3Dプリンターを活用した世界初の鉄道駅舎建設

西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本、大阪府大阪市)、株式会社JR西日本イノベーションズ(大阪府大阪市北区)、およびセレンディクス株式会社(兵庫県西宮市)の3社は、老朽化した木造駅舎の建替えに際し、建設用3Dプリンターを活用した新たな駅舎建設に取り組んできた。このたび、第1弾として具体的な建設が決定し、世界初の3Dプリンティング技術を用いた駅舎建設が実現する。(上部画像はJR西日本のプレスリリースより、初島駅の完成イメージ。出典:JR西日本)
目次
3Dプリンターで造形する駅舎の構造と施工プロセス
計画されている駅舎の規模は10平方メートル未満であり、建物の基礎部分を含めた外形は最先端の3Dプリンター技術を用いて出力される。出力後のパーツには鉄筋を組み込み、コンクリートを充填したうえで、現地でクレーンによる組立・接合を行い、駅舎として完成させる。
短時間施工を実現する3Dプリンター建築のメリット
施工は終電後から始発までの約6時間で完了する計画であり、これにより現場作業の大幅な効率化が可能となる。事前に工場で3Dプリンターを用いてパーツを製造し、現地では短時間で組み立てる方式を採用することで、作業員の負担軽減や深夜工事による騒音・交通規制の影響も最小限に抑えられる。従来の鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して工期の短縮が期待されるだけでなく、天候などの外的要因に左右されにくい点も利点となり、駅舎の早期完成が実現する。
鉄筋コンクリート構造がもたらす耐久性とデザインの自由度
駅舎の構造には鉄筋コンクリートを採用しており、高い耐久性と耐食性を備える。従来のプレキャスト工法では型枠を使用する必要があったが、本技術では型枠が不要であり、造形の自由度が飛躍的に向上する。よって、曲線を多用したデザインや複雑な意匠も容易に実現でき、地域の特性を活かした独自性のある駅舎の建設が可能となる。さらに、材料の無駄を削減できるため、環境負荷の低減にも寄与する。こうした特長を活かし、住民に愛される持続可能な駅舎の実現を目指す。
本プロジェクトの第1弾として、JR紀勢本線の初島駅(和歌山県有田市)において3Dプリンターを活用した駅舎の建設が行われる。
今後の展開
今回のプロジェクトでは、3Dプリンター技術を用いた建設および維持管理におけるコスト面での有効性を詳細に検証する予定である。本駅舎を基本モデルとし、他の駅舎への展開可能性についても検討を進めていく。
また、本技術の導入により、建設業界における人手不足問題に対応しつつ、鉄道施設の計画的な更新を促進することが期待される。これにより、鉄道インフラの持続可能性が向上し、JR西日本が掲げる「安全・安心で、人と地球にやさしい交通」の実現に向けた重要な一歩となる。
JR西日本は、本プロジェクトに留まらず、最先端技術を活用した鉄道インフラの革新に取り組み、地域に根ざした持続可能な交通サービスの提供を目指していく。
セレンディクス株式会社とは
セレンディクス株式会社は、兵庫県西宮市に本社を構えるスタートアップ企業で、建設用3Dプリンター技術の開発・実用化に取り組んでいる。代表取締役CEOの小間裕康氏が率いる同社は、革新的な建築技術を活用し、持続可能な住宅・建築物の提供を目指している。
特に、3Dプリンターによる短期間施工とコスト削減に注力し、国内初の3Dプリンター住宅「Sphere(スフィア)」を開発したことで注目を集めた。鉄道駅舎の3Dプリント建設にも関与し、業界の変革を推進している。今後も、省資源・高効率な建築技術の発展を通じて、建設業界の課題解決に貢献していく。
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