パーソルが3Dプリンター造形を活用した「風洞実験ソリューションサービス」を開始
人材派遣や転職ビジネスを手掛けるパーソルのグループ企業で、自動車、航空宇宙、ロボット、デジタル家電などの製造業領域で、技術コンサルティングや設計・開発の請負・人材派遣を行うパーソルR&D株式会社(以下パーソルR&D社)が、産業機器のレンタルを行うオリックス・レンテック株式会社(以下、オリックス・レンテックス社)と協業し、3Dプリンター造形での風洞実験ソリューションサービスの提供を開始した。
人工的に風を起こすトンネル(風洞)内で物体への空気の流れの影響を把握する風洞実験に3Dプリント造形を組み合わせることで、自動車業界に取り巻く燃費性能改善への課題を解決するサポートをする。(画像は風洞実験のイメージ 出典:パーソルR&D社)
自動車業界を取り巻く大きな環境変化
現在、自動車からのCO2排出量は日本国内全体の排出量の約15%だ。地球温暖化対策の一つとして、近年、自動車の燃費性能の改善に注目が集まり「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」に基づき製造事業者などが達成すべき新たな燃費基準も設定された。
省エネ法において、乗用車では2016年実績と比較して32.4%の燃費改善が2030年度までに、トラックは約13.4%の燃費改善、バスは約14.3%の燃費改善が2015年度燃費基準と比較して、2025年度までの達成が求められている。自動車業界では、燃費改善のための厳しい要求が求められている状況だ。
燃費向上につなげる風洞実験ソリューションサービス
自動車の燃費を向上させるためには「車体への空気抵抗をいかに少なくするか」がカギとなる。今回パーソルR&Dとオリックス・レンテックス社が協業で始めた風洞実験ソリューションサービスは、車体の空気抵抗を知るための高精度なテストを簡単に実施できるのがウリだ。
人工的に風を起こし、物体への空気の流れの影響を把握する風洞実験では、模型の精度が非常に重要になる。従来、大型車の風洞実験では大型の模型をFRP材料を、繊維強化プラスチックと樹脂を刷毛などで模型の型に含浸させ、脱泡後に硬化させるFRPハンドレイアップ造形法で制作していたが、寸法精度に課題があり、高精度でシミュレーションが難しかった。
パーソルR&D社がオリックス・レンテックス社と協業が行う「風洞実験ソリューションサービス」では、3Dプリンターを使用して製作した模型を仕上げ加工まで行うことで、FRPハンドレイアップ造形で製作した模型と比較し、1/10程度まで寸法誤差を抑えることができる。高精度な模型を簡単に製作することが可能になることで、シミュレーションの精度ができることが期待される。
風洞実験サービスの概要
今回の風洞実験サービスでは、3Dプリントを用いた模型製作以外にも3Dプリントで造形する際に必須となる「3D CADデータ作成サービス」や、車両全体とエンジンルーム内までの空気の流れから、流速、流量、圧力分布、温度分布までを解析する空力解析サービスなども行っている。開発時に用意した車体の3Dモデルをもとに実験用模型を造形することで、迅速なシミュレーションが可能になる。
模型の造形だけを行う場合もあるが、風洞実験設備を持っていない場合は実験場の手配や実験まで対応するということで、トラック1台から単一部品まで幅広い風洞実験ニーズの掘り起こしを狙っているようだ。
製造業の3Dプリンター活用で具体的なアプリケーションが次々に顕在化
3Dプリンターによる風洞実験用模型の製作という具体的なアプリケーションで発表された今回の協業は、ニーズがあるからこその取り組みだと言える。以前紹介した「DMMの住宅模型サービス」も同様だが、3Dプリンターの装置としての普及が進んだことで3Dプリンターの利用方法が個別具体化してきた。
今後さらに製造業の「不便」や「やりにくい」を解決した取り組みが発表されることが考えられる。3Dプリンターに関連する各社が単体ではなく連携して取り組んでいく姿をみるとビジネスとしての生態系が着実に育っていることもうかがえる。
産業用機器のリース・レンタルを行うオリックス・レンテック社は、3Dプリンターの取り扱いも行っており、3Dプリンターのレンタルやリース以外にも受託造形サービスも手掛けている。同社の取り組みに関しては、過去にShareLabNEWSでも取り上げているので、ぜひご覧いただきたい。
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