3Dプリントされた被害者の頭蓋骨モデルが裁判の証拠に採用
イギリスで起きた殺人事件の裁判における証拠として、3Dプリンターで造形された被害者の頭蓋骨モデルが採用された。3Dプリントされた頭蓋骨は、被害者の怪我の程度を示すだけでなく、被害者の頭部への甚大な外傷を視覚化するのに役立てられ、8週間の裁判の後、4人の被疑者に有罪判決を下す重要な証拠となった。(上部画像は3Dプリントされた被害者の頭蓋骨。出典:ポーツマス大学)
FDM方式3Dプリンターで頭蓋骨モデルを造形
3Dプリンターによる被害者の頭蓋骨モデルの造形は、ポーツマス大学ポーツマス大学 機械設計工学部の上級科学職員であるMorgan Lowther 氏によって行われた。使用された3Dプリンターは、チェコの3Dプリンターメーカー、Prusa Research社のFDM(熱溶解積層)方式3Dプリンター「Original Prusa i3 MK3」だ。造形素材はPLA樹脂(ポリ乳酸)。
3Dプリントに必要な3Dデータは、被害者が負った傷をマッピングしたCTスキャンのデータから作成された。医療レベルの高品質なスキャナーを使用したことで、頭蓋骨の解剖学的構造が完璧に再現できたという。造形した頭蓋骨モデルは法廷での取り扱いや提示に耐えられるよう、内部足場を追加して安定性が確保された。
法廷の場で証拠として提出された3Dプリント頭蓋骨は、病理学者によって被害者が負った怪我の説明のために使用された。立体モデルであるため、「打撃の発生順序や同じ角度から殴られたかどうか」「同じ加害者による傷なのか」「同じ凶器による傷かどうか」を陪審員に簡潔に示すことができた。重要な証拠として、3Dプリント頭蓋骨を審議室に持ち込むことも今回、陪審員に許されたという。
国家警察最高科学顧問のPaul Taylor 氏は、今回の事件について次のように述べている。
「陪審員に証拠を説明するために、この革新的な3Dプリント技術の使用は、警察がスキャンとコンピュータモデリング機能の急速な発展をいかに受け入れているかを示しています。専門家による証拠のプレゼンテーションが、2Dの写真以上のものになり得る、またそうあるべき場所に急速に移行しています。私たちは、3Dプリンティングが今後も陪審員にとって複雑な証拠をより利用しやすくするのに役立つと期待しています。」
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