歯周病治療、3Dプリンターで欠損部再生 広島大病院のグループとサイフューズ社が技術開発
広島大学病院(広島市南区)と再生医療ベンチャーのサイフューズ(東京都港区)が新技術を開発。歯周病により失われた組織と同じサイズの細胞集合体を、3Dプリンターを活用して作成し、患部に移植することで再生を促すものである。この技術が実用化されれば、重度の歯周病患者の治療に新たな道が開かれることが期待される。(上部画像は広島大学病院。出典:広島大学病院、サイフューズ)
患者由来幹細胞を活用した3Dプリンター技術
この研究を主導したのは、同病院の口腔検査センターに所属する加治屋 幹人 教授の研究グループだ。まず患者の骨髄から「間葉系幹細胞」を採取・培養し、直径約1ミリの球状細胞塊を多数作製する。この細胞塊をサイフューズのバイオ3Dプリンターで立体的に積み上げ、歯周病による欠損部に合わせた数ミリ四方のブロックを作成し、移植する手法を採用している。
歯周病治療の未来を切り開く新技術と臨床研究計画
ラットを対象とした実験においては、歯槽骨や歯周靱帯の再生が確認されている。この研究成果は2023年3月に特許を出願し、同年9月に公開された。2026年にはヒトを対象とした臨床研究を開始し、安全性を検証する計画であり、2029年頃の実用化を目指している。
歯周病は細菌により歯槽骨や歯周組織が破壊される疾患であり、糖尿病や誤嚥性肺炎、認知症リスクの増加にも関連している。この日行われた記者会見で、加治屋 幹人 氏は「どのような重度の歯周病患者にも治療法を提供できる技術を目指して、研究を進めていく」と語った。
再生医療が切り開く歯周病治療の新時代
歯周病をバイオ3Dプリンターを活用して再生医療のアプローチから治療していく取り組みは、歯周病治療の新たな可能性を切り開く画期的な一歩だ。従来の治療では難しかった重度の歯周病患者に対しても治療が実現する可能性がある。ラット実験での成功は、歯槽骨や歯周靱帯の再生に向けた具体的な成果を示しており、この先予定されている2026年の臨床研究開始、2029年頃の実用化に向けて大きな期待が寄せられる。また歯周病の治療は糖尿病や認知症リスクを減少させる間接的な効果も見込まれ、歯科医療のみならず、全身の健康維持に寄与する技術として注目されている。
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