印刷で表現している。写真フィルム技術を応用した粒子配向制御によって、従来にない輝度と表面感を実現。カラー展開はブラックに加え、シルバーもラインナップされる。

ファッション×工学×プリンティング!産学連携の集大成
「TYPE-X Inkjet 4D Print project」は、東京大学と複数の研究機関、企業が共同で進めてきた産学連携プロジェクトである。折り紙の知恵と工学的な折り構造設計、プリンティング技術、そしてファッションデザインが融合したこのプロジェクトは、まさに“次世代のものづくり”を象徴する取り組みだ。
販売は全国のA-POC ABLE ISSEY MIYAKEの一部店舗で実施されるが、混雑緩和のため予約制を導入する店舗もある。販売や展示の詳細、最新ビジュアルはInstagramの公式アカウントを通じて随時公開される予定である。
産学連携で誕生した“4D変形技術”、12月1日より製品化へ
A-POC ABLE ISSEY MIYAKEは、「TYPE-X Inkjet 4D Print project」の製品第一弾を2024年12月1日から販売開始する。このプロジェクトでは、東京大学大学院工学系研究科の鳴海紘也特任講師(現・慶應義塾大学准教授)、川原圭博教授、総合文化研究科の舘知宏教授、情報理工学系研究科の五十嵐健夫教授、宮城大学の佐藤宏樹准教授に加え、Nature Architects株式会社の須藤海氏、エレファンテック株式会社の杉本雅明氏らによる研究グループが開発した革新的な変形技術を取り入れている。約5年前に始動した本プロジェクトには、後に富士フイルムも参画し、製品化に向けた開発が加速した。この技術は、特殊なパターンをインクジェットプリンターで印刷した熱収縮シートを加熱することで、あらかじめ設計された立体構造へと自動的に変形させることを可能にしたものである。
シェアラボ編集部コメント
折り紙×印刷×熱変形という、日本ならではの発想と工学技術が融合した本プロジェクトは、プリント技術の新たな応用領域を切り拓く試みといえる。ファッション分野での実用化が先行する一方、今後はプロダクトデザインや教育分野など、より広い展開も期待される。
用語解説
| ■ Inkjet 4D Print 特殊なパターンをインクジェットプリンターで印刷した熱収縮シートを加熱することで、立体形状に自律変形する技術。東京大学の研究グループが開発。 |
| ■ 4Dプリント 外部からの刺激(熱・光・水など)によって、時間経過とともに形状が変化する構造をつくる技術。3Dプリントに“変化”の概念を加えたもの。 |
| ■ 熱収縮シート 熱を加えると一定方向に収縮する性質を持つプラスチックシート。パターンの配置によって立体構造に変形させることができる。 |
| ■ 高輝度メタリックインクジェット技術 富士フイルムが開発した、金属光沢を持つ高輝度印刷を可能にする技術。粒子配向制御により、シルバーやブラックなどの質感を再現。 |
| ■ A-POC ABLE ISSEY MIYAKE デザイナー三宅一生によるブランドの技術実験的ライン。先端技術とファッションの融合をコンセプトに、衣服や素材の可能性を探る。 |
| ■ 産学連携プロジェクト 大学などの研究機関と企業が共同で行う研究開発プロジェクト。基礎研究と実用化をつなぐ重要な役割を担う。 |
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