フード3Dプリンターの活用で食品の内部に2次元コードを造形 ― 大阪大学
大阪大学大学院基礎工学研究科の佐藤宏介教授らの研究グループ(宮武大和さん(博士前期課程卒業生)、Parinya Punpongsanon助教、岩井大輔准教授)は、フード3Dプリンターを用いて食品の内部に2次元コードを造形。食品に背面から光を照射して2次元コードを認識できる技術を開発した。食品内部に2次元コードを埋め込み情報へのアクセスを可能にする取り組みは世界初となる。(画像はフード3Dプリンターを用いて内部に2次元コード構造を持つクッキーに後ろから光を当てたもの。出典:大阪大学)
フード3Dプリンターは食品の形状・栄養素・食感をデザインできる
フード3Dプリンターは、3Dプリンターのインク(材料)として流動的な食材を利用し、食品を造形する。
例えば、培養肉のフードプリンティングでは、動物の細胞をインクとして用い、任意の形状の食肉を作り上げる。 食肉は、筋繊維や脂肪の硬さ、大きさ、形状と脂肪のバランスなどが複雑に絡み合って食感を決める。また食肉に含まれる味や栄養素なども食肉の価値を大きく左右する。よく耳にする「A5ランクの和牛肉」など、食肉加工業では、味や美観も含めて、食肉のランクを厳格に定める基準はあるが、育て方を工夫することはできるが、直接A5ランクの食肉を狙ってデザインすることはできなかった。
フード3Dプリンターは、味や触感を、材料となる材料の組み合わせや3次元の構造をもとに設計できる。添加する栄養素を加味すると、メーカー側がデザインした理想の食肉を製造することが可能になる。ダイエット中の女性が肉の食感や味を楽しみながら、栄養面で問題がないが脂質を抑えた焼肉を楽しめる新しい食材などを製造できる可能性がある。すでに宗教上の理由などで特定の食肉を食べることができない人向けの大豆由来の代替肉などが製造されているが、よりおいしく栄養がある食材も今後開発されるだろう。また歯が悪い老人が楽しめる介護食など味、栄養素、触感をデザインできるフード3Dプリンターが持っている新しい食の可能性は限りがない。
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その他、フード3Dプリンターは、食糧問題やフードロス問題など、様々な用途に活用が検討されてきた。
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3Dプリンターで食品の内部構造を2次元コードとして造形
大阪大学大学院基礎工学研究科の佐藤宏介教授らの研究グループ(宮武大和さん(博士前期課程卒業生)、Parinya Punpongsanon助教、岩井大輔准教授) は、そんなフード3Dプリンターの活用方法に新たな可能性を提示する。食品の内部構造に2次元コードの形状を埋め込み、食品を情報化(DX)しようという試みだ。これまで、食品包装などにデータが印字される事例は多数あった。しかし、食品自体にデータを埋め込む取り組みは世界初となる。
大阪大学の研究グループは、2次元コードを表面に造形するのではなく、内部構造として食品内部に2次元コードを埋め込むアプロ―チをとった。実際に2次元コードからデータを読み取る際は、食品の背面から光を照射し、2次元コードを食品表面に浮かび上がらせ、読み取らせるようにしている。内部に2次元コードの構造を持っていても、食品の見た目に影響はない。見た目が不自然な食品にならない工夫となっている。
利用用途は?たとえば食品のDX化
一人一台スマートフォンを持っている時代。食品にデータを埋め込めるようになると、食品の持つ可能性は大きく広がる。
利用例としては、「食品トレーサビリティ」の拡充が挙げられる。食の安全性が話題となる昨今、食品がどこで作られ、どのような過程を経て届けられるのかを知りたいと考える消費者は多い。
食品に直接データが埋め込めるようになれば、トレーサビリティはより簡単に、かつ改ざんの難しい技術になり得る。またアレルギーなどが気になる消費者が、食べる前に確認できることで安心して食を楽しめるようになるだろう。
他にも、食品がどうやって企画開発され製造されたか知る動画へ誘導したり、おいしい食べ方を紹介してくれる動画へのリンクを埋め込む、いまこの食材を食べている人とオンラインでつながり一緒に食べる、この食材にぴったりなBGMを流すなど、新しい食の楽しみ方が広がっていくだろう。実際に活用がはじまれば私たちの思いもよらないサービスが提供されるようになるかもしれない。
本研究成果は、2022年10月29日~11月2日にアメリカ、オレゴン州で開催されたACM Symposium on User Interface Software and Technology(UIST)において、口頭発表で報告された。
また、プレスリリースは以下リンクから確認できる。
>>食べられるデータの埋め込みを実現!フード3Dプリンタで食品内部に2次元コードなど-食品の DX のための新技術-
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