3Dフードプリンティングに特化した新会社「F-EAT(フィート)」を共同で設立 ― ディレクションズ・グループ社・山形大学
2024年6月5日、株式会社ディレクションズ・グループと山形大学の共同プロジェクトとして、3Dフードプリンティングに特化した新会社「株式会社F-EAT(フィート / Future Eat)」が設立された。介護食分野や高級レストラン向けの新たな食体験の創出を目指し、フードテックの最先端技術を活用する。山形大学米沢キャンパス(山形県米沢市城南)を拠点に、地域と連携しながら世界市場に向けた新産業の創出を目指す。(上部画像はディレクションズ・グループ社のニュースリリース。出典:ディレクションズ・グループ社)
設立の背景と目的
3Dフードプリンティング技術の可能性を最大限に活用するために設立された「株式会社F-EAT」は、昨今の要介護者人口の増加に伴い、特に介護食分野での期待が高まっている。また、代替肉や培養肉、スマート農業といったフードテック市場全体が現在拡大しており、3Dフードプリンティングはこの分野において中核的な技術となる可能性が高い。設立の目的としては、これらの技術を活用して食の社会課題を解決し、新たな食体験を提供することである。
設立の経緯には、山形大学の古川 英光 氏が主導する「やわらか3D共創コンソーシアム」の活動がある。このコンソーシアムは、産官学の多様な機関が集まり、3Dフードプリンティングの社会実装を目指していて、2023年からは内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムの一環として、介護食提供ソリューションの実用化研究が進められている。代表取締役には伊藤 直行 氏が就任し、CTOとして古川 英光 氏が技術開発を指導している。
「やわらか3D共創コンソーシアム」は6周年記念シンポジウムをシェアラボの丸岡が参加報告として取材させていただいているので、ぜひ以下もあわせてご覧いただきたい。
技術と応用
「株式会社F-EAT」が開発する3Dフードプリンティング技術は、食品を粉末にして造形するフードインクを使用する。この技術には、レーザー式、スクリュー式、インクジェット式などの方式が含まれており、様々な食材に対応可能である。視覚的にも魅力的で、食欲をそそる食品が製造できる。特に介護食においては、見た目が悪く食欲を減退させるペースト食を美しく造形し、食事の満足度を高めることが可能である。また、通常食においても、高級レストランで提供される新たな食体験を創出することができる。
事業計画と展望
同社は、山形大学米沢キャンパス(山形県米沢市城南)にフードテックの開発拠点を整備し、地域の生産者や企業と連携しながら事業を展開するとのことだ。この開発拠点は、フードテックのシリコンバレーを目指しており、世界市場に向けた新産業の創出を目指す。また、食品企業、先端機器開発企業、給食事業者、シェフやレストラン、国内外の大学と連携し、新しい食のエコシステムを共創する。
今後の課題と展望
直面する今後の課題として、3Dフードプリンティング技術の社会実装が挙げられる。これには、食材の生産から加工、流通、メニュー開発と調理など、多岐にわたる事業者が関与する必要がある。また、3Dフードプリンティング技術のさらなる発展には、食品の安全性や品質管理の基準を確立し、消費者の信頼を得ることが不可欠である。「F-EAT株式会社」は、これらの課題に取り組みながら、誰もが健康で美味しい食事を楽しめる新しい食環境を構築することを目指している。
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